ざまぁバカ王子に密着して1ヶ月
「クソッ、はなせ! どうして王子である俺がこんな目に! 俺はこの国の王となる男だぞ!」
「お前はもう廃嫡されたのだ! その決定に背き、あろうことか実父である国王様の暗殺を計画し、それに気付いた家臣たちを口封じに何人も殺害するとは。その悪行、言語道断! 死をもって償うがいい!」
「そんな、なんで俺が処刑されなきゃならないんだ! 俺は悪くない! い、いやだ、斬首刑なんて、やめろぉ、頼む、やめてくれーっ! うわあーっ!」
「カーット!」
そこで監督から撮影終了の声がかかった。
なろうテレビの人気ざまぁドラマ枠のシリーズ、
「令嬢婚約破棄物語」が無事クランクアップを迎えた。
密着番組「情熱ナーロッパ」のスタッフは、撮影を終えたばかりの人気俳優オウギュストにコメントを求めた。
「お疲れ様です、今回も散々な目に遭う役でしたね」
「いやあ、前回の没落する貴族の役はスパダリ役の方にボコボコに打ちのめされたりしましたが、今回は処刑の前で済んで良かったです。ああ、前前回は魔法で焼かれましたっけ」
「大変ですね。それに加えて、毎度毎度、他のキャストに悪態をついたり暴力を振るうシーンばかりで、日常でもそのような性格だと思われることもあるとか」
「ありますねえ、バカ王子、とか、令嬢をいじめるな、とか、死ねとか街中で怒鳴られたり。事務所にカミソリや短剣と一緒に殺害予告の手紙を送られたこともあったなあ」
「そんなことが。実害もあるんじゃないですか?」
「そうですね、道端で石を投げられたり、見知らぬ人にいきなり蹴られたこともありましたっけ」
「それはひどい。しかし、オウギュストさんはいわゆる「ざまぁされる役」をこだわりを持って演じられていますよね。プライベートでそんな思いをしてまで、あえてこの役柄を演じ続けている理由とは、なんでしょう?」
「そうですね……。世の中つらいことのほうが多くて、仕事で失敗したり、人間関係のトラブルを抱えていたり、家族とうまくいっていなかったり。ストレスで押し潰されそうな人が、それはもうたくさんいるわけです。そんな方々が、ぼくがざまぁされる姿を見て少しでもスカッとしたり、ストレス発散してまた笑顔になれるんだったら──そう思えばこそ、こういう役も体を張って、喜んで演じられるんですよ」
そう言うと、オウギュストはスタッフに爽やかな笑顔を向けながら去っていった。
明日の早朝には、もう新番組の撮影が始まるという。
俳優オウギュスト
読者のストレスを少しでも和らげるため、彼はこれからも「ざまぁされる役」を演じ続ける。
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