ステンノー女王見参
「リデアちゃん、久しぶりね」
「ララ様昨日も会いましたよ。私のケーキを横取りしたことをお忘れですか?」
「そんなこともあったかな? 今日は『雪ちゃん、小町ちゃん、華ちゃん』が朝からケーキを沢山作ってくれたのよ。これからケーキパーティをすることにしたわ」
「それはいいですね。昨日のことは忘れてあげましょう」
「それで緊急信号弾まで上げて何の用かな? きっと悪いことでしょうね。やっぱり聞きたくないわ」
「それは無理なことですよ」
「もうずっと悪いことばかりでお腹いっぱいよ」
「うっわぁ――――――、これ全部新作ではないですか? 私ラカユ国に生まれてよかったです」
「あなたが生まれたときにラカユ国はなかったわよ」
「いいえ、私はラカユ国で生まれ変わったのです。だから私はラカユ国で生まれたのです」
「よく分からない理屈だけど、新作ケーキに免じて許すわ」
私はケーキを食べながら、覚悟を決めて聞くことにした。
「リデアちゃん、ところで急用って何?」
「はい、それが……人魚の木がラカユ国内で多数発見されています。まだ国境周辺なのですが、大掃討作戦をしたいと思います。国土が広くなって監視が追いついていません」
「そうね。あれは、始末が悪いから早く始末しましょう」
「では、この度雪様が半径10㎞に反応する人魚の木探知魔法器を作成していただけましたから、それを使いラカユ国内の人魚の木をすべて焼きます」
「えー!! 雪ちゃん、いつの間にそんなものを作ったの?」
「リデア様が人魚の木を発見できたらララ様が喜ぶ。と話されたので、そんなものでいいのならば簡単ですから製作しました」
「雪ちゃん、どうしてこれまで作らなかったの?」
「誰も要望しませんでした」
「そういえばそうだね。ははは……。それにスマホタイプなのもすごいね」
「もっと時間を掛ければ半径30㎞まで伸ばせるのですが、消費魔力が多くなるので一般の魔法使では使えないのです」
その日はラカユ国あげて人魚の木と人魚の木の果実の一掃が行われた。人魚の木探知魔法器は小町ちゃん、華ちゃんの協力も得て量産し、10㎞ごとの小隊の駐在地に配られた。
他国が人魚の木に苦労している間、ラカユ国は人魚の木を全滅させた。その後も人魚の木の果実が流入しても人魚の木探知魔法器が反応し焼却された。
ラカユ国はトホギア連邦を併合したことで、ステンノ聖女国と国境が1㎞接することになった。
トホギア連邦併合後2週間経過したとき、ステンノ聖女国女王からラカユ国女王に親書が送られてきた。
その内容は簡単に言えば『仲良くしたいので、人魚の木探知魔法器をちょうだい』というものだった。
最後に女王のサインがあるから本物の親書のようだが、これまでステンノー女王のサインを見た者はいないから本物かどうかの区別はつかない。
雪ちゃんに本物かどうかを確認してもらうと、本物だということだったが、雪ちゃんとつばさちゃんはちょっと怒っていた。
「ララ様、渡す必要はありません。代わりに私が返事を書きますから、それを送ってください」
「うん。いいよ」
どうしたんだろう。なぜか雪ちゃんが積極的に手紙を書いてくれた。
その内容は白紙のまん中に書いてあった。
$&%$###!&%&$#%%
う~ん。読めない。
「雪ちゃんなんて書いたの?」
「お前が直接来い!」と書きました。
「女王読めるかな?」
「大丈夫です。飛んでくるはずです。手紙は明日には着くので、現在の私の匂いがついた手紙を頼りに、私の元に転移してくるはずです」
「え! ステンノ聖女国の女王は転移魔法を使うの?」
「使いますし、他の魔法も使います。やつは匂いフェチですから、必ずここに来ます。女王の部屋で待っていれば、勝手に来ますから、明日は女王の部屋で弄りパーティーでもされたらいかかですか?」
午前11時29分ですね。ステンノーが今転移魔法を使いました。もう現れますよ。皆さんお下がりください。あれほど転移魔法を使うときは、障壁を張って魔素が漏れないようにしろと何度も注意したのに、ダダ漏れだから、また注意しないといけない。
<<<パンパカパーン>>>
女王の部屋には紙吹雪が舞っている。
「ステンノ聖女国ステンノー女王様、お初にお目にかかります。ラカユ国女王鹿野ララです」
ステンノー女王は現れたと思ったら、沢山の人に歓迎され戸惑っていた。キョロキョロ回りを見ていたが、突然嬉しそうに抱きついた。
それは私ではなく、『雪ちゃん』だった。それからすぐに『つばさちゃん』にも抱きついた。
「エキドナお姉様、ベルゼブルお姉様、お久しぶりです。妹分のステンノーです。会えてうれしいです」
そう言った途端、雪ちゃんとつばさちゃんのグーパンが、ステンノーの顔めがけて飛んだ。
ステンノー女王は気を失った。
「ララ様を無視するとは言い根性をしています。殺してもいいのですが、どういたしましょう」
「私が斬り捨ててもいいのですが、このまま首を落としましょうか」
「二人とも、怖いことを言わないで。とりあえず彼女を起こしてくれる。一国の女王だから話し合いで解決しましょう」
雪ちゃんが最高難度回復魔法超グレートエクストラヒールを掛けた。
「雪ちゃん、そこまでの状態だったの?」
「あと数分そのままにしておいたら棺桶が必要でした」
雪ちゃんとつばさちゃんは怒らせないようにしよう。
「ステンノー様、気づかれましたか?」
「あ、はい。何か★が見えて、失礼しました」
「では改めてラカユ国女王鹿野ララです」
「? あなた、もしかして、ララ・ステンマ?」
「どうしてその名を知っているのですか?」
「やっぱり貴方だったのね。私よ。あなたたちと一緒に馬車に閉じ込められて、奴隷に売られそうになったところを山賊に襲われた子よ。あなたたち孤児と違って、町中て攫われたけどね」
「ああ、あのときの子ね。無事だったのね。お互い苦労したわね。それにどちらも女王なんて何かの因縁ね」
「そうね。それに私のお姉様たちがいるのだから、私たち運命の出会いかもしれないわね」
「だったら、仲良くできそうですね」
「ララ様」
「雪ちゃん、何?」
「こいつは私たちと違って生粋の悪魔です。あまり信用しないほうがいいですよ」
「私ね、もうサタンに食われるのが嫌になったのよ。今回だけは逃げたくて、国を作ったの。でもまた最近サタンの気配がするから、毎日怖くて、ガルジベスも最近は気配がなくなって、何かもっと邪悪な何かに生まれ変わったみたいなのです。私、もう怖くて、毎日お姉様たちを探していました。やっと探し当てて、今日はものすごく嬉しい」
「雪ちゃん、プチサタンのことでしょ?」
「プチサタンはあれからまだ本来の力を取り戻していないようです。もし本来の力を宿したら勇者が覚醒します。まだ勇者は覚醒していませんから、楓様でもいい勝負をするでしょう。むしろここ最近は力を失いつつあるようです」
「どういうこと?」
「まだ、はっきりしませんが、ステンノーの言葉ではっきりしました。これまでの黒服隊の調査結果と照らし合わせると、サタンはいつまでも覚醒しない真司を諦めて、ジャン・ラクソンに切替えたようです」
雪ちゃんは、サタン復活の可能性を教えてくれた。
「ガルジベスは四天王で一番頭が悪いのです。しかも大がつくほどです。どうせジャン・ラクソンを吸収するつもりで、反対に吸収されてしまったのでしょう。あいつは自分は賢いと思っているようですが、あいつの悪巧みは顔に出るんです。やつと2、3日付き合えば誰でも分かります。知らないのはやつだけですよ。
これでサタンが復活することが決定しました。500年先の予定だったのですが、もう時間の問題です」
雪ちゃんはこれまで以上に危機が迫っていることを教えてくれた。
これ以上ララ様に話すべきかどうか迷ってしまう。
まだジャンが熟していないからサタンは目覚めてないが、でもそう遅くない。もう私でも手に負えない。例の能力が目覚めたたら、もう勇者しか太刀打ちできない。ララ様早く覚醒してください。ララ様は勇者の生まれ変わりなのです。一分でも早くサタンより早く目覚めてください。ララ様が目覚めるためには、プチサタンをしている真司を、ララ様が殺さないと勇者の卵が孵らない。真実を話すべきか? 隠すべきか?
やはり真実を話してララ様の判断に任せよう。それで、嫌がられたら最後までサタンと戦い、私が一緒に死んであげよう。雪として、生まれ変わらせていただいたのだからそれぐらいは私の務めだ。
私はステンノー女王から、サタンのこと悪魔四天王のこと、助けて欲しいこと、人魚の木探知魔法器を譲渡して欲しいこと、サタンが現れたときには協力して滅ぼして欲しいこと、適正な貿易関係を築きたいこと、お茶会に招待して欲しいことの盟約を結びたい。という希望だった。
私としてもいい提案なので受入れた。
それから、雪ちゃんからとんでもないことを聞くことになった。
△△△
「雪様、1週間に1度会議の度に迎えに来ていただけてとても嬉しいのですが、できれば3日に一度迎えに来ていただけると、とても嬉しいのです」
「他の方に比べて順番が1回抜かされているからですか?」
「やはり、雪様ですね。よく分かってらっしゃる。私の抜かされた番にはヘルシス様が……酷いと思いませんか」
「そうですね~? でも、私がここに来るメリットがありません」
「で、相談なのですが、ララ様が喜ぶことを一つお知らせします。私のところにはヘルシス様と同じように国内・国外の情報がいち早く入ります。ララ様に関することや、ララ様が喜びそうなことを雪様にいの一番にお知らせするというのはどうでしょう」
「それはいい提案ですね」
「ただ問題が一つあります。今の緊急連絡用の魔法陣は私には使えず、ここの魔法紙でも3文字が限度です。雪様に連絡したくても、できません」
「では、これを使ってください」
「これは何ですか?」
「これは魔道LEIN装置です。ララ様が前世で使っていたものを参考に、作ってみました。今のところまだ2つしかありませんが、あなたと私を直通で繋ぐことが出来ます。字数は100文字制限ですが、十分でしょう」
「それ、いただきます。で、今回ですが、人魚の木探知魔法器を作られたら、大喜びされますよ」
「そんなものでいいのですか?」
「大発明ですよ。絶対喜ばれます」
「わかりました。サッサッと作って披露しましょう」
「で、私がLEINを送ったら、すぐに迎えに来ていただけますか?」
「いいですよ。どこにいようとその魔法器の位置は関知できますから」
「では、そういうことで、これからも長くお付き合いください」
「こちらこそ」
「ふふふ、これで子作りができるわ」
「ふふふ、これで小町と華を出し抜ける」
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