後始末
ダグラス神聖ヨウム国はこの10年で8個の国を征服した。その中で一番大きい国がゲルス騎士国だったが、ゲルス騎士国には備蓄がなかった。そこでラカユ国を侵略する決定を下した。
シドル連邦とブルセルツ皇国は大国だから、さすがに侵攻する気にならなかったが、サタコが扮していたリベッタの指揮により、シドル連邦軍がラカユ国を攻撃している間に、国内が手薄になっているシドル連邦に船で海岸から攻め入り、シドル連邦さえ強欲に掠め取るつもりだった。
捕まえた貴族たちは三列に並べている。
中央から右側は戦争に反対した貴族たち。まん中は今回の戦争に積極的に参加した貴族たち。左側は嫌々参加した貴族たちの構成になっている。
まん中の貴族は貴族位と領地を没収する。左側の貴族には呪術を掛けたうえ、家督を子に譲ってもらう。
右側の貴族は面談のうえ、そのままラカユ国軍に編入する。
国王一家は国民の前で公開処刑する。それも今すぐに。第四円に処刑台を造り、さっさと処刑した。公爵家には国王と同血もいるが、ほとんどは戦争積極派だったため、領地没収とし貴族位を剥奪した。隠し財産を含めた全財産を剥奪したので、今までのように贅沢な暮らしはできない。生きるすべを知らないで育っているから、国王一族と一緒に処刑されたほうが幸せだったかもしれない。
何人かの公爵は使用人から殺されていた。よほど酷い扱いをしていたのだろう。
王都は完全にラカユ国が制圧した。王族軍は国王一家の首を曝すと降伏した。絶対的な王家とその親族が平定する絶対的君主の場合、国王一族が亡くなれば求心力は失われる。
私は五カ国連合の勝利を宣言した。各地で平民に落とされた貴族が、領民から無残な扱いで次々と殺されていた。
時間とともに各地での争いも、収まることとなった。
私は当初王都の第一円から第三円までは全員殺すつもりだった。ヘルシスから諫められ作戦を聞き、そちらの案に従うことにした。
ヘルシス宰相から作戦を行う前に、王都の実体を見た方がいいということで見学していた。そこでは兵士も含めいい人が沢山いることがわかった。ラカユ国と同じ光景が広がっていた。いくら戦争だといえ、そんな人たちまで巻き込み殺すのは間違いだ。
△△△
◇ここで、あみだくじの現場に戻る◇
「早く、ステンノーちゃんが引かないからお昼になってしまったわ。
でも歩ちゃん、この味噌煮込みうどんは美味しいわ。最高よ」
「これは味噌煮込みの最終形態です。赤味噌7、白味噌3、みりん少々、出汁は小魚のみを使っています」
このあみだくじは、当たりを引いた人が『複数の分割案の中から一つ』をくじ引きをする。くじは5枚あり、それぞれの国がダグラス神聖ヨウム国の分割案を考え、その中の一つを選ぶものだ。
私たちは何度も話し合ったが各国とも自分の案以外譲ろうとしないため、それぞれが考えた案を箱の中に入れ、それを引く者をあみだくじで選ぶことになった。
バン国はベティ王妃が国王代行として代表者となり、シドル連邦はアニカが大統領代行として代表者となった。
ステンノーちゃんは雪ちゃんに殴られ、線を入れないとこれから出入り禁止と言われた。そのおかげで昼食後はすぐに線を入れた。
ステンノーちゃんは他の国が出した分割案では、ステンノ聖女国も領地を取得することになっていため、領地はいらないと駄々をこねたことが揉めた発端だ。ステンノー女王が求めているのは何もないステンノ聖女国だ。新しい土地をもらうとどのように区切っても銀山か銅山が入ってしまう。彼女は何もないステンノ聖女国がいいのだ。
「それでは、あみだくじの当たりを発表します。では歌にあわせて線を引きますよ」
「「「「「あみだくじ、あみだくじ、引いて楽しいあみだくじ……」」」」」
「当たりは――――!! ベティちゃんです」
「わ、わたしがこんな重要なくじを引いていいのでしょうか?」
誰も反対しない。というより、誰もやりたくない。
ベティは目を瞑り神に祈りながら1枚をとった。
「ララ様、私怖いので、この紙を広げてください」
「いいですよ。では分割案を広げますね」
私が広げたのはラカユ国の案だった。一同安堵していた。それはそうだ、ラカユ国の案はステンノ聖女国の国土が増えない案だ。その代わり食糧もさほど豊ではないステンノ聖女国に、各国から国民が食べられるだけの食材を、無償で提供する契約となっている。
ステンノ聖女国は国民の総数も少ないから、他の国にとっては備蓄を少し提供する程度でいい。
ブルセルツ皇国は東グラン公国国境まで、シドル連邦は西グラン公国国境までを領地とした。
バン国にとってはどこをもらっても飛び地となることから、ラカユ国とステンノ聖女国の国境から双方に500メートルの幅を通行路とし、無期限自由通行権を渡すことにした。ラカユ国は東グラン公国と西グラン公国、それにミリトリア王国と大幅に国境を接することになり、東西に長細い国となった。
今回一番活躍したのはラカユ国だが、分割で最も損をしたのはラカユ国だ。ダグラス神聖ヨウム国の王都を含む海岸線を取得したことは、海そのものを有していないラカユ国としては得るものがあったが、王都はこれまで国王の支配地だったこともあり、統治するには一番難しい場所だ。それに細長い国は守るのが難しく、国防費が多くかかり、しかも細長いため中央の意思が伝わりにくく統治がしにくい。
実は箱の中にはラカユ国案しか入っていなかった。いわゆるインチキくじ引きだ。他国の案はすべてラカユ国が全体の3分の2以上を領土とすることになっていた。シドル連邦は魔族に支配されていたとはいえ、裏切ったという負い目がある。
ブルセルツ皇国も、本格的な争いになる前にラカユ国が王都を落としたため、たいした働きをしていないという負い目がある。
バン国も交戦期間は短く、その間にラカユ国が王都を陥落させたことと、飛び地になるため分割に魅力を感じていなかった。そのことはヘルシス宰相が各国から分割案が出る前にわかっていた。
そこで各国に有利になるよう、ラカユ国が取り過ぎないよう分割案を考えた。それでも全体の2分の1を取得している。だが、無駄に同盟国以外の国と国境を接することになった。どう考えてもラカユ国に不利な分割案だが、ヘルシス宰相はそれを選択した。それは同盟国が一番結束する案だからだ。
今回、五カ国同盟はどの国もダグラス神聖ヨウム国の領地はいらなかった。やっと国内の食糧が安定してきたのに、また荒廃した土地を開墾しなければならない。ため息だけが出ていた。そのため息を全面的に引き受けたのがラカユ国だ。
王城は破壊し、王都の壁はすべて撤去し公園若しくは果樹園とした。第四周があった外を開発し、ラカユ国と同じ造りの宮殿と町並みを造った。宮殿のある地域と周囲を新たにニューボルスワイとした。この町並みを造ることで疲弊した経済を復活させることができた。ただし、宮殿に関してはすべてうちのメイドが造っている。
元ダグラス神聖ヨウム国の貴族と軍はわずか1週間で宮殿と関係施設ができたことでラカユ国に戦争を仕掛けたことを後悔していた。ブルセルツ皇国とシドル連邦に併合された地域の住民も、以前より国民にやさしい統治をしてくれて喜んでいる。それほどダグラス神聖ヨウム国の統治は劣悪だった。
同盟国で税率は違うが、それでも一番高い税率のブルセルツ皇国でさえ、これまでの3分の1だから、元ダグラス神聖ヨウム国の国民は、どの国に吸収されても手取りが増え購買意欲が上がり経済も発展した。
旧ダグラス神聖ヨウム国首都ボルスワイの郊外に造ったニューボルスワイの宮殿は、親衛隊長に昇格したメドモス・クラシス中将が半径5メートルの転移陣を描いているため、ウーベ宮殿とは自由に出入りできる。
シンパチ・カトウ中将は、本人は嫌がったが、大将に昇格し、第二宮殿総司令官になった。第二宮殿とは今回築城した宮殿のことをいう。中将のままでいいから、親衛隊隊長のままがいいと叫んだが、人材不足なのだから贅沢は言わせない。
ダグラス神聖ヨウム国が短期間で降伏したため、各地方の貴族のうち反乱を起こす者が何人かいた。それは全部ラカユ国の統治した地域の貴族ばかりだった。勝手に王都の貴族が降伏したのであって、自分たちは負けていないという理由だった。3カ所で起こった乱はすべて辺境伯だった。彼等は他国と国境を接しているため、年中国境での紛争を抱えていた。
そんな地理状況だから、彼らは血気盛んだ。
どうしても小国ラカユ国に従えない。シドル連邦やブルセルツ皇国のように大国であればいいが、五カ国連合に運良く参加した小国ラカユ国の統治下に入ることは嫌だと反発した。
これから5万人で挙兵したデットサン・イランキス辺境伯の討伐に行く予定だ。これでラカユ国に反旗を翻す貴族は最後となる。
メイハス・ボレンノ辺境伯は3万人で挙兵したが、一昨日居城を破壊し、メイハス辺境伯の首を曝し鎮圧した。
昨日はボレノ・モーソク辺境伯が7万人の軍隊で挙兵したため、ボレノ辺境伯の居城を更地にし生き埋めにした。
この二人の辺境伯はそれぞれ西グラン公国と東グラン公国と国境が接していた。
重要な領地だがこの二人はいらない。
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