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辺獄にて  作者: ぺんぺん
ブロローグ 現世にて
3/31

怠惰な男 罪

グロテスクな描写を含むかもしれません。

夜道に黒いパーカーを着た男が1人歩いていた。

薄暗い街灯に照らされた路地は、半円状の光と、光の届かぬ暗闇とで彩られ、街灯の真下にでも行かないと、全身が黒で覆われた男は目立つことがない。

道の両脇を挟むように建ち並ぶ家々からは、時折、光とテレビの笑い声が漏れ聴こえていた。

深夜11時、多くの人は既に帰宅を済ませ、寝ているか、寝るための準備をしている頃合いだろう。

パーカーの男は、そんな静まり返った夜道を、ギョロギョロと目玉だけを動かしながら、パーカーの腹部にあるポケットに両手を入れ、探るように歩く。


夜道にはパーカーの男ともう1人、スマホを片手に歩くスーツ姿の男が居た。


パーカーの男はスーツ姿の男がこの時間に住宅街を歩き、もう暫く先にある自宅に帰る途中であることを知っていた。


住宅街の公園で、酒を飲みながら座っていたら、偶然目に入ったこの男性は、丁度良いカモだったのだ。


数日かけてスーツ姿の男が、平日は毎日23時過ぎにこの通りを歩くことを調査し、脳内で何度も計画をたて、やっと実行に移すことにしたのだ。


『早くこの男の死んでいる姿が見てぇなぁ。』

脳内に響くように喋るこの声にも慣れてきた。

返事をするまでもなく、漸く実行に移せる。

その喜びだけでパーカーの男は既に絶頂しそうなほど興奮を高めていた。

『ああ、暗き道を赤く染めよう』

そんなパーカーの男に今さら脳内に響く音になど、耳に入らなくなる。

今はパーカーの男にとって、何よりも優先するべきことが目の前にあるからだ。


少しずつ歩みを早める。

凶器は三徳包丁。

後ろから刺すのは肋骨や背骨が邪魔をして非効率的だ。

刃が肋骨に引っ掛かるだけで下手したら殺せずに終わる。

やるなら確実に、抵抗させず、素早くだ。

故にスーツの男を殺す手段は、後ろから近寄り、後ろから包丁を首に回し、パーカーの男自身の喉まで切り落とすような勢いで刃を引き付けて切る。


そして、包丁を離してスーツ姿の男の背中に蹴りを入れ、スーツ姿の男が反応する暇も与えないよう、倒れてなお手にあるスマホで何かをされる前に蹴って飛ばす。


喉を裂かれた男は悲鳴を上げることも、助けを呼ぶこともできず、連絡手段であるスマホも失った。


そんなスーツ姿の男の頭を真横から蹴る。

頭がコンクリートの地面とぶつかり跳ねる音がパーカーの男にとって、何よりも気持ちの良い音だった。


パーカーの男はヒューヒューと喉から音を鳴らす男を見下ろし、口角を上げる。


スーツの男の首を裂いた包丁が、路上に落ちていたのを視界に入れ、ゆっくりと拾い上げる。


血を吐くだけの第二の口のようになった喉から、未だに血が流れ落ちる。

月光を反射し、赤く、黒く輝くそれは、この世の幸せを表した色だと確信した。

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