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ルッティーの初勤務

「皆の者、よく来てくれた! 今日は楽しんで過ごしてくれたまえ!」


 ここは丘の上にポツリと建つお城。コーヒーゼリー大臣のお家。

 今宵も晩餐会を楽しみに6名の貴族や要人が招かれやってきた。


 鼻の下からクルリと伸びた黒髭を触りながら、ニコニコ顔のコーヒーゼリー大臣。

 どうやら、お客さまをお家に呼び、もてなすのが大好きなようだ。

 お客さまも頻繁に訪れているのか、緊張した様子は全くない。

 豪華な装飾で飾られた広間の中央に、大きなダイニングテーブルが置かれている。

 お客さまは各々、名札が置かれた席に座り、晩餐会の開始を待つ。

 

 全員が座り終えたのを確認すると、テーブルの真ん中の席に、コーヒーゼリー大臣が座った。


「今日は、大根の冷製スープ、黒毛和牛のステーキ、デザートにコーヒーゼリーじゃ!」


 一同、満面の笑みを浮かべている。本日のメニューに納得した様子である。

 

『チリンチリン!』

 テーブルの上に置いてある。銀色の小さなハンドルコールベルで、コーヒー大臣はメイドを呼んだ。


「コーヒーゼリー大臣様!!」

 慌てた様子で広間に現れたメイド。

 オレンジ色のクルクルした髪の毛。頬にはソバカス。満面の笑顔。


「今日から、メイド兼コックになりました。ルッティーです!」

「おぉ。そうか。そうか。今日からか。よろしく頼むのぉー」

「はい! 任せて下さい!」

 少し高い声の彼女は、自信ありげに胸を叩く。皆、優しい笑顔で頷く。


「では、早速じゃが、大根の冷製スープを持ってきて参れ。」

「コーヒーゼリー大臣様! 分かりました」


 そう言うと、奥の厨房にルッティーは消えていった。

 しばらくすると、


『ガラガラガラガラ』

 ワゴンを押す音が聞こえる。木製のワゴン。その上には、銀色の金属で出来たクロッシュが被さっている。

 おそらくあの下には、素晴らしい料理が、隠れているに違いない。

 一同は、期待に胸を躍らせた。


『ガラガラガラガラ』「あ――!!」『ガシャン!』

 ワゴンが小さな段差に当たり、少しよろめく。


「大丈夫か? ルッティー」コーヒーゼリー大臣は慌てて声をかけた。

「大丈夫です!!」ルッティーは、そう元気に答えた。


「料理も大丈夫か?」

「多分、大丈夫です!」


「ちゃんと大根の冷製スープを持ってきたか?」

「もちろんです!」

 大臣は、少し心配になり、確認する事にした。


「大根の冷製スープじゃぞ?」

「はい!」


「ちゃんと冷たいか?」

「冷たいです」


「白いか?」

「もちろん白いです!」


「当たり前じゃが、飲めるな?」

「頑張ったら飲めます!」


「ん? 何かおかしいの?」

「おかしくないです!」


 不安になったコーヒーゼリー大臣は、ワゴンの上のクロッシュを持ち上げ、中身を確認する。


「ばかも――――――ん!!」

「あ――――――!!」


「これは、大根の冷製スープではなくて、豆腐じゃ!!」

「すいませー-ん!!」


「でも、白いです!」

「じゃが、スープではないな?」

「頑張れば飲めます!」


「ばかも――――――ん!! 作り直してまいれ!!」


 その様子を見たお客様一同は、コーヒーゼリー大臣を呼んだ。


「ん? なに? 私たちは豆腐で良い? なんと心が広い。ルッティー。 皆に豆腐を配ってくれ。」


 一同、配られた豆腐を絶賛しながら、食す。


「皆の者、すまんの。次は大丈夫じゃ」


『チリンチリン!』

 テーブルの上に置いてある。銀色の小さなハンドルコールベルで、コーヒーゼリー大臣はルッティーを呼んだ。


「コーヒーゼリー大臣様!!」

 またも満面の笑みで、ルッティーは現れた。


「ルッティーよ。黒毛和牛のステーキを持ってまいれ!!」

「はい! コーヒーゼリー大臣様!」


 そう言うと、奥の厨房にルッティーは消えていった。

 しばらくすると、


『ガラガラガラガラ』

 ワゴンを押す音が聞こえる。木製のワゴン。その上には、銀色のクロッシュ。

 おそらくあの下には、素晴らしい料理が、隠れているに違いない。

 一同は、期待に胸を躍らせる。


『ガラガラガラガラ!」「あ――!!」『ガシャン!』

 ワゴンが小さな段差に当たり、少しよろめく。


「大丈夫か? ルッティー」

「大丈夫です!!」


「料理も大丈夫か?」

「多分、大丈夫です!」


「今度はちゃんと黒毛和牛のステーキを持ってきたな?」

「もちろんです!」


 大臣は、また心配になり、確認する事にした。


「黒毛和牛のステーキじゃぞ?」

「はい!」


「ちゃんと温かいか?」

「温かいです」


「お肉か?」

「もちろんお肉です!」


「噛むと簡単に切れるかな?」

「噛むと骨以外は大丈夫です!」


「ん? 割と黒いかな?」

「割と赤いです!」


 コーヒーゼリー大臣は、ワゴンの上のクロッシュを持ち上げ、中身を確認する。


「ばかも――――――ん!! これは、黒毛和牛のステーキではなく鮭のホイル焼きじゃ!!」

「あ――――――!! すいませ――ん!!」

 そう答えながらルッティーは、大げさによろめいた。


「でも、肉です!」

「魚じゃ!!」

「魚の肉です!」


「ばかも――――――ん!! 作り直してまいれ!!」


 お客様一同は、またコーヒーゼリー大臣を呼んだ。


「ん? なに? 私たちは鮭のホイル焼きで良い? 皆の者、なんと心が広い。ルッティー。 皆に鮭のホイル焼きを配ってくれ」

 一同、鮭のホイル焼きを絶賛しながら、食す。


「皆の者、すまんの。次こそは大丈夫じゃ」


『チリンチリン!』

 テーブルの上に置いてある。銀色の小さなハンドルコールベルで、ルッティーを呼ぶ。


「コーヒーゼリー大臣様!!」

 またまた満面の笑みで、ルッティーは現れた。


「お主は、へこたれないの! まぁ良い。ルッティーよ。コーヒーゼリーを持ってまいれ!!」

「はい! コーヒーゼリー大臣様!」


 そう言うと、奥の厨房にルッティーは消えていった。

 しばらくすると、


『ガラガラガラガラ』

 ワゴンを押す音が聞こえる。木製のワゴン。その上には、銀色のクロッシュ。

 おそらくあの下には、素晴らしいコーヒーゼリーが、隠れているに違いない。

 一同は、一番のお目当てのコーヒーゼリーに待ちきれない様子。


『ガラガラガラガラ!』「あ――!!」『ガシャン!』

 ワゴンが小さな段差に当たり、少しよろめく。


「大丈夫か? ルッティー」

「大丈夫です!!」


「わざとか?」

「はい。わざとです」


「では、コーヒーゼリーは大丈夫じゃな?」

「多分、大丈夫です!」


「今度はちゃんとコーヒーゼリーを持ってきたな?」

「もちろんです!」


 大臣は、またまた心配になり、確認する事にした。


「コーヒーゼリーじゃぞ?」

「はい!」


「プルプルしておるか?」

「プルプルしております」


「デザートか?」

「もちろんデザートです!」


「甘いかな?」

「甘いです!」


「黒いかな?」

「黒いです!」


 コーヒーゼリー大臣は、安心しワゴンの上のクロッシュを持ち上げ、念のため中身を確認する。


「ん? なんじゃ? ばかも――――――ん!!」

「あ――――――!!」

 そう答えながらルッティーは、大げさによろめく。


「これはコーヒーゼリーではない! 水ようかんじゃ!」

「あー!! おしいです!」

「惜しいとかではない! ばかも――――――ん!! 作り直してまいれ!!」


 お客様一同は、またまたコーヒーゼリー大臣を呼んだ。


「ん? なに? 私たちは水ようかんで良い? 皆の者、ビックリするレルッティーで心が広いの。ルッティー。 皆に水ようかんを配ってくれ」


 一同、水ようかんを絶賛しながら、食す。


「皆の者、すまんの。一からもう一度作り直すから、待っておいてくれるか?」


「なに? もうお腹がいっぱいで満足したと......。今度また食べにくると? すまんの」


 一同は、予定と違うメニューではあったが、大変満足して帰って行かれた。


「満足してもらえたなら良かった。ルッティーや! 明日はしっかりと頼むの」


 コーヒーゼリー大臣は、大らかにそう言うと自室に向かい歩き出す。


「コーヒーゼリー大臣様!! 大臣様にも同じのがありますが、食べますか?」

「ん? わしの分もあるのか? ぜひ頂こう!」


「この豆腐は、豆からのこだわりです!」

「うむ。そうか。これは上手いのー。皆が喜ぶのも納得じゃ!」

「明日もぜひ頼むの!」

「はい! コーヒーゼリー大臣様!!」


 コーヒーゼリー大臣は、満足な顔を見せた。

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