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嫌われ悪役令嬢を愛され令嬢にする方法  作者: 今宮彼方
第1章幼少期編
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第一の攻略対象者


「クリストファー様……本当に行かれるのですか?」



 私は、どうしても我慢ならず主人に文句を零してしまった。



「仕方ないだろう……父上のご命令だ」

「しかし……あんな我儘で性格の悪い令嬢の所へなど……」

「それ以上言ってはいけないよ、マシュピトー。さあ、もう時間だ」



 全くクリストファー様はお優しい……。

 いくら父君である陛下のご命令とはいえ、あんな令嬢のご機嫌を取りに行くなど、お断りしてしまえば良いのに……。



 私は、馬車に乗り移り行く景色を眺める我が主人、クリストファー第一王子に目を向ける。

 仕える私が言うのも何だが、クリストファー様は本当に素晴らしいお方だ。

 この方に仕えられた事こそ、私の人生の運の全てを使ったと言っても過言では無い。



 その姿は正に絵画の様に美しく、眉目秀麗。

 姿を見た令嬢は頬を赤らめ、ため息を零し、少しでも彼の視界に入ろうと争い合う。

 性格は温厚で驕る事無く公平無私。

 真面目で賢く、努力家であらせられる。

 座学だけでなく武でも頭角を現し、今では同じ年頃の騎士も相手にならない。

 正にこの国の次期国王と名高く、それは揺るがない。


 ……だと言うのに……。

 私は主人の前だと言うのに、またため息を零してしまう。

 クリストファー様は、そんな私を見て困った様に微笑んだ。



「決まったものを文句を言っても仕方ないだろう」



 そう言ってこちらに鋭い目を向けたお前の方こそ、嫌な顔を隠しもせずブスっとしているではないか。

 私は共についてくる事になった、護衛のイースレイを睨み返した。


 これだからこの男と共に来るのは嫌だったのです。

 いつも正論しか言わず、余計な口も聞かない。

 融通の効かない堅物というのが、私の印象です。

 その歳で、よくもそこまで岩の様になれたものです。

 私はこれ以上話しても無駄だと、クリストファー様の様に馬車の窓に目を向ける。



 今私達が向かっているのは、クリストファー様の婚約者候補でもある、シュトラーダ公爵家のご息女、カーミラ様のお屋敷だ。

 一週間程前だったでしょうか。

 クリストファー様の父君のアーノルド国王陛下が、シュトラーダ公爵の令嬢とのお茶会を進めてきたのです。


 確かにシュトラーダ公爵家の力は大きい。

 この国の宰相であらせられるライナス様は、陛下の信頼も厚く素晴らしく切れます。

 彼が打ち立てた政策や、国法はどれもとても有名です。


 ライナスさまの奥様、アメリア様もそれに並びとても優秀です。

 我が主人の家庭教師をなさり、社交に出れば周りに人だかりができる。

 美しさは歳を取っても衰える事無く、まるで凛と咲く薔薇の様だとそれは有名です。

 陛下の奥方、ミセラティー王妃の信頼も厚く、夫婦揃って、国王夫妻と仲睦まじい。


 ……にも関わらず……。

 何度目か分からないため息を飲み込み、シュトラーダ公爵のご息女のカーミラ様を思い起こす。


 

 シュトラーダ公爵家の一人娘と言えば、我儘が服を着た様に横柄で、その目つきの鋭さに並んで性格は横暴。

 気に入らない人間を、あれこれ難癖をつけてクビにしている事は有名ではございませんか。



 その醜悪な性格だけでなく、容姿はそれに輪がかかり……。

 何を食べたらそうも醜くなれるのか。

 太った身体に、ニキビだらけの顔……。

 醜い身体を隠す様にゴテゴテと飾り立てられたドレスは、上等なだけで品性のカケラも無い。



 そんなカーミラ様が、我が主人の隣に立つ可能性があるなど……。

 考えただけでもおぞましい……。

 こんな事なら、マルガレット公爵家のレベッカ様の方が、まだ遥かにマシと言うものです。

 クリストファー様も、口には出さないが、シュトラーダ公爵家との縁談など悪夢でしか無い事でしょう。




 重い沈黙が馬車を支配し、ため息さえ出なくなると、馬車はその歩みを落とした。

 どうやら着いてしまった様です。

 

 私が重い腰を上げて馬車の扉を開けると、イースレイは先に馬車を飛び降ります。

 用意された踏み台を確かめ、クリストファー様の荷物を持ち私も後を追います。

 荷物は手土産の焼き菓子です。

 花にしようか悩んでいたが、豚には菓子の方がいいだろう。と、もう少しオブラートに包んで申し上げたのです。





「シュトラーダ公爵家にようこそおいで下さいました。クリストファー第一王子殿下。私は執事頭のワトソンと申します」



 出迎えてくれたのは、シュトラーダ公爵家の執事頭の初老の男性を筆頭に使用人達数十名が並んでいます。

 流石公爵家の使用人。

 所作は品があり、にこやかな表情は警戒心を溶かします。



「出迎え感謝する。クリストファー•ルドル•グラングリフだ」



 クリストファー様が挨拶を返すと、出迎えていたメイド達が色めきだちました。

 それはそうでしょう。幼いとはいえクリストファー様の美しさは思わず息を呑むほどですから。

 


「本日は、天候も宜しいので、西の庭園の木陰に席を用意致しました。屋敷の庭師が丹精に育てた薔薇も見頃です」

「それは楽しみだ。マシュー、カーミラ嬢への手土産を」



 私はそっと焼き菓子の包みを執事頭に手渡します。



「お心遣いありがとう存じます。ではご案内致しましょう。こちらへどうぞ」



 流れる様な所作のまま、ワトソンさんはクリストファー様を西の庭園へと案内致します。

 


「カーミラお嬢様はクリストファー様がいらっしゃるのを、とても楽しみにしておいです。本日もお嬢様自らおもてなしする準備をしておられます」



 …それはそうだろう。

 クリストファー様にお会いできるのを喜ばない令嬢など聞いた事がございません。

 さぞやあの我儘娘も喜んでいる事でしょう。

 また似合もしない、金だけはかかったドレスでも着て出迎えてくる筈です。

 そう考えると、少し楽しみにもなってきました。

 そう思う事でもしないと、こうして付き従っているのも億劫でため息が漏れてしまいます。



 私は、貼り付けた仮面の様な笑顔でクリストファー様の後ろをついて歩きました。

 隣のイースレイは何を考えているのか仏頂面のまま。

 少しは私を見習って、作り笑いの一つでも貼り付けてみれば良いのです。



 そう思いながら少し歩くと、噂の西の庭園が見えてきた。

 ……なるほど。これは素晴らしいですね。

 咲き誇る花々はよく見る物から、見た事が無い物など、種類も豊富。

 庭師の腕が良いのでしょう。

 一輪一輪とても状態が良いです。

 クリストファー様も口元を綻ばせ、通り過ぎる花々を見つめています。

 


 庭の中心には噴水と、それを囲む様に素晴らしい薔薇が咲き乱れています。

 噴水の奥には芝生が敷き詰められ、一本の大きな木の下ではテーブルの用意がされています。

 その周りを、侍女かメイドと見られる女性達が色々と準備しているのが目に入りました。



「さあ、クリストファー殿下、こちらです」

「ありがとう」

「カーミラお嬢様、クリストファー第一王子殿下がお越しになりました」





 この時の衝撃を。

 私は生涯忘れないでしょう。





 ワトソンさんの言葉に少女は、長く美しい艶のある髪を耳にかけると、ゆっくり振り返りました。



「まあ。ようこそおいで下さいました。クリストファー殿下。こうしてお話しするのは初めてですわね。カーミラ•メルド•シュトラーダと申します」

バーバラ


好きな事  そりゃー料理を作る事だね

好きな食べ物 最近は鳥ハムだね!これをつまみに一杯やるのさ

嫌いな食べ物 今まであたしが作ってた油ギトギトの料理だね。もう歳かね…

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