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オフマンホルコ打倒軍

 ゴタンのことが片付いたと思ったが、他にも重要案件が山積みだった。


 北部連合はまだ斥候(せっこう)を出している程度だから、いますぐ攻めてくることはなさそうだ。シーオリ神国もまだラカユ国を滅ぼせと、シーオリ教皇が檄を飛ばしているが、軍そのものは動いていない。ダグラス神聖ヨウム国も今のところなりを潜めている。ラカユ国に侵攻すると、ラカユ国と軍事同盟をしている背後のシドル連邦とブルセルツ皇国から、迎撃を受けることになるから今のところ安心していい。

 そこで、旧ガザール国でラカユ国に併合を望んでいる若い兵士で構成される軍と、話合いをすることが決定した。




◇◇◇

 駐屯地が見える場所まで転移して様子を伺っていると、私たちを発見した兵士が数人出迎えてくれた。私たちは目印にラカユ国国旗を掲げている。若い兵士はよく訓練されていて、丁寧に挨拶してくれた。


 テント前では綺麗な女性たちが待っていた。私が男だったらこの出迎えでメロメロになってしまい、ホイホイ言うことを聞くような気がする。

 メルトミ・ルドリフ元帥が先に名乗ると、綺麗な女性の中からひときわ小さな女性が一歩出てきて挨拶をした。


「わざわざお越し下さりありがとうございます。私がオフマンホルコ打倒軍代表をしているカロリーナ・アベリウムと申します。リデア・ポミアン元帥だけでなく、メルトミ・ルドリフ元帥まで来ていただき恐縮します。ここにいる者はガザール国では私が最高位の大佐で、私と一緒にいる者は中佐と少佐ですし、全員女です。男性将官と佐官は部下を置いて、南ガザール国に逃げてしまいました」


「それは大変でしたね。よく部下を守られました。それに訓練が行き届いているようで、皆いい動きをしています」


「メルトミ・ルドリフ元帥にお()めいただけると小っ恥ずかしいですよ」


「いえいえ、なかなかのものですよ」


「ところで、わざわざ来ていただいて申し上げにくいのですが、昨晩から敵軍の攻撃が激しくなり、ここも安全とは言いきれません。もしよろしければ安全な貴国でお話したいのですが、国境を越えますので、国内に周知していただけませんか」


「いいですよ。でもその前に医師を連れてきましたから、怪我(けが)人を見させて下さい」


「助かります。腐敗が進んでもう手遅れの者もいますが、できるだけ助けたいのでよろしくお願いします」


 メルトミ・ルドリフ元帥は先頭に立っていた『まりちゃん』をカロリーナ・アベリウムに紹介した。


「紹介します。こちらが今回の医師団長『まり様』です。彼女たちは勝手に治療に当たりますので、それまで世間話でもしましょうか?」


「お二人とお話しできるのは嬉しいです。食べるものは堅パンしかないですが、よろしいですか?」


「リデア・ポミアン元帥が腕利きの給仕を連れてこられましたから、彼女が美味しいものを出してくれます。テントでお話ししましょう」


「華様、申し訳ありません。しばらく彼女たちと話しますから、給仕をお願いできませんか?」


「もちろんです。さきほどララ様に承っていますから、気にしないで下さい」


 迎えにきた女性たちと一緒にリデア、メルトミ、華ちゃんはテントの中に入っていった。

セラーヌ、マブナ、アレナ女王専属護衛官はリデア元帥とメルトミ元帥の護衛に付いてもらう。


 私たち医師団はこれから患者のいる場所に行く。案内してくれた女性医療官は、申し訳なさそうにしていた。私たちは最先端医療チームだと宣伝している。まりちゃんを筆頭に、私、楓、雪ちゃん、小町ちゃん、つばさちゃん、歩ちゃん、みちるちゃん、居候のステンノー女王が治療に当たる。華ちゃんは外れて軍服のまま給仕をしている。今回は軍事関係者だけの集まりなので全員メイド服は着ていない。


 私たちの軍服は雪ちゃんの最新デザインで数種類ある。大きくなりすぎたラカユ国軍は目視により部隊の区別も必要となった。


 男性の軍服デザインは変らないが、女性は所属部隊でデザインが違う。私たちは医師団だから統一色にしないといけないが、ここにいる者たちは我儘(わがまま)の集まりだから、全員違う。


 医師団の本来の服装は紺色にピンクの模様が入ったワンピースで、裾は一部ピンク紋様が入っている。ワンピースだからベルトもピンクを中心に紋様がある。今回はスカーフはないが、そのかわり軍帽がある。これにも軽く刺繍がしてあり、今回は満開の桜を模したマントも付随している。それに極めつけは胸元が開いているから胸が大きいほど似合うようになっている。この軍服はマントだけでなく靴と黒のソックスもセットになっている。しかも背の低い私のために靴は戦いに支障がない程度でややヒール系となっている。私は初めてこれを見た瞬間、渋谷で見た軍服のコスプレを思い出した。雪ちゃんはきっとあれを模したのだろう。今回のものはこれまでのものと違い明らかにコスプレで、それぞれの所属ごとに違うが女性兵士の受けは良かった。まりちゃんは私と同じデザインだが紺色部分が黒で統一してある。楓は私と同じものだが、胸元が空いてないタイプだ。


 雪ちゃんは赤を基調としたスカートに白いブラウス、それにマントも赤いマントに淡いピンクの桜が散りばめられている。ベルトは(しぶ)く黒い。しかも超ハイヒールだ。


 小町ちゃんはダークグレーを基調とした超ミニスカート、華ちゃんは濃い茶色を基調とし、みちるちゃんは白いスカートに赤を基調としたブラウスでマントは空色に濃い桜が散りばめてある。


 歩ちゃんは若草色を基調にしているが、ベルトは黒い。つばさちゃんは私と同じデザインだが動きやすさを重視し上下が分かれているし、黒を基調としている。私の護衛官は全員つばさちゃんと同じものを選んだ。


 ステンノー女王は雪ちゃんと同じ服装をしていたが、ブラウスは薄いピンクに変えさせられた。


 リデア・ポミアン元帥は小町ちゃんと同じ、メルトミ・ルドリフ元帥は華ちゃんと同じだが上下が分かれている。ピノ・バルセン元帥は白いアシメスカートだがブラウスは青い。マントも白いが、目立たないため、ブーツも靴下も白い。桜の紋様と金の刺繍がしてある。ちなみにヘルシス宰相の軍服は私と同じものだが、紺色部分が濃モスグリーンで、上下が分かれている。ベルトは地味に焦げ茶色だが、上着には金色の刺繍(ししゅう)が入っている。


 ワンピースタイプだろうと上下別のスカートだろうと全員動きやすいようにプリーツスカートとなる。タイトスカートはかわいくないという理由で却下されているが40歳を超えたらタイトスカートに変更してもいい。



 そういうこともあり、黒に近い紺一色の彼女たちは私たちの服装に驚いていた。

 ステンノー女王はステンノ聖女国の軍服でいいと思うのだけど、今回のデザインがかわいいからと気に入って着ている。


 あんた軍事パレードのときも、来賓なのにステンノ聖女国の軍服を着ないで、ラカユ国の軍服を着ていたよね。


 案内された場所は、森の中で、そこでは(うめ)き声を上げる兵士たちの姿があった。

 なぜこんなにもいるの? どう見ても数千人いる。しかも全員瀕死だった。軽傷の兵士はそのまま現場でオフマンホルコ軍を警戒しているらしいが、不衛生な状態で、消毒する薬剤もないから軽傷の兵士もいずれここに運び込まれる。


 まりちゃんに出血の酷い者の縫合を急ぐように指示し、雪ちゃんの手持ちでは足らないので、楓に世界樹の木を伐採してくるように頼んだ。


 木陰から転移した楓はすぐに10本ほど伐採して戻ってきた。雪ちゃんと小町ちゃんが急いで青汁を絞り出し、私、つばさちゃん、小町ちゃん、歩ちゃん、みちるちゃんは死期が近いものから優先して最高難度回復魔法超グレートエクストラヒールを掛け、ステンノー女王は魔族式最高難度回復魔法を掛けた。

 まりちゃんは止血をしているから、あとは世界樹の治()力に任せた。楓は何回か往復し世界樹を伐採した。夕刻になりやっと全員の治療が終わった。その間に亡くなったものは65名だった。いくら最高難度回復魔法超グレートエクストラヒールだって、世界樹だって死んだ者まで生き返らせることはできない。


 今回はあまりにも重症患者が多すぎてトリアージができなかった。治療を待っている間に死んだ者がいたことは、これからのラカユ国の医療体制を考えるいい体験になった。


 医療官には今回使った世界樹の幹と葉の絞りカスから作った丸薬を化膿防止薬として預けた。これで軽傷の者が重傷化することもなくなるだろう。


 私たちは食事をしていなことに気付き、テントで待つリデア・ポミアン元帥の元に急いだ。

 テントの中では華ちゃんの出すデザートに黄色い声がしていた。


 リデア・ポミアン元帥とメルトミ・ルドリフ元帥は相手の警戒を解くことにも優れていた。


最後まで見ていただきありがとうございました。

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