辺獄にて 図書館ビーチェ 骨の城5
ガブリエラ・ルシェは好奇心のままに生きていた。
幼い頃から気になることは解き明かさねば気が済まない質だった。
蟻の巣を崩したり、落ちていた死んだ野鳥を庭まで持ち運んで捌いたり、気になることなら何にでも手を伸ばした。
そんなガブリエラが図書館の帰り道、川沿いの橋の下でホームレスの遺体を見つけてから、護身用のナイフを使ってその遺体の解体を始めるまで、数分もかからなかった。
ガブリエラは鈴城一弥と名乗っていたモノを、引き摺り歩いていた。
ガブリエラ自身の髪の毛を使って作った縄を青年の首に回し、吊るすように連れ歩く。
首の頚椎の隙間に縄を通し、脳からの情報伝達を遮り、喉を絞めることで酸欠にさせる。
辺獄において、拘束する場合は相手に行動させないように相手の意識や運動能力を奪い続けるのが一般的だ。
辺獄ではあらゆる人が時間をおけばゾンビのように動き出す。
ただ死に続けるという当たり前のことが赦されていないのだ。
だから、可能な限り相手が動かない状態を維持しなければ拘束等行えない。
ガブリエラは未だにこれ等の辺獄における法則を信じきれてはいなかったが、首の骨を折った相手だろうが、暫くしたらまた動き出し、地下闘技場で殴り合いに復帰しているのを見れば、事実であるとして動かざるを得ない。
ガブリエラは、自分で確認したこと以外信じられなかった。
だから、鈴城一弥で確かめるのだ。
どうせいくら壊しても蘇る最上のおもちゃだ。乱暴に扱っても誰も文句を言わず、解体してもパーツが無くなることもない。
それに、もし意識を取り戻して動き出したとしても、精神面での不思議を暴くための一助となる。
鈴城一弥が他人と違うことの証明ができれば面白い。もし、他と同じだとしても、それはそれで面白い。
切れ味の悪い骨片を用いたナイフで鈴城一弥の腹を丁寧に何度もなぞって十字に切り開きながら、ガブリエラは楽しそうに笑っていた。
皮を開いた先、内臓の構造におかしなところはない。
脈を刻む心臓、辺獄において何も食べなくても正常に見える胃や腸、横隔膜の動きに応じて膨らみ縮む肺。
それら全てが普通に見える。
それでも、ガブリエラは楽しんでいた。
まだまだ疑問が解消されないのであれば、調べられることは他にいくらでもあるのだ。
味をみてみるか?臓器を引き裂いて中身も確認しておく必要があるか?腕や脚、頭部も切り開いて確認しなくてはならないのでは?
ぐるぐる渦巻く思考に呑まれ、ガブリエラの箍は外れていく。
図書館の一職員のように振る舞っていたガブリエラは、生前と同じく好奇心にのみ支配され、鈴城一弥を捌き、探っていく。
どうせ罪衣のあるかぎり死ぬことはないし、時間はいくらでもあるのだからと、ガブリエラは鈴城一弥を骨の1つとなるまで解体し続けた。




