失踪
「あなた、お帰りなさい」
私が帰ってきた夫を玄関まで迎えると、彼は蒼白な顔をしていた。
「どうしたの?」
私が聞いても夫は答えてくれず、何かに怯えるように震えるばかり。
「今日はもう寝るから」
と言い残し、ベッドに入ろうとする夫に、
「そういえば今日、変な電話があったの。女の人からみたいであなたに用があったみたい」
私は昼間きた電話のことを伝えた。
その途端、夫は顔を強張らせ、
「そ、そ、そうか。あ、じゃあ疲れているから」
そそくさとベッドに行ってしまう。
この時、私は彼に聞けばよかったのかもしれない。
翌朝、仕事に出掛けた夫は、二度と帰って来なかった。
彼の会社から電話があり、出社していない旨を伝えられる。
すぐさま夫に連絡を取ろうとした。
しかし電話もメールも応答なしで、連絡は取れない。
(昨日の怯えようと何か関係があるのかしら……)
彼の書斎に入り、手掛かりを探す私。
その視界に入ったのは、くしゃくしゃにして捨てられた紙。
「なにかしら」
私は拾い上げ紙を広げて見た。
あくむのようなじかん
のなか、このみはもう、
ひなたをあるけない。
のどがをかしくなるほど
じぶんのこのみをのろう
こんなうつろぐなんて、
をとこのことしんじた
わたしがばかでにくい。
すでにもうこいしいのに
れんらくのひとつもくれ
ないのね。ひどいひと。
いまからあいにいきます
。
「ひっ!」
私は怖くて紙を手放した。
カサッと落ちた紙。
(一体、夫は何をしたの……?)
私は力が抜けてその場に座り込んだ……。
完
ヒント
まず、一番左側の文字から縦に読みます。すると隠された言葉が出てきます。
次に一番左側から右下に向かい、斜めに読んで下さい。もうひとつの隠された言葉が出てきます。