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王都

 私は女王の部屋で(くつろ)いでいる。ステンノーちゃんも、バレンシスちゃんもいる。それだけではない。アニカも、ベティちゃんもいる。ババ抜きをしているわけではない。1回限りの『あみだくじ』をすることになったが、私とバレンシス、アニカ、ベティは1本線を入れた。ステンノーが線を引くのを迷って、とうとう昼食の時間となった。



 今日のメニューは、歩ちゃん特製味噌煮込みうどんだ。歩ちゃんは味噌料理の研究を重ねている。もう味噌マイスターと呼んでいい。




 こうなってしまった理由は3日前に(さかのぼ)る。




△△△

 ヘルシス宰相の作戦に従い、ステンノ聖女国に侵攻したダグラス神聖ヨウム国軍に対し後方から反転したシドル連邦軍30万人、それにバン国軍20万人とラカユ国軍10万人が正面から挟み撃ちする形で迎え撃つ。バン国軍の指揮はゲルジット・バン国王自ら行った。ラカユ国軍はリデア・ポミアン元帥が陣頭指揮をとっている。


 この作戦に合わせシドル連邦本国から20万人、ブルセルツ皇国から30万人がダグラス神聖ヨウム国に南下した。


 ダグラス神聖ヨウム国は、まさかシドル連邦が侵攻するとは思っていなかったようで、ダグラス神聖ヨウム国全軍200万人のうち10万人は人魚に船を沈没させられ、50万人はステンノ聖女国に派兵している。各地にある駐屯地の維持に30万人、国境警備に10万人、首都警備に20万人、新たに派兵に使える兵士は80万人いるが、シドル連邦とブルセルツ皇国の侵攻に関しては、それはないと判断していたため、国境警備にそれほどの人数を配置していない。特にシドル連邦に関しては情報をくれた同盟国扱いだったから、裏切ることなど夢にも思わなかった。



 国境を越え一斉に流れ込むシドル連邦軍とブルセルツ皇国軍に、ダグラス神聖ヨウム国は大慌てだった。各駐屯地から兵をかき集め、南下してくる両軍に対抗しようと北上する。


 さらにシドル連邦軍が裏切り、背後に付かれたことで、追加派兵する準備をしていた。



 ダグラス神聖ヨウム国王都は厳戒態勢だったが、王都は現在敵対している国々からは離れている。海沿いでミリトリア王国に近い位置にあるから、国王とその側近の貴族たちは、戦争などどこ吹く風と、毎日のように贅沢三昧な暮らしをしていた。彼らは不戦敗の国が負けるなど思ったことすらない。



 各地で戦闘が始まり、ダグラス神聖ヨウム国軍は各地で戦闘を開始した。王都にいる軍は王都まで連合軍が攻めてくるとは思っていないから、警戒はしているが、談笑も聞えてくるほどいつもと変らない風景だった。




「ステンノーちゃん、その人形かわいいわね」


「楓ちゃんもそう思う。かわいいでしょ。口元が雪姉様に似ているのよね~」


「楓はどこに来ても食べ物ね」


「育ち盛りだからね。少し寄せればもうBカップだよ。寄せる肉がないからもう少しがんばってEまでにしたいもの。お姉ちゃんこそ両手に肉を抱えて太るよ」


「私は太らない体質なのよ。それよりこれから一戦するのだから食べすぎないようにね」


 見るからに、田舎から少女たちが都会に出てきたような服装の集団が、王都をウロウロしていた。王都を守る軍は、そんな少女のことなど気にせず、見回りをしているが少女たちが側を通っても気にしていない。


 あまりにも空気のような扱いだったから、雪ちゃん、華ちゃん、小町ちゃんに門番の兵隊さんに最高の笑顔で手を振るように言ってみた。



 あぁ~、本物の天使の笑顔、私でもハートを落とされそう。門番さんと隊列を組んで行進している兵隊さんを見ると、行進しながらこちらを見て手を振っている。上官すら手を大きく振っている。さすが本物の天使の笑顔だ。


 気にされてはいるが怪しまれてないようだ。私たちをチラチラ見る人が多かったから怪しまれていると思っていたが、彼等には謎の美少女隊と映っていたようだ。




 さて、王都の建物の配置や警戒態勢はだいたいわかった。この国は王都の中心を壁で囲んであり、中心円に王城があり、次の円に公爵家の住まいがある。その次の円に初めて貴族の住まいがある。その次の円には商人や一般住民のうち裕福な者の住まいがある。私たちがいるのはここだ。ここに入る門も東西南北4つある。ところが貴族街への門は東西しかなく、公爵が住む門は1つしかない。王城への門も1つだ。王都軍の大部分は、この円外を守っている。何が何でも連合軍をこの円の中には入れないつもりだ。



 ごめんね。もう円内に入っているわ。この国は王都だけ平和だわ。ヘルシス宰相の作戦がうまくいくように、私たちも本格的に動くことにした。今は各円への出入りが厳しい。特に貴族街や公爵街の門は、食糧の運搬以外門は開かない。そのため食糧を運搬する者への検閲は非常に厳しい。王城は1日1回しか門が開かない。それも食糧運搬車のみの通行だ。この外部からの侵入を許さない警戒態勢がむしろ都合が良かった。


 王城の中はいわゆる王を警護する王族親衛隊と、王城を警護する近衛兵が守っていた。人数的には300名程度と少ないが、それでも私の親衛隊より(はる)かに多い。まずこの300名をどうにかしないといけないが、その対策としてのラカユ国側の準備はできている。


 私たちは夜まで待って城に潜入した。誰にも発見されることはない。ここはお城の屋根の上だ。警備をしている兵士は昼と比べると大幅に少ない。私たちは見つからないよう見回っている近衛兵を、ラカユ国に臨時設置した牢に、転移しては投獄を繰り返している。当然峰打ちしているから大声を出されることはない。


 一緒に行動しているのは雪ちゃん、小町ちゃん、華ちゃん、歩ちゃん、ステンノーちゃん、みちるちゃん、つばさちゃん、まりちゃん。(かえで)は危ないので見張り役をしている。


 警戒に当たっていた近衛兵全員を投獄し、次は交替で寝ている者を臨時牢に転移させる。起きたら牢屋だから、今だけいい夢を見て欲しい。


 いよいよ本丸だ。国王を警備している親衛隊を一度に襲うが、国王の寝室を警護している20名を倒さなくてはならない。私たちが一瞬で2名ずつ倒したが、2名が呼び笛を吹いた。


 だが親衛隊や近衛兵はもう来ない。すでにラカユ国の監獄に入っている。ただ、国王一家が起きてきた。ちょうどいい。国王は叫ぶが誰も来ない。


 国王一家にはしばらく眠ってもらう。峰打ちし、国王を除き家族には雪ちゃんが王城内に土魔法で造った臨時の監獄に入れる。国王には玉座に座ってもらわないと困る。最終的に責任を取ってもらう役割を担う。



 さて、私たちは新しい国王専属メイドメンバーとして国王の世話をしている。戦時中なので兜を被らせているが、いつものように親衛隊と近衛兵は配置されている。


 常駐使用人のうち国王に忠誠を誓う者は、ラカユ国の監獄に投獄している。それ以外の者は騒がないことを条件に通常通り働いてもらう。通いの使用人は一般人が多いのでそのままにしている。ただし、戦時下なので今日から3日間は自宅に戻れないと伝える。


 小ホールでは親衛隊副隊長メドモス・クラシスが昨日から一睡もせず、転移陣を描いている。ここにいる親衛隊と近衛兵は、全員私の親衛隊と選抜した首都警備隊員だ。


 昼過ぎ、国王と私は昼食を摂っている。戦時下だから国王には焼き芋を食べてもらう。私も焼き芋だが満足している。国王は少し口に付けると吐き捨てた。もったいないことをしたから雪ちゃんからお仕置きを受けている。子供と変らないからお尻をペンペンされている。お尻を出しているから真っ赤になっているのが見える。汚い尻だがお仕置きだから我慢して見ている。


 国王には喜んで欲しい。どこから見ても美しい女性からお尻ペンペンされているのだ。


 朝食と昼食は私と同じものを出しているのに、床に吐き捨てるから、雪ちゃんは使用人の見ている前であっても、容赦なく往復ビンタし、またまたズボンをずり下ろしお尻ペンペンしている。国王の顔とお尻はもうパンパンに腫れている。ヒールは掛けてもらえない。


 ちなみに戦時下では、現場の兵士もいるから私の朝食は堅パンとスープだ。柔らかいパンは日持しないためラカユ国であっても堅パンになる。それでも昔の堅パンに比べると生地に牛の乳も混ぜてあり、甘くしてあるので美味しい。スープも味噌玉に具材を包んだものを湯に溶かしたものだが美味しい。それを国王は床に吐いたから、雪ちゃんが怒った。ダグラス神聖ヨウム国の兵士はこれよりも不味(まず)い昔ながらの堅パンと水で過ごしている。




「ララ様、転移陣ができあがりました。これで誰でもウーベ宮殿と自由に出入りできます」


「よくやったわ。それで大きさは?」


「はい、時間がないので半径3メートルです。ぎゅうぎゅう詰めで100人、余裕をみて70人くらいを一度に転送することができます」



「華ちゃん、転移陣の前で待っているメルトミちゃんに伝えてちょうだい」


「はい」




 小ホールから直接メルトミ・ルドリフ元帥が私に挨拶にきた。


「現在3,000人のラカユ国軍が、転移陣で王城内への移動は終結し、それぞれ持ち場に着いています。ララ様の合図が出次第、4万人が転移陣を使い、今夜中にこちらに来ます」


「そう。作戦通りね」


「はい、あとは夜が来るのを待つだけです」


「だったら、悪いのだけど、そこのお尻ペンペンされている豚なんだけど、床を汚したのよね。掃除させてくれない? あなたはあの手の(やから)の扱いは慣れているでしょ。雪ちゃんだと、殺しかねないのよね」


「そうでしたか。確かに(しつけ)ができてないようですね。メドモス・クラシス少将、その豚のためにバケツと雑巾を(そろ)えてくれ」


「はっ、リデア・ポミアン元帥、ゴミ袋はいいのでしょうか?」


「さすが、メドモス・クラシス少将は気がつくな。それも頼む」


「はっ、リデア様のためなら喜んで」




「ねえ、リデアちゃん、メドモスちゃんをどうやって手懐(てなず)けたの?」


「それはですね。私はマルタ奥様とお茶友達になりました。雪様からいただいたケーキを手土産に、オフマンホルコの歴史などを習っています。国内の詳しい地図もできあがりました。今は郷土料理を習っています。あそこを征服するなら、きっと将来役に立ちます」


「えっ? あなた料理できた?」


「嫌ですわ。そんなご冗談を。大和がするに決まっているじゃないですか」


「そ、そうなのね」



「マルタ奥様からララ様に伝言です。夫をこき使ってくれとのことです」



 この戦いが終わったら何か手土産を持って挨拶に行こう。

 各地ではそれぞれ戦闘が本格化している。早くこの戦いを終わらせなければならない。そうしないと大勢の人が死ぬ。



△△△

 夜になった。ラカユ国兵が続々と転移陣のある小ホールから、王城広場に集結している。リデア軍の行動は静かに早く集合し、辺りが寝静まった午前1時、王城の門から二円内にあるの公爵街、三円内にある貴族街を制圧していく。


 夜が明け、大ホールにいる私の元には縛られた国王とその家族、公爵家、各貴族が並んでいる。ここにダグラス神聖ヨウム国の中枢が集まっているが、地方の貴族はいない。まず中枢にいる者たちから清算することにした。


 豚と豚家族の処刑は決まっている。未成年がいれば助け、教会に預けようと思ったが、幸いにもいない。豚家族がまともだったら生かすつもりだったが、私の知っている最悪王族と同じ種類の親子だった。


 皇太子も甘やかされて育ったようで、人を人と思わない。何人の女を犯し、何人殺したか、自分の年齢以上の数の無実の人を殺している。


 王妃も私の知っているどこかの王族と同じで、影を踏んだとその場で首を()ね、その親族も公開処刑し、それを喜んで見ているゲス女だった。


最後まで見ていただきありがとうございました。

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