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嫌われ悪役令嬢を愛され令嬢にする方法  作者: 今宮彼方
第1章幼少期編
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リメイクドレス


「リメイクしてみたらどうですか?」

『リメイク?』



 三人が揃って聞き返す。



「はい。着るには似合わないし、これから痩せてしまえば着られません。ですが、捨てるのは勿体ないです」



 ファリスさんとレナが凄い勢いで頷く。



「なので、例えば今お嬢様が持っている半袖のワンピースですが、袖を切ってノースリーブの形に変え、胸元のフリルをとって、胸の下にリボンを巻いたりすると、足が長く見えてスタイルが良く見えます。シンプルなワンピースに変えてみては如何ですか?」



 俺はテーブルに広げたピンクのドレスを、説明に合わせた箇所を指さし、説明していく。



「ノースリーブにすると、二の腕が出てしまうので、ボレロを羽織ったり、合うボレロが無ければ、他のドレスから作ってみてはどうでしょう」

「素敵!じゃあこれは?!」



 お嬢様が急いで黄色いドレスを持ってきた。



「お父様が買ってくれて、とても気に入ってるんだけど、すごくゴテゴテして似合わないの…。でもデザインは気に入ってるのよ!」



 持ってきたドレスは、上半身にも、スカート部分にも、沢山のレースとフリルがついて、スカートはバルーンの様に膨らんでいる。

 確かに、太った子には敷居が高いが、女の子が好きそうな華やかなドレスだ。



「これだと……上半身の所は思い切って切ってしまって、シンプルなVネックのシャツに、このフリルのスカート部分を、少しハイウエスト気味に絞って付けてみては如何ですか?」



 俺は、黄色のドレスの上半身部分を追って、スカート部分だけが見えるように説明する。



「そうすれば、目線が下のスカートにいって、ボリュームのあるスカートと、絞った上半身でバランスが良いかと」

「リオン、センスがいいですね。素敵だと思います」



 ファリスさんが褒めてくれた。



「わ、私も、早く仕立ててみたいです!」



 裁縫が得意らしいレナが、ワクワクとした様子でドレスを覗き込んでいる。



「私も裁縫は得意よ!私だって出来るんだから!」



 お嬢様が目を輝かせて立候補する。



「お嬢様は、やってもいいですけど、お勉強も疎かにしてはダメですからね」

「リオンは口うるさくて、まるで先生みたい!」

「お嬢様の為を思ってこそですよ」



 お嬢様が、またフグのように顔を膨らませている。



「この、切ってしまったフリルは、何かに使えるのですか?リオン」



 ファリスさんが、切ってしまう予定のフリルを指差す。

 前世なら、切れ端は雑巾にでもして、汚れた所を拭いてそのまま捨てていたが、この高価な布ではそれもはばかられる。



「うーん。やったことはないんですが、こう寄せて、薔薇のように形を整えてみたり出来ますか?」



 フリル部分をウネウネと巻きながら形作る。



「面白いですね、出来ると思います」



 ファリスさんが顎に手を添えて頷いた。

 お嬢様とレナも、嬉しそうに頬を綻ばせる。



「作ったフリルの薔薇は、コサージュにしたり、ブローチにしたり、あとは髪飾りなんかにしても良さそうですね」

「凄いわ、リオン!どれから手をつけましょう!」



 お嬢様は興奮も最高潮、と言った感じではしゃいでいる。



「お嬢様、後は毎日庭に散歩に行くのも、忘れては行けませんよ!」

「昨日、散歩をしたせいかしら?いつもはなかなか眠れないんだけど、すぐに眠ってしまったの!」



 なるほど。

 いつも全然運動をしていないお嬢様は、疲れていないので、なかなか寝付けないことが多かったようだ。



「身体を動かすと、寝付きやすくなって、美容にもいいです。毎日の日課にしましょう」

「でしたら、午前のお勉強のあと、昼食までのお時間を、庭への散歩に当てては如何でしょう?」



 ファリスさんが手を合わせて提案してくれた。



「食前に運動は、減量にもタイミングはバッチリですね」



 俺はお嬢様の日課をメモしながら、頭の中でタイムスケジュールを組む。



「で、でしたら、昼食後の、午後のお勉強までの時間に、ドレスのリメイクの時間に当てては?!」



 レナがキラキラした瞳で、お嬢様を見つめる。



「うーん。それよりは、午後の勉強のあとが宜しいかと思います」



 俺は、脳内スケジュールの時間割を思い浮かべる。



「あら?どうして?」

「お嬢様は、飽きっぽい上に勉強嫌いですからね。勉強の後に、ご褒美の時間があった方が、効率良く進むと思われます」

「それは……確かに……」



 ファリスさんが困った顔で相槌を打った。

 お嬢様は、またフグの様になっている。

 俺が口角を上げると、モニョモニョとしていた。


 となると、お嬢様のタイムスケジュールはこんな感じか。


 8時、朝起床

 着替え、身支度

 9時から11時まで勉強

 12時まで散歩など自由時間

 12時昼食

 13時から15時まで勉強

 15時お茶の時間

 ここに自由時間

 今集まっているのもこの時間だ。

 そして、18時に夕食


 出来れば二時間ずつの勉強は、一時間ずつにして、間に15分位、小休憩を取った方が効率良いと思うだが……。

 今度、旦那様に聞いてみるか。

 俺は忘れないようメモして、お嬢様と向き合う。



「ではお嬢様、継続は力なり。ですよ。笑顔、姿勢、減量、お勉強…。大変ですが、私も精一杯お手伝いします。文句があればすぐに聞いて、お嬢様が気持ちよくご自分を磨けるよう努めます」

「リオン……」



 俺がお嬢様に伝えると、後ろの二人が一歩前に出た。



「お嬢様……私も、お嬢様の侍女として、お嬢様を支えられるよう努力します。お互いに頑張りましょう」

「わ、私も!……三人で頑張りましょうね、お嬢様!」



 すぐに顔に出るお嬢様は、二人の言葉を聞いて目元を潤ませた。



「ええ……ええ!頑張るわ!」



 綺麗にまとまったようだ。

 すると、お嬢様はくるりとこちらを振り返った。



「リオン……では早速文句よ!お腹が空いたわ!」



 折角、話が綺麗にまとまったと思ったらこれである。

 しかし、3時のお茶の時間に、時間を取ってもらったのだ。

 もう4時だ。

 ドレスの話で、空腹が気をならない程、熱中していたのだろう。



「頼んでいたお菓子が出来てるか、バーバラさんの所に行ってきます。ファリスさん、お茶の用意を頼んでも良いですか?」

「はい。勿論です」

「じゃあ、私はレナとリメイクしてていいかしら?!」



 お嬢様が早速ドレスを広げだした。

 俺は苦笑しながらOKを出す。

 楽しそうで何よりだ。


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