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嫌われ悪役令嬢を愛され令嬢にする方法  作者: 今宮彼方
第1章幼少期編
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プロローグ

最近右を見ても左を見ても異世界転生物ばかり。

 こんなに世の人は皆異世界に転生したかったのか?

 そう思わざるを得ない程、世の中の作品は異世界転生物で溢れている。



 といっても、世には流行り廃りというものがある。



 今は異世界転生が流行りに流行っているが、一昔前はロボット物がそれはもう大流行りであたった。

 かく言う自分も、子供の頃はロボットのオモチャを買ってもらい、いつかパイロットになって敵を倒して無双するんだなんて夢まで抱いていたくらいである。



 話は逸れたが、異世界転生物が大流行りなのには、そりゃあ理由があるはずだ。


 流行る理由は一つではないだろうが、やはりこの世界の常識が通じない異世界で、在り来りな今の世界の料理や、少し進んだ文明の知恵など、そこそこ深くまで掘り下げなくても持っている一般的な知恵を披露することで得られるチート感か。


 異世界転生先が中世ヨーロッパ風味なのが多いのもこの辺が理由ではなかろうか。

 現実、今の世界でほとんどの人々が作れそうな料理も、文明の進んでいない設定の異世界では爆発的に人気を集めてしまう。



 そして第二に、やはり異世界転生の醍醐味は魔法や冒険者といったところか。


 RPGゲームやソーシャルゲームは、この世界ではかなり浸透している。

 なんせ子供、成人した男女のみならず、いいオッサンオバサン、はたまたおじいちゃんおばあちゃんなんかも、スマホゲームにハマり課金という名のお布施を行っている。

 スマホゲームは正に現代社会における娯楽、そして一大事業の一つとして確立されている。



 皆魔法を使いたいのである。

 そしてダンジョンや迷宮、ギルドなどに入りモンスターを狩って、異世界転生で得たチートスキルで無双したいのだ。


 確かに、この現代社会。

 働きすぎの元日本国民としても、好きな時に寝て起きて、気の合うヤツらとパーティを組んで、狩りに行って生計を立てる、自由気ままな生活っていうのはとても魅力的だ。



 まぁ、何が言いたいかというと、そんな大人気の異世界転生だが、自分が転生したいかというと、そうでもなかった。


 物語として見ている分には、どの作品も楽しいのだが、 それが自分の身に降りかかったとしてどうなるか。


 これが若かりし20歳そこそこくらいなら、チートスキルで成り上がってみたい!や、異世界転生最高!みたいな流れも盛り上がれたかもしれないが。


実家が道場を営んでおり、幼い頃から修行と称して鍛えられたが、才能は余りなかった。




 ハッキリとした年齢はぼかすが、この世界で順風満帆とまではいかないが、ごくごく普通の暮らしを、なんてことないこの幸せな普通を。

 それはそれは感謝して生きてきた。




 まさかこの自分にそんな異世界転生が起こるなんて思わないだろう。

 いや、思わなかった。


 とりあえず落ち着こう。

 落ち着くのは得意だ。


 なんせ、養子に引き取られ、知らない所、知らない人に囲まれ過ごした幼少期。

受験に就職活動、両親の葬式、残業に口うるさい上司の付き合い、姪の面倒、武道の大会などなど数々の出来事を乗り越えてきたのである。

 精神力や経験値は高い方だろう。



 まず落ち着かなくては話は始まらない。

 パニックを起こした頭では、冷静な判断も下せない。

 深呼吸をして冷静な思考を確保する。

 うん。大丈夫だ。



 まず五体満足。基本だが大事な事だ。

 体に痛みや痺れなどはない。問題なさそうだ。



 手を見る限り随分若そうだ。7.8歳くらいか?

 手を開いたり閉じたりしていると、足元が視界に映った。


 靴を履いていた。

 安物の使い古された靴だ。

 そこでここが外ではない事に気付く。

 赤い絨毯の上に立っていた。

 右を向けば光の差し込む窓に薄らと自分の姿が映っていた。



 そうだ。俺はリオン。

 リオン・トーレス。

 歳は8歳。

 ここシュトラーダ公爵家に仕える執事見習いが、今の俺だ。

 ここシュトラーダ公爵家の一人娘カーミラ・メルド・シュトラーダ様の一使用人である。

 俺の母がカーミラお嬢様の乳母なので、母子揃ってここ、公爵家に仕えていた。



 そして困ったことに、この異世界転生。

 なんと女性に大人気だった乙女ゲームの世界、【プリンセス・プリンス 〜あなただけのプリンス〜】略してプリプリの世界なのである。


魔法有り、冒険有り、ダンジョン有り、恋愛有り、育成有りと、乙女ゲーにRPG要素もついた続編が出るほどの結構人気なゲームだ。




 年齢秘密のおっさんが、なぜ乙女ゲームなんて知っているかというのが、そりゃあもう気になるであろう。

 いや、気にならなくても俺の名誉の為お話しよう。

 俺には姪がいた。

血の繋がらない二人いるうちの下の姉の娘だ。

まぁ血が繋がらないという所にひっかかる人もいるかとは思うが、大丈夫。

引き取って頂いた両親はとても良い人達だったので心配しないで欲しい。

育てる人の人格が良いと子供も良くなるのか、二人の姉とはとても仲が良かった。

 そして、その姪が大好きだったゲームがこのゲームという訳である。




 乙女ゲームの中でも人気があって、新作が出る度に強請られたっけ。

 選んだ選択肢によってエンディングが異なる為、うちにゲームしにきた姪に、よく男心を聞かれたものだ。

 よくあーでもないこーでもないと、下らない話をしながらゲームを見ていたっけ。

 と、感傷に浸る。




 ああ、俺は死んだのか。




 なぜ死んだかイマイチ覚えていないが、覚えていないのは、悪いことではないような気がする。

 誰だって死ぬ瞬間は怖いだろう。

 それを覚えているのは精神的にも良くない気がする。

 お世話になった家族を残して死んでしまった事だけが心残りだ…。




 感傷的になるのはここまでだ。

なぜなら俺はもうこうして転生している訳で、時間が巻きもどる訳でもないだろう。


…で。

俺はそのプリプリの世界の攻略対象者プリンス。

 ではなく、ただのモブとして第2の生を受けたわけである。


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