表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ悪役令嬢を愛され令嬢にする方法  作者: 今宮彼方
第1章幼少期編
11/72

豆乳料理


「バーバラさん!来ましたよ」

「いいとこに来たね!ちょうどリオンを呼びにいこうと思ってたんだよ!」



 バーバラさんが、ニコニコと人好きのする笑顔で近付いてくる。

 俺はキッチンに入りながら、クロワさんとシフさんに挨拶する。



「昨日聞いた豆乳?ってのを作ってみたんだが、あれはいいね!お菓子にもオカズにもなる!」



 クロワさんは、かなり豆乳が気に入ったようだ。



「クセがなくて使いやすいね。この、おから?が面白い食感だ」



 シフさんはおからに興味津々だ。

 どうやら、三人は豆乳で昨日から試行錯誤しているようだ。

 なんて向上心と、探究心の強い人達だろう。

 頼もしい。



「お嬢様のオヤツを貰いに来たんです。どうですか?出来てますか?」

「ああ!なかなか取りに来ないから、こっちから持って行こうと思ってた所だよ。おからで作ったクッキーだよ。食べてみておくれ」



 差し出されたクッキーを、一つ手に取り口に運ぶ。 サクッとした軽い口当たりと、素朴な甘さが口に広がる。



「美味しいですね!」

「夕食には、教えてもらった豆乳料理を、数点考えてるよ」



 シフさんが腕まくりしてみせる。



「給仕に出れないか、ワトソンさんに頼んでみます」



 おからというと、パウンドケーキも有名だよな。

 俺は三人に、バナナ、もといこの世界ではナバナのパウンドケーキのレシピを教える。

 おからと、卵と、ナバナさえあれば出来る、簡単お手軽ケーキだ。

 全部混ぜてオーブンで焼くだけ。

 簡単、早い、美味い。

 三拍子揃ったダイエットケーキだ。

 レシピに三人は目を輝かせて作り始めた。


 作り始めた三人にお礼をいって、クッキーの乗ったトレイを持って、足早にお嬢様の部屋へと戻る。





 部屋へ戻ると、ノックの音に誰も反応しない。

 三人の声も全く聞こえなかった。

 またお嬢様の機嫌が、爆発したんだろうか?

 そんなことを考えていると、中から慌ててファリスさんが扉を開けに来た。



「すみません、熱中し過ぎました」



 どうやら、リメイクに夢中で気付かなったらしい。

 平和な理由で何よりだ。

 俺はトレイから、クッキーの乗ったお皿をテーブルに置く。



「お嬢様、お茶にしましょう」



 今まで裁縫に夢中だったお嬢様は、待ってましたとばかりに顔を上げた。



「今日は何かしら!」

「今日は、おからのクッキーです」



 早速お嬢様が一つ手に取り口に放り込む。



「お嬢様、20回噛むのを忘れずにですよ」


 

 ファリスさんが、合わせてお茶を入れてくれる。

 口にクッキーが入っているので、文句の言えないお嬢様は、代わりに口を膨らませて対抗した。

 しばらく噛んで飲み込むと、お嬢様の感想が聞けた。



「いつもより甘くないけど……何だろう?噛めば噛むほど優しい味がする」



 二つ目を口に放り込み、お嬢様は顔をほころばせる。

 でも水分を持っていかれる様で、いつもよりお茶をおかわりしていた。

 俺は改良点があるなと、メモしながら観察する。



 後をファリスさんとレナに任せ、夕食の給仕に出れるよう、ワトソンさんの所にお願いに行く為、お嬢様に挨拶する。



「では、お嬢様。失礼します」



 俺は、左手を胸に当てて挨拶する。

 お嬢様は了承すると、またファリスさんとレナと、リメイク作業に戻って行った。




 ワトソンさんの元に戻った俺は、状況報告と、給仕のお願い、それからパントリーの食器磨きなどをこなす。



「それが終わったら、ルークの所に夕食に飾る薔薇を取りに行って貰えますか?」

「はい!ついでにお嬢様のお部屋の分も頂いてきます」



 ワトソンさんが笑顔で頷いた。




 ダイニングで、ルークさんから貰った薔薇を花瓶に移し替える。

 バーバラさん達が作った料理の、最終チェックをした時、丁度6時の鐘が鳴った。

 お嬢様が少し遅れてファリスさん達と入ってきた。

 そのすぐ後ろに奥様も続く。

 今日は奥様だけらしい。


 お嬢様は嬉しそうに奥様とお話している。

 話している内容は、どうやら今日のドレスについての話だ。

 余程嬉しかったのか、席についてもお嬢様の勢いは止まらない。



「確かに、今日のドレスはとってもカーミラちゃんに似合ってますわね」



 褒められたお嬢様は、とても嬉しそうだ。

 俺はワゴンに乗せた前菜を、奥様とお嬢様の前にセットしていく。



「今日の前菜は、湯葉と温野菜のサラダです」



 本当は、醤油があれば良かったんだけれど。

 小学校の時、社会科見学で醤油工場に行ったので、作り方は分かるけど、作る場所と、機材がないもんな。

 麹菌も入手目処がつかないし、今は諦めるしかないか。



「湯葉は、ゴマ油と塩とネギルの、ネギルダレであえております。サラダは、蒸した野菜のサラダです。一昨日と同じドレッシングをかけています」



 蒸した野菜はオクラに似た野菜、オークラと、キャベツに似たキャベチだ。

 奥様は減量食が気に入ったのか、あれから自分もお嬢様と同じ物にする様、バーバラさんに頼んだらしい。



「!野菜が甘い!」



 蒸した事で、野菜本来の甘みと水分が豊富になり、みずみずしい。



「このネギルダレも後を引くわね。旦那様が好きそうだわ」



 確かに旦那様が食べたらワインが空きそうだ。

 その後に、ササミのオニオンスープが続く。

 玉ねぎの呼び名は、そのままオニオンだった。



「今日のメインディッシュは、おからと鶏肉のハンバーグです。」

『ハンバーグ?』



 二人が声を揃えて聞き返す。



「みじん切りにした鶏胸肉に、豆乳から取れたおからを足して、焼いたものになります。ママトを煮込んで作ったソースでお召し上がり下さい」

「いいにおい……」



 俺はお皿に乗せられた鶏おからバーグに、ママトで煮込んだソースを上からかける。

 トッピングに目玉焼きがついている。

 お嬢様がナイフとフォークを構えるのを見て、口を開こうとすると。



「分かってる!よく味わって、20回は噛む。でしょ」



 俺は苦笑しながらも頷く。

 奥様が隣で驚いた様に、お嬢様を見た。

 まぁ、前までのお嬢様は、味わっているのかも分からない程早食いだったからな…。

 一口サイズに切ったハンバーグを口に運んだお嬢様が、んー!と可愛らしくうなりながら頬を抑えた。



「なんて美味しいの!!私、ママトはあんまり好きじゃないけど、このソースは大好きよ!」



 お嬢様の感想を聞いた奥様も、上品に口へとハンバーグを運ぶ。



「本当……美味しいわ……半分は豆なのよね?余り感じないわ」



 二人の口にあったようで良かった。

 異世界料理万歳である。



 デザートのシャーベットを召し上がった二人は、食後のお茶を飲みながら、ゆっくりお互いの事を話していた。

 奥様からは、旦那様が忙しくて来られない事や、本当は一緒に食事を取りたがっていた事など。

 お嬢様は、さっき話したリメイクの話や、散歩の事など話されている。



 俺は、そっと下げられた食器を乗せたワゴンを引いて裏に下がる。

 俺は、まだ教えていない豆乳を使った料理などのレシピをまとめる為、ワトソンさんに説明して、部屋に下がらせてもらった。


 おしゃべりをしながら、ゆっくり味わって食事をする事に、お嬢様が少し慣れてきたようだ。

 今はリメイクや、ファッションの事など、興味のある事に意識がいっているので、いつもより空腹も感じにくいだろう。今のところ、出だし好調なようだ。



 俺はレシピを纏めながら、お嬢様の為に出来そうな事を、考えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ