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嫌われ悪役令嬢を愛され令嬢にする方法  作者: 今宮彼方
第1章幼少期編
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商品開発


 異世界あるあるだが…。

何か作ろうと思ってもも無いものが多くて困るな…。



 俺は寝起きの頭で、恋しい元の世界を思い出す。

 あんまり好きではなかったが、食べられないと分かると、ジャンクフードが恋しくなる。


 異世界転生した主人公は、スキルや魔法が使えることが多いから、ゼロからスキルで精製したり、妖精さんが運んでくれたり、敵を倒すとゲットしたり……。

 何か俺に宿してくれたスキルはなかったのか……。



 万が一……いや、億が一にも失敗は出来ない。

 そう。失敗というのは、破滅フラグを回避しきれなかった場合だ。

 そんなつもりはサラサラないが、万が一お嬢様が追放されてしまった場合にも、お嬢様の為しっかり備えておかなければ。

 乙女ゲーム転生のテンプレの流れだと、断罪されても大丈夫な様に、大体その後一人でも生き抜ける様、悪役令嬢が手筈を整える流れが多かった筈。


 ここでいう、転生者は悪役令嬢であるカーミラお嬢様ではなく、俺な訳だ。

 ということは、破滅フラグ回避の為に奔走する俺が、億が一フラグ回避出来なかった場合に備えて、何か手を打たないといけないってことだな。



 転生者のテンプレだと、貴族相手に売れる物を作って、それを商業ギルドに売るか、自分が商店を持って売り出すか。

 断罪されようとされなかろうと、生きていく上でお金はとても重要だ。

 あればあるだけ、あるに越したことはない。



 男の俺が乙女ゲーム転生ってのは、ハードル高い。

 この世界にまだ無い物。

 それから、貴族相手に売れそうな商品。

 そして商品の作り方を知っている……か。

 更に、それを作る為の、原材料の確保……。

 原材料が見つかるかどうか、この世界にあるのか。

 それも何にも知らない。

 ……転生者って……皆凄いな……。

 まだ、ゲームのポーションとかの方が、なんとか精製にこじつけそうだ。


 売る商品は、消耗品だと尚良い。


 俺が作れそうな物だと……シャンプー、リンス、椿油。

 それから、練り香水あたりか。

 この辺が簡単に作れそうだ。

 色んな香りの種類の精油も作れると思う。


 どれも精油で香り付けして、数種類売り出せば、自分の好みに合ったものを手に取ってもらえるはずだ。


 とりあえず、試作品を作ってみる事から始てみようか。

 材料が分かっていて、すぐ手に入る…物…か。

 そうと決まれば、オリーブオイルを使ったシャンプーリンスから作成してみよう。

 前世で少し前に話題になっていた、塩シャンプーというやつだ。

 白髪や匂いに効果的らしい。


 まずは、バーバラさんにオリーブオイルの瓶を借りに行く。

 あと塩も一袋借りた。

 それから、ワトソンさんに前世でいう、洗面器位の大きさの木の器を借りた。

 よし。準備は整った。


 俺はパントリーでお湯を沸かして、自室に戻る。

 まずは、木の器に沸かしたお湯に水を混ぜてぬるま湯にする。

 そこにオリーブオイルを回し入れる。

 オリーブオイルは、大さじ1位だ。


 もっと丁寧にやるなら、オリーブオイルを髪や頭皮に塗って、蒸したタオルなんかで暫く待つと良いらしい。

 が、髪を洗うにしても、作って売るにも、手順は簡単な方が良いだろう。


 オリーブオイルを混ぜたぬるま湯に、塩も大さじ1程入れる。

 かき混ぜて、ブラッシングした髪を付けて優しくこする。

 泡立たないので泡が懐かしいが、これはこれで、とても気持ちがいい。

 洗い終わると、お湯はかなり濁っていた。

 ちょっとショックだ。

 洗い上がりのツヤはいい感じだ。

 女性用に、ハーブを入れてもいいかもしれない。

 早速ルークさんの所に話を聞きに行こう。


 俺は髪を軽く拭いて、西の庭へと向かう。

 庭に着くと、もうルークさんが作業していた。



「……というわけで、ハーブ系の、香りの良い物が欲しいんですが、何か有りませんか?」



 ルークさんに、シャンプーリンスの説明をして、香りのあるハーブがないか相談する。

 更に一年中は無理でも、長く咲いてる花なら、尚嬉しい。

 商品にするのに、現物がなくて作れないと困る。



「…うーん。それなら、ローズマリーはどうだろう」

「いいですね!」



 一年中収穫可能。

 香りも強く、清々しい匂いもシャンプーリンス向きだ。

 料理にも使えるし、いい所ずくめ。



「あとは……ミント当たりが妥当か?」

「二つとも、少し頂いてもいいですか?!」

「構わないよ」



 ルークさんが控えめな笑顔で頷いた。


 早速、貰ったローズマリーとミントを、部屋に持ち帰る。

 すぐお湯に溶かせるように、空き瓶にローズマリーとオリーブオイル、塩を入れて混ぜた。

 ミントバージョンでも作る。

 レモリの皮なんかも良さそうだな。

 忘れないようにメモる。

 後でバーバラさんに聞いてみよう。


 俺は完成したシャンプーリンスの瓶を持って、お嬢様の部屋へと向かう。



「お嬢様、リオンです」



 ノックして声をかける。

 今日はレナが扉を開けてくれた。



「おはよう、レナ」

「お、おはよう、リオ……」



 挨拶を返したレナの目線が、俺の頭で固まる。

 どうしたんだろうか。

 俺は首を傾げつつ中に入る。



「おはよう、リオ……ン……?」



 挨拶を返してくれたお嬢様も、ファリスさんも目が点だ。


 そこで俺は思い当たった。

 そうか、髪の毛か!

 ルークさんの所に行った間に、自然乾燥したんだろう。

 そういえば、いつもよりサラサラと心地よい気がする。



「どうなってるの……?……リオンの髪……黒い髪が、ツヤツヤしてるみたい……」



 お嬢様が、恐る恐るといった感じで、俺の髪に手を伸ばす。



「まあ!触るとサラサラだわ!……でも見た目は艶があって……」



 お嬢様がウットリと俺の髪をすく。



「髪の毛を洗う『シャンプーリンス』という物を作ってきました。是非、お嬢様に試して貰おうかと思いまして」



 俺はさっき作った瓶を、二つお嬢様の前に出す。



「俺は試しで作ったので、香りはないんですが、これはローズマリーとミントを入れてみました。好みの匂いの方を試してみませんか?」



 俺のお誘いに、パァと顔を輝かせて、お嬢様はコクコクと頷く。


 湯浴みに、俺が付き添うことはできないので、ファリスさんとレナに使い方を説明する。

 俺は大さじ1位の量をお湯にといたが、お嬢様の長さだと、大さじ2か3位か。

 長さによって、入れる量を変える事を伝える。

 二人に説明が終わると、お嬢様は迷いに迷ったが、ローズマリーの方を選んだ。


 暫く時間がかかりそうなので、ワトソンさんの所に一旦顔を出す事にして、終わり次第戻る事を伝える。

 三人は、興味深々で浴室に向かって行った。



「……ということで、借りた器、助かりました。ありがとうございます」

「では、今その『シャンプーリンス』とやらを、お嬢様がお試しになっているんですね」



 ワトソンさんも、珍しそうに俺の髪を見つめる。



「あと、ワトソンさんにお願いがあるのですが……」

「何でしょう?」

「旦那様にお話ししたい事……いえ、お願いしたい事がありまして……旦那様の都合のいい日でいいので、時間を作って貰えないかと……」



 この間のように、突然伺うのは失礼だ。

 あの時は、お嬢様の為だったが、今回は完全に自分の私用である。



「旦那様にですか……お忙しい方ですが、お話しは通しておきましょう」

「ありがとうございます!」

「では、リオンはお嬢様の用件が終わったら、いつも通り掃除をお願いします」

「はい。了解しました」



 ワトソンさんとの話を終え、お嬢様の部屋へと戻る。

 ノックをすると、すぐにファリスさんが開けてくれた。

 どうやら俺の方が遅かったらしい。



「リオン!見なさい!この髪!」



 部屋に入ると、お嬢様が興奮して走り寄ってきた。



「お嬢様、落ち着いて下さい」

「これが落ち着いていられますか!見て!あんなにウネウネ跳ねていた髪が、こんなにしっとり!しかも、この艶!!」



 お嬢様も幼くても女の子ですね。

 と、心の中で呟き、改めてお嬢様の洗われた髪を見る。

 ゴージャスな金の髪は、確かにいつもより艶が美しい。

 近づくと、ほんのりとローズマリーの香りがした。



「しかも、洗ってもらうと、凄く気持ち良かったのよ!私、これから毎日『シャンプーリンス』するんだから!」



 お嬢様が、自分の髪をウットリしながら見つめた。



「それから、ファリスとレナにもあげたいの!いいでしょう?!」

「お、お嬢様!」



 二人が慌ててお嬢様を見るが、お嬢様がプックリ頬を膨らませた。



「シャンプーリンスしてる時、羨ましそうに見てたし……いつも助けて貰ってるから……お、お礼よ!お礼!」



 お嬢様が、今度はキッと目を釣りあげる。

 照れているのが、ファリスさんとレナにも分かった様で、顔を合わせてニコニコしている。



「お嬢様のお気持ち……とても嬉しいです……本当に貰ってよろしいんでしょうか?」



 ファリスさんが代表して、お嬢様にオズオズと尋ねる。



「勿論よ!リオン、いいでしょう?」

「はい。構いませんよ。是非二人にも使ってもらって感想を聞きたいです。今は二つしかないですが、レモリの皮でも作ってみようと思ってるんです」

「それも素敵だわ!私レモリの香り、大好きよ!」



 三人の感想を聞いた感じ、いい手応えを感じる。

 このシャンプーリンス売れそうだ。


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