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ゲルス騎士国軍女性部隊

 ゲルス騎士国軍には3日間続けて夜襲を掛けたが、さすがにの待ち構えていた。決死隊(決尻隊)がいつものように夜襲を掛けたが、そこには罠が仕掛けてあった。テントに兵士は一人もおらず、決死隊は囲まれ、戻ることができたのは2,035名だった。結局決死隊(決尻隊)が殺害した敵兵は初日が8,000名、2日目が3,000名だった。そもそも処刑される予定の者が11,000名も敵兵力を削いでくれたのだから大成功だと言っていい。それなのに帰還した2,018名をヘルシスは皆殺しにした。



 決死隊(決尻隊)が夜襲を掛けたのはゲルス騎士国軍の精鋭部隊だ。同じ兵士でも彼等を叩くことは今回の戦いの最優先事項だった。それを叩いたことは大成果だったが、最後の仕上げが今回のビーム攻撃だった。


 ヘルシス宰相が決死隊(決尻隊)にお尻を出させて手を上げさせたのは味方だという合図ではない。ゲルス騎士国軍は帰還する兵士がみな同じように尻を出して右手を挙げていたから、それがラカユ国軍とゲルス騎士国軍を区別する合図だと勘違いした。いや、ヘルシス宰相により勘違いさせられた。いや、正確にはこんなゲスな原案はリデア・ポミアン元帥だ。


 ヘルシス宰相が双眼鏡で覗いていたのはお尻ではない、その股間から出ている逸物だ。彼等の逸物の裏側には入れ墨が施してあった。

 そこには『殺人者で~す』『強姦魔で~す』と彫ってある。

 それにしてもヘルシス宰相はえげつない作戦を思いつくものだ。私は知っているよ。あそこに入れ墨を彫らせたのはリデア・ポミアン元帥だよね。



 ゲルス騎士国軍が送ってきた偽兵2,018名はエリート中のエリート騎士だった。もし彼等を受入れていたらラカユ国軍は回復不可能なほどの打撃を受けていただろう。

 まだ、薄暗いため顔の識別まですることは難しい。発光素材で入れ墨をしていなければ区別つかなかった。


 ヘルシス宰相はそこまで計算していた。発光素材を使ったのはヘルシスの案だ。

 あ~私は彼女たちが味方でよかったとつくづく思った。いつのまにかヘルシス大明神に向かって手を合せていた。



 あとは早かった。精鋭部隊がいないゲルス騎士国軍はラカユ国軍の敵ではなかった。


 度重なる夜襲で疲れていたゲルス騎士国軍だったが、精鋭を失い、ラカユ国軍の総攻撃に白旗を掲げた。2,018名のエリート軍が全滅してわずか1日でゲルス騎士国軍は降伏した。


 ゲルス騎士国軍の処遇は、そのままゲルス騎士国に返す、捕虜にする、ラカユ国軍に編入する、処刑する、の選択肢があったが、捕虜は真っ先に没となった。捕虜を養うほどの食糧が今のラカユ国にはない。シドル連邦に備蓄の3分の2を寄贈したことで1年分の備蓄しか残っていない。それもトホギア連邦を編入する前のことで、編入後は8ヶ月分に減っている。ラカユ国とて大急ぎで灌漑を進めているのはそういう理由からだ。そんなときに敵兵を養うことなどできない。


 結局いずれ脅威になるとしても兵士のほとんどを本国に返した。


 ゲルス騎士国軍のほとんどを返したが、その中にはヘルシス宰相の目にかなう優秀な軍人がいた。ヘルシス宰相はゲルス騎士国軍の中から女性部隊200名を選び、ラカユ国軍に編入した。ほとんどが若い兵士だ。その中でも最も優秀だったのが、アレナ・ストビア少尉とローザン・メナード少尉の二人だ。

 アレナ少尉はヘルシスの夜襲作戦を真っ先に見破り、2日目も夜襲があるから昼に寝て夜起きる部隊の編成を提言していた。ローザンは尻作戦には別の目的があるから、死体を調べろと助言していた。どちらの提言も上層部は無視したため、大敗することになった。


 アレナ少尉は15歳、ローザン少尉は14歳、どちらも13歳で最難関の国立国軍養成校を首席で卒業していた。女が2年続けて首席卒業したことで軍部は彼女たちを(うと)み、この度の侵攻にあわせ、地方の優秀な女性兵を集め、彼女たちの部下とした。そして与えた命令が最前線での戦闘だった。上層部の(じじい)は彼女たちに早く死んで欲しかった。


 ヘルシス宰相は最前線にいた女性兵士で構成されている部隊の統率が敵兵の精鋭部隊より優れていることに感心していた。それに女性兵士だけというのが腑に落ちなかった。


 ヘルシス宰相の下した命令は『女性兵士は決して殺さず、生け捕りにすること』だった。だから私と楓、つばさちゃん、雪ちゃん、小町ちゃん、華ちゃんは彼女たちの生け捕りに集中した。


 おかげで、彼女たちをほぼ無キズで捕獲できた。今回は敵を皆殺しにする訳ではないので、敵兵に気づかれずに連れてくるのがこの作戦の肝だった。敵に捕まることを良しとしない兵は、剣を抜き斬り掛かってきたが、雪ちゃん、小町ちゃん、華ちゃん、つばさちゃんは、一度に数人に峰打ちをしていたから、彼女たちには打撲痕が残っている。私と楓はそんな芸当はできないから、一人ずつ転移で後ろからコソッと近づき剣をとりあげてから、ラカユ国に転移した。


 彼女たちの思想確認などをしたが、どの子も酷い仕打ちを受けていた。彼女たちの階級はその能力からみて3段階以上低く見下されていた。


 元ゲルス騎士国軍女性兵200名がラカユ国宮殿大ホールに整列している。そして彼女たちの前には豪華な料理がある。今日は任官式兼食事会だ。備蓄は8ヶ月分しかないが、シドル連邦からラカユ国に漁港を1つ与えられていたから、豊富な魚は捕り放題だ。彼女たちの目前には肉料理に寿司、魚料理、洋食がふんだんに並べられている。


 シドル連邦漁港からの魚介類が増えたことで、ラカユ国の実質食糧増加は1.3倍となり、備蓄だけに頼らなくて済むようになった。シドル連邦との国交樹立はラカユ国にも大きな恩恵を生んだ。



 壇上に登場した私は彼女たちに挨拶する。



「準備はいいかな――――――――――!!! ここにいる人は全員昇格だよ。これまでの査定がでたらめだったからね。特に優秀な二人は軍部から離れてもらいます。みんなにはあとでヘルシス宰相から任官書が渡されるから、それぞれの部隊に所属してねー。内緒だけど、下士官から将校になった人が198名います。イエーイ!!」


 私の発言に会場は静まりかえった。将校は2名しかいない。あとは彼女たちの部下だから最高位でも曹長だ。全員優秀だったから二等兵はいなかったが下士官だった。

 つまり全員が少尉以上に昇格したことになる。


 ヘルシス宰相に言わせれば、ラカユ国の少尉基準よりも全員が、学力も剣も優秀だった。決して甘い査定ではない。


「アレナ・ストビアちゃんとローザン・メナードちゃんは壇上に来てくれないかな~」


 二人はどうしたものかと思っていたが、壇上に上がってきた。


 私は二人に抱きついた。


「二人ともよろしくね。あなたたちには私の専属秘書官になってもらいます。もう三人では足らないのよね。彼女たちをここ1ヶ月休み無しで働かせてしまったから、優秀な人が欲しかったのよ。女王の部屋にようこそ」


 二人は顔を合せキョトンとしていた。


「アレナ・ストビア大佐、女王専属第四秘書官に任命します。ローザン・メナード大佐、女王専属第五秘書官に任命します」


 ラカユ国には産前産後休暇はないが、産後はなるべく休ませたい。大和と励んでいる三人が一度に妊娠してしまったら代わりの秘書官がいない。国も大きくなったからあと数人いてもいいくらいだ。


 会場は一気に盛り上がり大歓声が響いた。


 ということで、ここまではヘルシスちゃんの助言通りに従う。


 ここからは私の独断だ。


「マブナ・モレシィ中佐、こちらに来なさい」


 大歓声だった会場が一瞬で静かになった。そりゃあそうでしょうよ。だって彼女は伍長だったのだから。一番ビックリしているのは呼ばれた彼女だ。まわりをキョロキョロ見ている。そうでしょう、そうでしょう。でもそこで立っているあなたを呼んだのよ。


「失礼ですが、私が中佐というのは聞き間違いではないでしょうか?」


 さすが私の見込んだ子だ、はっきりしている。


 ヘルシス宰相はマブナ・モレシィに壇上に上がるように指示した。女王の命令だからヘルシスもそれに従う。


 どうして楓が悔しがっているの? あなたには関係ないでしょ?

 雪ちゃんはニコニコだし、ヘルシス宰相もニコニコだ。訳が分からない。

 とにかく私は独断を実行するのだ。


「マブナ・モレシィ中佐、あなたを女王専属第三護衛官に任命します」


 大ホールはこれまで以上の大歓声だ。


「みんな~これからは食事会だよ。好きなだけ食べて、好きなだけ飲んでね。今日1日くらいたらふく食っても太らないから。さあ祭だ。イエ――――――――イ」



 ホールの片隅では『楓』がヘルシス宰相に金貨20枚を渡す姿があった。


「まさかお姉ちゃんが本当に彼女の才能に気づいて、任官するとは思わなかったわ。私は彼女の剣技を見たから知っていたけど、お姉ちゃんは見てないはずなのよね~。だから絶対任官しない方に賭けたのよ」


「ふふふ、楓様甘いですよ。もしララ様が任官しなかったら私が推薦するつもりでしたが、やはりララ様には野生の勘がありますね。まるで野犬並ですよ。単純ともいいますが、よく考えてみてください。あの方は敵だった私のことを何も知らないのに。自軍の最高司令官に任命するような方です。そういうところは私の遙か斜め上を行かれているのですよ。確かに金貨20枚いただきました。全財産を失われた楓様にはいいアルバイトを紹介しましょう」


「お、お願いします。皿洗いでも何でもします」


最後まで見ていただきありがとうございました。

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