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オフマンホルコ軍敗退

 華ちゃんがアサリ・ハマグリ女王と戻ってきたから、彼女の指揮した人魚たちが果実を回収し終わる頃だ。


 華ちゃんは人魚全員の転送を終えた。

私は黒服隊の真っ黒の軍服に着替えた。下着も黒にしている。こんなときに見る人はいないだろうが身だしなみだ。目出し帽に軍帽を被り、口は出していない。黒服隊の正装だが、怪しいやつにしか見えない。これから私の供をする者も全員同じ服装に着替えている。これからオフマンホルコ軍の殲滅(せんめつ)をする。その前に一応オフマンホルコ軍に降伏を促す。


「みなさ――――――――ん!! 将官と佐官は全員人魚の木になってしまいました。残るのは尉官以下の方だけです。降伏してください。そうすれば命を奪わず、本国に帰れるようにしてあげます。今から1分待ちます。白旗を掲げてくださ――――――い!!」


 やはり無理だった。上官はいなくなっても未だ100万人の兵士がいる。これが軍隊の駄目なところだ。下に指揮権が移るが、そいつらがバカだと結局同じだ。


 私が最初に最終形態火炎魔法紅蓮の火炎弾改を放ち、人魚の木(悪魔の木)を燃やす。一斉にあの叫び声がする。もう何度も聞いた。未だに慣れない。


 私は空中に浮かび、あえて次の火炎魔法の詠唱をする。今はまだ兵士にはほとんど被害は出ていない。人魚の木(悪魔の木)だけを燃やした。だが、次は人に向かって放たないといけない。そうしないと人間階段を作ってオフマンホルコ軍が国境を越えてラカユ国に侵入してくる。そうなれば一斉に押し寄せる軍に対して、こちらも対処しなければならず、大魔法を放てなくなる。ラカユ国軍に被害も出るし、民間人にも被害が出る。


それだけは避けたい。


 私の後ろにはつばさちゃん、雪ちゃん、小町ちゃん、歩ちゃん、ステンノー女王がいる。詠唱が終わるが白旗は上がらない。私は中央の部隊に火炎魔法を放った。あそこには悪いことをしている将校が固まっている。前戦から離れた安全な場所に隠れている。


 次は尉官の首を落とす。私たちは飯炊き部隊をしていたから全員の階級と顔を覚えている。佐官以上は糞だったから全員を人魚の木にした。だけど尉官にはいい人もいた。征服戦争に反対の人もいる。だから尉官のうち残すべき人の首は刎ねない。私たちは一斉に転移魔法で対象となった尉官の首を落とす。尉官の6割の首を刎ねた。一瞬で落ちる首を見てオフマンホルコ軍は恐怖を感じてくれたようだ。


 あらためて白旗を上げるよう催促した。


 残った尉官が白旗の掲揚を指示した。あちらこちらで白旗が上がった。


 一度空間に止まっていた私は、白旗を上げるよう指示した尉官の元に下りる。彼女はよく知っている。頭もいいし、剣も優れている。


「マルコナ・ジゴナ大尉、あなたが代表ということでいいのでしょうか?」


「はい、私が大尉のうち一番号棒が上です。必然的に私がここにいる兵士の中で一番最高位となります」


「では、これから休戦協定を結んでいただけますか?」


「はい、ですが、我国では休戦協定を結ぶには本部指揮官の賛同か、緊急の場合は最高位の階級にいる者の3分の2以上の賛同が必要となります。ここに大尉以上の者はざっと見渡すと200人位残っているようです。これから集まって会議をし、書面に残します。そうしないと私一人でサインすると帰国したときに軍法会議にかけられ処刑されます。1時間程時間をいただけますか?」


「分かりました。いいですよ。ここで1時間待ちましょう。一つ言っておきたいのですが、私の魔法の威力を見られたと思いますが、そんな私でもここにいる者たちには子供のようにあしらわれます。オフマンホルコ軍に変な考えを起こさないように指示してください。上を見てください。5人新たに浮かんでいるでしょ。彼女たちも強いですよ。私の側にいる者たちは私を守るためにはここにいる者全員の命を奪うことに躊躇(ちゅうちょ)しません。たぶん100万人全員が皆殺しになると思います」


 楓、つばさちゃん、華ちゃん、みちるちゃん、まりちゃんが駆けつけてくれた。


 あら、黒服隊の正装に着替えなかったのね。目出し帽だけど桜のマントの軍服で来たのね。全員下着が丸見えだよ。楓以外は気にしない人たちだから教えなくてもいいか。でも私が恥ずかしいから、早く下りるように手を振る。


 さて、どうなることか……。

1時間が経過したが、結論が出ないようだ。

マルコナ・ジゴナ大尉が私の元にやって来て、もう5分欲しいと言う。

私は当然理由を聞く。


「署名を誰がするかで揉めています。全員が署名するのではなく、代表3名が署名することになるのですが、帰国したときに署名した者は処刑される可能性もあるため私以外署名しようとしないのです。基本的に残っているメンバーでは私が第一等大尉であり、一番上なのでサインします。次の者が嫌がり、その次の者も嫌がりました。そこで揉めました。休戦は賛成だが、サインはしたくないということです」


「上の者でなければならないのですか?」


「いいえ、同じ大尉なので、その制限はありませんが、内々では号棒の高いものがすることになっています」


「だったら、誰でもいいので署名してもいいという人はいないのですか?」


「はい、いますが、その者たちは最近大尉に昇格したので最下位なのです。私はそれではあまりにも不公平だと思って反対しました。それで結論が出ませんでした」


「わかりました。その二人を認めます。それで休戦協定を結びましょう。そうでないとそちらの兵士さんが何かしそうな雰囲気がある部隊がありますよ」


「分かりました。私たち三名で署名します。急いで休戦協定をしましょう」


 それから10分後、大勢の兵士たちが見守る中私たちは正式に休戦協定を結んだ。休戦協定には署名後すみやかに本国に帰国することが記載してある。


 ラカユ国側は、私、ヘルシス宰相、リデア元帥が署名した。

 オフマンホルコ側は、マルコナ・ジゴナ大尉、ダニア・ニトログア大尉、カタロス・プラニチュ大尉の三名が署名した。

 休戦協定は正式に発行され、マルコナ・ジゴナ大尉はオフマンホルコ軍にミリトリア王国から本国に向かって帰国するよう命令をした。領土についてもガザール国を放棄させたかったが、彼女たちには権限がなかった。そもそも今回の侵攻軍にそのような権限はない。それができるのは国王のみだ。


 私も署名し、休戦協定書をヘルシス宰相に渡すと、オフマンホルコ軍に向かって宣言をする。

「マルコナ・ジゴナ大尉、ダニア・ニトログア大尉、カタロス・プラニチュ大尉の三名をこの協定がすみやかに実行されるまで捕虜とし、実行されない場合はただちに彼女たちを処刑し、総攻撃をする。実行されたことを確認後彼女たちの処刑のみでこの戦争を終わらせ、オフマンホルコ軍に攻撃することはしない」


 ヘルシス宰相が宣言した後、残った大尉たちの顔から笑顔が出た。署名した三人が勝手に署名し処刑されたことにすれば、残った者は帰国しても責任を問われることはない。もし問われても三名が悪いのだから微罪で済む。


 オフマンホルコ軍がすみやかに帰国をするかどうか、メイドが交代で監視してくれる。脱走するのは勝手だが、もし軍全体で引き返せば私に知らせが来て、私たち全員で後方から最高難度魔法のみ乱れ打ちをすることになる。


 飯炊き部隊をしていた者は帰国してもいいし、ラカユ国に住んでもいいと話したが、全員国に戻りたいということだった。普通そうだよね。ラカユ国のことは何にも知らないし、知り合いもいないものね。

 帰国する兵も食糧がないだろうから、魔獣肉をお土産に沢山分けておいた。略奪もできないから堅パンと水で帰国することになるだろう。


 捕虜となった三名は覚悟しているようで、オフマンホルコ軍の目前で縛り上げ、そのまま空を飛び、彼女たちがこれから処刑される雰囲気を出し、ラカユ国に連れ帰った。彼女たちは私の前に連れてこられた。

「雪ちゃん、彼女たちの縄を解いてくれない?」


「はい」


 三人は縄をほどかれたので、これから処刑されるのかと思ったようだ。現場はピノ元帥に任せ、私は捕虜三人とメイドたちで女王の部屋に転移した。

 先に楓に連れ戻されていたアサリ女王が、ソファーで下着丸出しで大股を開けて寝ている。


 三人は景色が急に変ったことに驚いていたが、周囲を確認し、転移魔法で連れてこられたことを理解した。


「マルコナ・ジゴナ大尉、ダニア・ニトログア大尉、カタロス・プラニチュ大尉、オフマンホルコに戻っても、どうせ処刑されるか投獄されるかのどちらかでしょ。それだったら、ここで働かない?」


「いいのですか?」


「いいわよ。私が許すわ」


「あなたは?」


「あ、ごめんごめん。言ってなかったわね。私はラカユ国女王ララです。よろしくね」


「あ、は、はい。よろしくお願いします」


「マルコナちゃん、そんなに恐縮しなくていいわよ。私に何回もおかわりした仲じゃないのよ」


「まさか、あの子? 確かラーラと……ララ、そうですか。ララ様だったのですね」


「思い出したようね。三人には世話になったわ。余り物もこそっとくれたのも三人だったものね」


「お恥ずかしいです」


「いいのよ。では、マルコナ・ジゴナ准将、ダニア・ニトログア大佐、カタロス・プラニチュ大佐、三人ともラカユ国でがんばってください。マルコナ・ジゴナ准将はヘルシス宰相付き第四秘書官に任命します。ダニア・ニトログア大佐は親衛隊隊長補佐官に任じます。カタロス・ブラニチュ大佐は首都警備隊最高司令官補佐官に任じます。三人ともそれぞれ制服が違うけど喧嘩しないでよ。それぞれ重要な役割です。がんばってね」


「「「はい」」」


「いつもは、ここで先にお風呂に入るのだけど、雪ちゃんが光魔法で汚れと臭いを取ってくれたし、お腹が空いたから朝ご飯にしましょう」


「「「はい」」」


 まったりした時間が流れ、私たちは世間話に花を咲かせた。


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