表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の召喚獣だけレベルアップする  作者: アッキ@瓶の蓋。
第1章『俺の召喚獣はレベルアップする/雪ん子の章』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/354

第20話 悪夢の始まり(2)

 雪ん子が洞窟の中に突入して、しばらく。

 例の冒険者達3人が、洞窟の入り口から出てきた。

 それも、命からがらといった形で。


「3人とも! どうなされた?! そちらにサエジーマさんから借りた召喚獣が居たはずだが……?」


 ノーマンの言葉に、3人は顔を合わせて。

 そして、「……消えた」と誰かが言った。


「実は、うちのリーダーがこの奥から出た魔物に襲われて……」

「俺達、必死に逃げたんだけど、リーダーとアイテムボックス持ち冒険者が、やられて」

「あんたが言ってる召喚獣は、俺達を助けようとして魔物に向かって、そのまま----」


 ノーマンは3人の言葉で、この奥に何が起きたかを把握した。


「(誰かが強力な魔物に襲われたのか? くそぅ、やはりレベルⅠの召喚獣だけでは、荷が重かったか?)」


 でも、3人も救えたのだから、良しとするべきである。

 召喚獣は召喚し直せば済む、しかし人間はそうではないのだから、これで良かったとすべきだ。


「よろしい、では3人はゴーレムに運んでもらい、安全な地域まで避難してください! わたくしは、この洞窟を封じますっ!」


 ノーマンの指示の元、2体のゴーレムは3人を乗せて、そのまま山を下りて行った。

 そして残った彼は、彼の唯一の武器たる鍬で、山めがけて振り下ろす。

 すると、洞窟に岩がなだれ落ち、入り口を完全に封じた。


「これで、どこまで持つか……」




「おいおい、大丈夫か? あんなんで?」

「良いだろう。ノーマンは人間に見えるけれども、NPCなんだから」

「そうそう。クエストが終われば、全部を忘れて初期化されて元通りになるんだから」


 ゴーレムに運ばれて救助される3人は、そうお互いに言い合っていた。

 自分達が、助けに来た召喚獣を斬って囮にしたということが、悪い事ではないと言い合うみたいに。

 犯罪などではなく、それしかないのだから仕方がないというべきのように。


「まぁ、アイテムボックスの野郎がいなくなったから、クエスト失敗はデカいけどなぁー」

「だなっ! まぁ、どうせクエストが終わったら初期化されるんだし、次で稼ごうぜ?」

「あーあ! あの武って言うバカ、もっとちゃんと稼がせろよな? こっちは精一杯おだててやったのによー」


 助け出された3人は、2人の犠牲者を出したにも関わらず、盛大に笑い合う。




 こうして、Cランクダンジョン《東神話大陸》のクエストは、2名の冒険者の死亡と共に、幕を閉じるのであった。

 その数日後に、3人の冒険者は報復を受ける事になる。

 文字通り、死を持って、だ。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 《東神話大陸》のクエストは、だいぶ稼がせてもらえた。

 なにせ、最終的な報酬額は10万円……ノーマンにゴーレム達2体と雪ん子を渡した特別報酬で、さらに上がったからな。

 残念ながら雪ん子は未知の化け物に殺されたみたいだが、貸すことが目的だからこれで良いだろう。


 あの後、念のために再召喚したけど、普通に出来たからな!

 問題ない、だろう。


 雪ん子には今回の件で色々と迷惑をかけたし、新しい武器の1つや2つでも買っておこうか。

 この10万円はこれからのダンジョン探索での投資、って訳で。


 そのような経緯から、どう投資しようか迷っていた俺が、今向かっているのは市役所----それもお偉い人達が揃っている会議室とやらだ。

 いきなり呼び出されるから、ほんと、なにかと思ったぜ。


「(見慣れた連中が、多いな……)」


 会議室に通されると、既に数人の冒険者が席に座っていた。

 その連中全てが、見慣れた連中……と言うか、あの時の《東神話大陸》のクエストを受けていた冒険者の面々である。

 全員が揃っている訳ではなく、特にあの3人----雪ん子達によって助け出された、あの3人のバカ冒険者の姿がなかった。


「(と言うか、本当になんで呼ばれたんだ?)」


 噂ではSランク以上の冒険者に対する内内的な指示、それか緊急事態くらいしか、この会議室は使われないと言うのだが----。

 それほど、重要な事態が起こっている----と言う事なのか?


「皆の衆。この度は要請に応え、集まってくれて何よりだ」


 そんな事を考えていると、扉を開けて2人のおじさんが入ってきた。

 1人はくたびれたシャツの疲れ切った小男、もう1人は幸薄そうなハゲの大男の2人である。

 彼らはペコペコと頭を下げながら、市役所関係者席に座っていく。


 どうやらあの2人が、市役所職員として、俺達に事情を説明してくれるみたいだ。


「皆を呼んだのは、他でもありません。緊急事態が発生したため、関係者たる皆様に伝えたい事があるからです」


 小男の市役所職員はそう言うと、もう1人の大男の市役所職員が後ろのホワイトボードに、3人の人間の名前を書き連ねていく。


 ランクⅠの【盗賊】、蜂須賀良太(はちすかりょうた)

 ランクⅠの【弓使い】、山内正二郎(やまうちしょうじろう)

 ランクⅠの【重騎士】、奥村三善(おくむらみよし)


 雪ん子達が救助した、件の3人の冒険者の名前である。


「彼らはこの数日の間に、3人とも幽鬼タケシ・ハザマなる魔物に殺された。ランクⅠの冒険者が、魔物に殺されるなど、君達にとってはあまり珍しくはない話なのかもしれないが、問題は場所(・・)だ」


 大男は、3人の冒険者の名前の横に、場所の名前を書いていく。

 だがそれが、今回、俺達が呼ばれた理由だと、すぐに理解できた。


 蜂須賀良太----"コンビニ前"。

 山中正二郎----"公園の広場"。

 奥村三善----"自宅"。


「そう、どれもがダンジョンでもない、ただの一般的な場所だ。相手が魔物でなければ、大したニュースにもなりもしないだろう、ごくごく普通の場所だ。

 ----今回、この3人を殺した魔物は、つまりは、"ダンジョン外で(・・・・・・・)行動できる(・・・・・)"」


 今までの魔物の常識を、ダンジョンの中でしか行動できないという制約を破った、特殊な魔物。


「君達は、その特殊な魔物に狙われるかもしれない。3人とも、直近での接点が、君達と同じクエストに参加していたことだけだったからね。

 わたくし達市役所は、そんな既存の魔物形態を越えたそいつを、幽鬼タケシ・ハザマなる魔物を、こう名付けた。

 -----"特殊進化個体"、と」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面白かったら、ポイント・感想など、よろしくお願いします!!
その行為が、私の創作の励みになります!!

活動報告に今作の作成秘話を書きました
よろしければ、ご覧ください

今作についての活動報告

サイドストーリー、外伝を制作しました。第2章も始めましたので、こちらもどうぞ
俺の着ぐるみが超有能である
― 新着の感想 ―
幽鬼はタケシだけなのかな? レッドキャップや特殊個体な幽鬼タケシならアイテムボックス君の首を液体にジャブジャブと…
[気になる点] 雪ん子のことただの道具としてしか見てない感じがちょっと自分には合わない
[気になる点] 霜焼けになってもいいからゆきんこ頭を撫でてあげて。 アレな主人公だけどそれくらいの甲斐性はあるでしょ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ