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そして、黒百合は手折られた  作者: 中年だんご
第3話 黄金の螺旋
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黄金の螺旋 19


 聖技は見ていた。パラディンが構えるのを。タワーシールドでその身を隠しながらも、ハルバートを前進に向けた突撃体勢。


 ランスチャージ。


 パラディンが走り出す。初めはゆっくりとした進みだったのがだんだんと速度を上げ、途中の建物など飴細工のように粉砕し、()()()()()()()()()()()()()()


「……ッ! ルインフィンガー・ランチャー!!!」


 考えるよりも早く、ドール・マキナ・マーシャルアーツの時に付けた癖で武装名を叫びながら発射していた。DMMAでは広範囲攻撃を行う際に声かけ申請すれば加点されるのだ。


 大量のビーム弾が夜空を飛ぶ。パラディンは、それらをプラズマ・タワーシールドで防いだ。


 足は止まった。再度の行動を防ぐため、聖技はルインフィンガー・ランチャーをひたすら連射する。


 パラディンに搭載されている動力、マリウス・ジェネレーターは、マリウス教曰く、”神の奇跡”によって誕生すると言われる動力だ。


 なんのこっちゃ、と非マリウス教徒は思うのだが、その性能は無視できるものでは無い。大型マキャヴェリーに搭載されているミスリル・リアクターとは比較にならない程の、超高性能動力だからだ。


 単純にミスリル・リアクターよりも出力が高いだけでなく、その稼働時間も凄まじい。無茶な高負荷をかけないかぎりは、30年間休むことなく動き続けると言われている。


(無茶な、高負荷……!)


 プラズマ・スキンは展開範囲が広くなるほど加速度的に消費電力量が増加する。28メートルの巨体全身を隠せるほどのタワーシールドともなれば、その消費量は相当に多いはずだ。だが、


「30年の寿命がどれくらい短くなってくれるかなぁ!?」


 既に多少の消耗があったとしても、数分程度にまで短くなるとは思えなかった。それに、


(このままだと砲身が持たない……!)


 ルインドライブが莫大な電力を供給してくれているが、左右十指からなるルインフィンガー・ランチャーには稼働限界は当然存在する。どう考えても、パラディンのマリウス・ジェネレーターの寿命よりも、ルインフィンガー・ランチャーが壊れる方が早いだろう。そうなった瞬間、


「ヤッべ、死ぬ……!?」


 何か逆転する手段はないか。周囲を見渡すと、カリタはその数を大きく減らしていた。さらにパラディンの後ろ側からホーシィ・ホーキィが接近しているのが見える。恐らくはカリタから奪ったであろうアーマーブレイカーを手にしている。その速度は鈍重だ。少なくとも先ほどまでの軽快さはかけらも残っていない。


 ホーシィ・ホーキィは市街地戦闘を主体とする前提の機体で、ペイロードを犠牲にスペックを底上げしている。アーマーブレイカーは、ホーシィ・ホーキィには重過ぎるのだ。


 だから、こうなるのは目に見えていた。


 盾の反対側、ハルバートの一撃で、近付いたホーシィ・ホーキィはアーマーブレイカーを届かせることなく沈黙した。


「クッソ……!」


 叫んだ瞬間、モニターにインフォメーションアラート画面が開く。ルインブレイザーが使用可能であることを知らせるものだった。


 状況を見てモノを言えこの馬鹿と思う。ブレイザー・システムはプラズマ・スキンを展開した砲身を高速回転させることで、その内部を通るビーム粒子を超圧縮させ、疑似的なライフリングによってジャイロ効果を生じさせる装置だ。


 ルインブレイザーが直撃すれば、プラズマ・スキンそのものは突破できなくとも、相互発生する反発力で盾を、あるいは盾ごとパラディンを吹き飛ばせるだろう。


 だが、だがだ。


「発射時間がかかりすぎるんだよぉ……!」


 発射シーケンスを完了させるよりも早く、パラディンはルインキャンサーの元まで到達するだろう。ホーシィ・ホーキィに足止めをしてもらうかと一瞬考えたが、一撃で容易く撃墜される姿が脳裏に浮かんだ。まさに、


「外食行っとくってやつだっけぇ!?」


 一応補足しておくと、聖技が言いたかったことは鎧袖一触(がいしゅういっしょく)である。


 どうするか、何かないか。サブモニターを見回して使えそうなものを探す。


 電柱を引っこ抜いて棒代わりにする?


 その辺の車を投げつける?


 建物の壁を引っぺがして盾の代わりにする?


 葵たちはまだ避難していない。後方を映すモニターには、部屋の中からこちらを見ているのが見えた。


 ガブリエラが顔を真っ青にして、葵たちが連れ出そうと腕を引っ張っていて、豪奢な金の髪が揺れているのを見て


「ア!!!」


 天啓(プロヴイデーンス)!!!


「ブレイザー・システム……! シーケンス・スタートォ!!」


 天才的なひらめきを得た。ルインキャンサーに両手での砲撃を続けさせながら、胴体にある金に輝く五角星が稼働する。5つの三角形が起き上がり、プラズマ・バレルを展開する。


「ドラゴンスフィアへの電力供給をマニュアルでカット!」


 ドラゴンスフィア―――電力供給によってビーム粒子を生成する人口宝玉だ。それに電気を送らないということは、ルインブレイザーにビーム粒子が供給されないということで、


「しもつ、じゃなかったぁ!! スター3、突貫します!!」


 ホーシィ・ホーキィに伝達するため大声で叫んだ。


 突き進む。ガードレールは踏みつぶしたし高そうな車は蹴り飛ばした。パラディンとの距離はあっという間になくなった。


 目の前のデカい盾が邪魔だ。ビームを撃つのをやめる。ちょっと腕で払おうとしたら、盾の縁に当たった装甲が思いっきり変形した。勝てば官軍なので気にしないことにした。そして、


「ド・リ・ル! インフェルノォォォオオオ!!!」


 名前は適当だった。当然火器管制パネルにもそんな武装名は存在しない。ガブリエラの金髪ドリルを見た瞬間に思いついた、起死回生の一手!


 回転を続けるブレイザー・システムを、パラディンに押し付けた。


 ドレスは一瞬で引き裂かれた。金属同士がこすれ合い、激しい光と火花が散る。サブモニターでパラディンが暴れているのが見える。左右の腕で抑え込みを狙う。


「暴れんな! 暴れんなよ……! ここでなんとぉ! 目からビィィィムッ!!!」


 目暗まし目的でルインビームを発射した。メインカメラの至近から発射されるせいでメインモニターの視認性が著しく悪くなる。これ絶対に設計に欠陥があるよなと頭の変に冷静な部分で聖技は思う。


「当たってんじゃなくて当ててるんだよォ!!!」


 現実はペチャパイだった。一度は言ってみたい台詞が言えたのでちょっとした満足感があった。


 そして突然、パラディンは寝技の最中に失神したかのように動きを止め―――


「か、勝った……?」


 世界一頑丈なドール・マキナを、撃破した。


パラディンの防御能力をスパロボ的に説明すると

・ドレス

 非ビーム属性の攻撃を3000軽減。EN消費無し

・パブックアーマー

 ダメージが3000以下のビーム属性の射撃を無効化。EN消費無し

・プラズマ・タワーシールド

 シールド防御発生時、ビーム属性の攻撃を全て無効化。EN消費有り

とかいうかなりのクソゲー機体

しかもパイロットもエリート系のステータス


でもドリルにはバリア貫通が付いているからね。やられちゃうのは仕方ないよね

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