魔術の授業水
「こ……ここは……」
「ここは私の実家の近くのヴェルメ湖だよぉ」
俺は目の前に広がる湖に目を奪われた。
先程まで確かにお嬢様の部屋にいた筈だ。
それなのに、何度目を擦っても目の前には日差しを浴びて輝く湖しか映らない。
気候も、先程まで王都の暑い気温だったのに、今は少し涼しい。
湖の奥には山の連なりが見える。
一際高く見える山は、青の木が群生しているのが、青い山だった。
「……もしかして、ルシェメル領?」
「正解。知ってたのぉ?」
「いえ、来るのは初めてです。地理で習ったので」
俺は、イヴァリス先生から借りた北方の領地に、青い木が群生するアセンシオ山があると書かれていたのを思い出した。
北方のルシェメル領はグラングリフ最北の地で、ナナクーンと隣り合っている。
「というか……今のは転移?!」
俺は、自分の身に起こった現象について思い起こす。
転移直前に、少し目の前が歪んだ様な気がした。
炎の上が、その炎のもたらす熱によって密度が変わって起こる揺らめきに似ている。
要は陽炎だ。陽炎に似ていた。
それがなんだろうと思った次の瞬間には、少しの浮遊感を感じてここにいた。
俺は、口調の乱れを慌てて詫び、改めて辺りを見回した。
お嬢様は不安そうに俺のシャツの裾を握ってキョロキョロとしている。
俺はお嬢様の口角を上げて目線を合わせた。
お嬢様はホッとした様に、前を向く。
「へー。ほー。ふーん」
「どうしたんですか?」
「……ううん。なんでもないのぉ。そう。私の転移魔法。さてさてじゃあカーミラ様ぁ」
エメラダ先生は俺達を見て含みの有る笑みを見せたが、すぐにお嬢様に向き合うと自分の方に手招きした。
お嬢様は一瞬俺を見て先生の方へ歩いていく。
しかし、転移魔法はそんな簡単に片付けてしまえる程簡単な魔術ではないとジュダスさんが……。
お嬢様もポカンとしているではないか。
しかしエメラダ先生は、俺達の様子など気にならない様で、お嬢様に問いかけた。
「早速確認だけどぉ、カーミラ様は炎、風、水、地の四属性の魔力発現でいいんだよねぇ?」
「……え、ええ。そうですわ」
「じゃあまずは水の魔術訓練を始めてみよっかぁ。自分の魔力は大体イメージ出来たぁ?」
「はい。先程の魔力の視覚化はとてもイメージしやすかったですわ」
エメラダ先生はうんうんと嬉しそうに頷くと、自分の杖を手に呼ぶ。
「ちなみに、魔術を行使するのに呪文はいらないよん。心の中で思い描いて、それに魔力を乗せる。ハッキリイメージ出来ている程精度も上がるからぁ、美術の本とか読むのもいいかもねん」
それならお嬢様にピッタリではないか。
最近では書斎の本もほとんど読んでしまった筈だ。
それにしても、呪文はいらないのか。
確かに、決まった呪文を暗記して魔術を行使するっていうのは、なんだか違う気がするな。
「でも、さっき先生は何か唱えていらっしゃった様ですが?」
俺もエメラダ先生を見て頷く。
確かに転移の時に何か呟いていた筈だ。
「うんうん。よく気付きましたねぇ。あれもイメージの一種でねん。行使する魔術に合った属性や神々を讃える心、そして自分の願いを言霊に乗せてぇ、イメージの上乗せをしてるんだよぉ」
凄くしっくりきた。
確かに呪文唱えるとテンションが上がりそうだ。
でも、それなら言葉選びにかなりセンスを要求されそうだぞ。
俺は自分が使う訳でも無いのに、あれこれ考えてしまっている。
「と言う事は、『冷酷なる水の魔女の力により、我が手にその力を顕現せよ……いでよ!大いなる水の渦よ!』とかでもよろしいの?!」
え…てどうしてそんな厨二臭い……。
そういえば、先週魔女の冒険譚読んでいた様な……。
それにしてもダサ過ぎる……。
ザァァサァァァァ
どこからか水の流れる音がする。
何処から……と思う間もなく何も無い空間から水が押し寄せてきた。
「きゃああああぁぁ!」
「うわぁぁぁぁあ」
悲鳴をあげて動けないお嬢様の前に、移動しようと動揺した頭で考える。
しかし、一歩先にエメラダ先生が俺達の前に立った。
すぐに杖を一振りして水の渦を打ち消した。
……凄い……。
一振りで……。
それにしても、今のはお嬢様が?
いくらなんでも昨日今日魔力発現したにしては、強過ぎる様だが……。
これが計測値を振り切ったというレベルの魔力……。
「流石に凄いねぇ……今までは制御具つけてたんだっけぇ?」
「は、はい」
「うーん。制御具はつけ慣れちゃうと魔力が伸びなくなっちゃうんだよねぇ……だから自分で魔術の威力をもっと調節出来る様になるのが先かなぁ。後呪文だけど、あれでいいと……」
「ちょっ!っと待って下さい」
俺は慌てて二人の前に飛び出し、手を突き出して待ったをかけた。
「どうしたのぉ?リオンちゃん」
「お嬢様…今の呪文、ダサ過ぎました。考え直して下さい」
「ダ!ダサい?!」
お嬢様は鈍器で殴られた様な衝撃をこの時受けたと、後々言っていた。
俺は茶化している訳ではないというのを分かって貰う為、お嬢様の肩を正面からガッチリと掴んで、近距離から真剣に瞳を見つめた。
「ちょ、リ、リオン」
「いいですか、お嬢様。今の台詞はとてもダサかったです。まるでちょっと悪に憧れた子供が、悪役に憧れてわざと悪ぶってる様な台詞でした」
俺の言葉に、お嬢様は真っ赤になって金魚の様に口をぱくぱくさせた。
俺の言葉を聞いたエメラダ先生は、無造作に伸び散らかした髪かき上げると、よく分からないと首を傾げた。
「魔術が発現出来ればどんな呪文でも構わないと思うけどなぁ」
「じゃあ先生は『いでよ闇より出し深淵より深い炎よ、我が手に宿て力となれ!ダークネスインフェルノ!』とかって言えます?」
「リオン!それはとてもカッコいいですわ!是非後でメモして……」
「流石にそれはダサいねぇ。言いたく無いわぁ」
「そうでしょう?」
「………………」
エメラダ先生はじっとお嬢様を可哀想な物を見る瞳で見つめた。
お嬢様は絶句している。
俺はうんうんと頷く。納得して貰えた様で本当に良かった。
「しかもお嬢様は力が強いから、呪文関係なく魔術を行使していますが、普通こんなすぐ使えるものなのですか?」
「いや、とんでもないよぉ。大体カップ一杯の水が顕現する位かなぁ?力の強い子だとぉ」
……おいおいおい。
まさかのお嬢様が転生者って事は……。
俺はキョトンと首を傾げているお嬢様を見つめる。
……ないな……。
と言う事は、本当に規格外の力の強さという事なのだろうか?
そんな設定、ゲームにあっただろうか……?
「じゃあ、リオンならどうするというのです!」
俺はお嬢様にポカポカと肩を叩かれて覚醒した。
まだ授業の途中だ。
自分からどうしても出たいとお願いした貴重な授業。
時間を無駄には出来ない。
俺は、ワクワクと俺を見ているエメラダ先生には気付かないフリをしてお嬢様に向き直った。
ここはとても大事な所だ。
「いいですか?お嬢様。まずそんな長い呪文、いざと言う時になんの役にも立たないではありませんか」
「そ、それは……そうだけど……」
「そこは、魔術師は後方で安全に守られながら遠距離大魔法打つからねん。呪文もなるべく練って威力を高めるんだよぉ」
ちっ
俺は心の中で援護射撃したエメラダ先生に舌打ちをする。
お嬢様はエメラダ先生の言葉を聞いて、満面喜色だ。
「しかも、『冷酷なる水の魔女の力』って、そもそも水の神はグレイシーヌですよ?役割は守りです。もっと力を練るなら反対のイメージはマイナスだと思いますが?」
俺の言葉にお嬢様はしゅんと、エメラダ先生はふむふむとニヤニヤを半分ずつ器用に現しながら続きを求めた。
「もっとイメージするんです。水の女神グレイシーヌが、この地を癒す為その手から水を生み出す所を。呪文は短ければ短い程いいと思います。短い事に慣れれば、いざ時間をかけて術を練りたい時に威力も込められるではありませんか。水よ。と呼びかけるだけで十分です」
「リオンちゃんとっても魔術に詳しいのねぇ。確かに基本で初歩の魔術を使う時に長い詠唱は使ってないわぁ。少し難しいかもしれないけどぉ、早速やってみましょぉかぁ」
「は、はい」
お嬢様は瞳を閉じると、自然体になる。
両手の力を抜いた。
右の手の平を天に向けると、自分の胸の前に差し出す。
「……水よ……」
先程とは比べ物にならない程早く手の平の中には水の波紋が広がる。
手の平の上に30センチ程の湖が広がり、水面は静かに波紋を起こしていた。
……凄く神秘的で綺麗だ。
「…凄いわねぇ…。普通初歩の魔術と言えど、才能のある子でもぉコントロールには手こずるんだけどぉ…。リオンちゃんのさっきの発想も面白いしぃ、何か研究してみたらぁ?魔術と呪文の関係性とか、他にも何だか色々考えてそうだし?あ、カーミラ様ぁ、そっと力を空気に溶かすイメージで霧散させて見てぇ」
先生の言葉に従い、お嬢様は難なく手の平の小さな湖を消した。
俺はそれを見ながら、先生の言葉に返答する。
「いや、何言ってるんですか。素人ですよ?」
「魔術連盟に認められれば色々と好きな事が出来る様になるよぉ?」
好きな事っていうのは特に思いつかないけど。
…………。
俺は一瞬思案する。
それは、従者になる為の条件だ。
一つはサイネルさんに認められる事。
もう一つは、商会以外で功績を残す事だ……。
「その魔術連盟なの認められれば、シュトラーダ公爵家にとっての功績に繋がりますか?」
俺の質問にピンときたのか、エメラダ先生はニンマリ笑うと大きく頷いた。
「勿論だよぉ。優秀な魔術師は国の宝だからねん。それは領でも変わらない。自分の領地から優秀な魔術師が王都で認められればぁ、それは領地の功績になるのぉ。優秀な人材を育めた、力ある領地だとねぇ」
俺は頭を下げて二つ返事でお願いした。
これが領地の功績になるなら、俺にも出来る事があるかもしれない。
少し希望が見えてきた。
「やります。分からない事も多いとは思いますが、ご教授お願いします」
「うんうん。子供は素直が一番だねん」
「またリオンは何か悪巧みですの?」
悪巧みとは人聞きの悪い。
しかし、仲間はずれに感じている様で、お嬢様は寂しそうに口を尖らせた。
「大丈夫です!お嬢様で色々実験しますからね!協力お願いします!」
「今実験と言いませんでして?」
お嬢様は腕をブンブンと振りながら更に口を尖らせた。
俺はすかさず口元をグニグニする。
俺達のやりとりをニコニコ見ていたエメラダ先生は、パチパチと手を叩くと俺達の視線を集める。
「リオンちゃんの助言も面白いし、カーミラ様は今後の成長が楽しみだし、ほんといいコンビだねぇ。貴方達ぃ」
先生の言葉に俺はお嬢様と目を合わせて微笑む。
さて、論文を書くとなると色々聞きたい事がある。
いや、論文を書かなくても聞きたい事は山程あるのだが。
「エメラダ先生。沢山質問があるんですが、まずは杖の事を教えて下さい。それはなんですか?」
「とても綺麗ですわね」
ああ、と言葉を溢して先生は杖を手に呼んだ。
呼んだと言っても、名前を呼んだりした訳では無い。
ただ手を少し振っただけだ。
「これは魔力を補助しているのぉ。魔力を含む神の加護の強い土地から分けて貰った木に、同じ様に神の加護の強い土地から取れた水晶で作ってるんだぁ」
どうやら自作らしい。
魔具を作るといっていたし、腕は確かな様だ。
「お嬢様の杖、是非俺に作らせて下さい!是非取り入れたい仕組みがあるんです!」
「仕組み?」
「いや、仕掛け?」
「わたくしの杖ですか?」
お嬢様は話しについてきていないが、俺は溢れ出る妄想が止まらない。
杖を作るなら是非取り入れたいギミックだ。
「どんな仕掛けか教えてご覧よぉ」
面白そうに目を細めたエメラダ先生に、俺は内緒話の様に耳元に手を当てるとギミックの説明をする。
少し屈んでもらわないと届かないが、髪からいい香りがした。
お嬢様は面白くなさそうに仁王立ちしている。
「ふん。ふんふん。へー……え!ん?更に?!」
エメラダ先生は奇声を発しながら斜め上方向を見て頷く。
「リオンちゃん。それ面白過ぎるでしょぉ。私に作らせてよぉ。どんな素材にするのぉ?」
「出来ればデザインも凝りたいんですよね。そうですね…先端は金属の飾りをつけたいですね」
「金属ぅ?じゃエルファーランのが作れそうねぇ」
「エルさんの事も知ってるんですか?!」
「えぇ?!なんでリオンちゃんはエルの事知ってるのぉ?!」
「……もう!わたくしも混ぜて下さいませ!」
耐えきれなくなったお嬢様が吠えた。
俺達は謝罪して輪には混ぜるが、色々とお嬢様の分からない事も多い。
「それで、なぜエルさんと?お嬢様。エルさんはリンスを作っている工房の工房長さんですよ」
「あーなるほどぉ。そういえばなんか新しい商売で懐が潤ったって言ってたわぁ」
「まぁ!では先生はどうしてその工房長さんと?」
俺とお嬢様の視線を受けて、身体の大きな先生は、バインと胸を叩くと、ニッカリ笑って答えた。
「だって、エルと私とジュダスは同期生だものぉ」
「まぁ!そうだったんですの?!」
なるほど。確かにジュダスさんとエルさんは同期と言っていた。
でも見た目若くてもエメラダ先生まで同期だったとは。
「同期っておいくつなんですの?」
「私とエルは28だよぉ。ジュダスだけ飛び級してるから26だねん」
衝撃の事実。
どのポイントに驚いたかは皆様の想像にお任せしよう。
しかし、アルルゥさんの時も驚いたけど、この世界は童顔が多い気がする。
エルさんも28という事になるのだから、見た目では年齢が判断出来ないな。
しかしなる程。それでジュダスさんもエルさんも知っていたのか。
世界……いや、異世界も狭い物だ。
「エルと作るなら作ってる所見たいから呼んでねぇ」
「分かりました。日程が決まったらお知らせしますね」
「わーい」
「お嬢様、お待たせ致しました」
「わたくしの杖ですのに、わたくしは放置ですの?!」
「お、お嬢様。是非杖は俺からプレゼントさせて下さい。少しでも素晴らしい杖を持って頂きたいではありませんか!色々実験…いえ、試行錯誤しなくては」
「今また実験と聞こえた様な気がしましたわ」
俺はニッコリ笑ってお嬢様を見つめた。
困った時は笑顔で黙るのが一番効果的だ。
お嬢様は諦めた様にため息を吐いた。
「リオンの事ですから、変な事はしないでしょうが…凄いのが出来上がりそうで怖いですわ」
「凄いのが出来る様頑張りますね」
「そういう意味で言ったのではないのですけど……」
「さて!授業に戻ろうかねぇ」
先生の言葉に俺達は姿勢を正した。
うんうん。と微笑んだ先生は、再び杖を取り出して、お嬢様に魔術の基本と効力など説明していた。
お嬢様位、魔力が無尽蔵になると魔力が枯渇するまでに時間もかかるらしい。
基本の四属性の発現と、発現したものを自分の意思で消す。
発現させて魔術を維持するなどを学んでいた。
俺はお嬢様が実技の間は、エメラダ先生の説明を受けながら座学だ。
余り苦戦せず授業をこなしてきたお嬢様も、二属性を同時に発現させるのは手こずっている様だ。
「水と風や、炎と地は相性がいいからぁ、水と炎よりはまだ操りやすいかなぁ。それでも慣れないとなかなか出来ないからぁ、これからしっかりやっていこうねぇ」
なるほど。四属性の相性はゲームならば誰でも頭に入っている情報だ。
俺もすんなり受け入れた。
お嬢様は20分程かけて、水と風を右手と左手に発現させた。
「で……出来ましたわ……!」
「うんうん!ほんとに筋がいいねぇ!教え甲斐があるよぉ。どう?少し疲れたぁ?」
「はい…でもまだいけますわ!」
「普通ならとっくに限界が来てる筈だけどねぇ……今日限界を知るのは無理かなぁ?」
エメラダ先生は腕を組んで首を傾げた。
あれだけ一時間近く魔術を使いっぱなしなのに、体力的な疲れだけの様だ。
「じゃあ今日はここまでだねん。さぁ帰ろうねぇ」
先生が来た時と同じ様に俺達に近付く。
そして、杖を出すと何か呟いている。
俺の目の前が陽炎で歪む。
お嬢様は俺の手を取るとぎゅっと目を閉じた。
少しの浮遊感の後、目の前は見慣れた勉強部屋だった。
……本当に凄い……。
先生は部屋につくと、杖を閉まってこちらを向いた。
「うん。お疲れ様ぁ。カーミラ様は疲れてない様に感じても身体は疲れてるからねぇ。しっかり休むんだよぉ?」
「はい。分かりましたわ」
「うんうん。じゃあリオンちゃんはエルの事、よろしくねぇ。次の授業は明後日だし、そんなに焦らなくてもいいからねぇ」
「お気遣いありがとうございます」
あれ?なんだろう?なんか違和感がある。
先生を見て違和感を感じたが、何がと聞かれると答えられない。
うーん。気のせいだろうか?
「じゃあ、次の授業を楽しみにしてるねぇ。ちょっとお行儀が悪いけど、転移で帰っちゃうねん。カーミラ様、リオンちゃん。またねん」
「はい。先生またよろしくお願いしますわ」
「お気をつけて?でよいのでしょうか?先生、今日はありがとうございました」
俺達と挨拶を交わすと、先生の周りに歪みが出来る。
そして一瞬の後、先生の大きな身体は跡形もなく消え去っていた。
「変わった先生でしたけど、自由に転移を繰り返すなんて…凄い方ですね……」
俺は呆気に取られて、先生の消えた虚空を見つめる。
お嬢様もんーと伸びをして、コクコクと何度も頷いた。
「こればかりは、お父様というよりジュダスに感謝ですわね」
「あはは……」
今度ジュダスさんに会ったら、エメラダ先生の事を聞いてみよう。
……答えてくれる気は全くしないが……。
こうして、俺達は初めての魔術授業を終えたのだった。
論文か……。
やる事は多いが、少し希望が見えてきた。
俺は自分の手を見ながら、静かに握りしめた。
J
ちょっとちょっとちょっとぉ?!
絶対私の紹介遅らせたでしょお?!
いつ紹介されるのかずっと待ってたのよぉ?!
なんでこんな後回しなのよぉ!
ちょっ!待ちなさいよ!あーん!




