表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺獄にて  作者: ぺんぺん
ブロローグ 現世にて
4/31

怠惰な男 転嫁

動くことを辞めたスーツ姿の男の服を漁り、ポケットにあったキーケースを取り出し、スーツ姿の男をそのままに、歩みを進める。


一弥は奪った鍵を暫く進んだ道端の排水溝に捨てた。


「これは練習にすぎない。もっと楽しいのはこれからだぜぇ!」

悪魔の響く声を聞き流し、少しずつ冷静になり始めた脳で状況を確認する。


包丁以外殆ど返り血も浴びていない。


悪魔の言うことに従えば間違いない。


悪いのは悪魔だ。


初手で首を裂いたのは悪くなかった。


一弥自身が得るものは1つもなかったが、この程度で人は死ぬと理解できたし、思ったよりは楽しくなかったと。


頭の中で不快が渦巻く。

一弥は自分が悪くないと確信に近い考えを抱きつつ、自分が人を殺したと言う事実を飲み込めないでいた。


一弥にとって悪いのは自分を唆す悪魔と、無様にも死んだスーツ姿の(あの)男だけだ。


思考が纏まらず、深く深く渦を成す。

悪魔が悪い。死んだ男が悪い。


自分が悪くないと言うための理由を考えて、歩く。


無為にも近いそんな時間は、一弥の家に辿り着くという幕切れで終わりを迎える。


自分でも思っていた以上に疲労が深く、一弥は引きっぱなしの布団に倒れ込み、落ちるように寝るのだった。


夢を見る。

人が死に、奪われ、犯される。

何十、何百にもその惨状が浮かび上がる。

顔には笑みを携え、心の内は無感情に、無関心に、ただ、悪魔に唆されるがままに悪を為す。

きっとこの行為に意味はないのだろう。

一弥は、言われたからやっているだけなのだから。

だが、悪魔が言うのだ。

「君はとても楽しそうだ。」と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ