辺獄にて 図書館ビーチェ 骨の城1
気分が沈んだときに続きを書こうと思っていたら永遠に続きが書けなそうなので少しづつ筆を手に取り始めました
辺獄には何もない。
正確には、一弥達のような辺獄に落とされた人と、砂のみがあるだけだ。
白、白、白
辺獄の空は曇り、血は白い砂に埋め尽くされている。
何処からか吹く風は、雲に透かした日の光で陰を作る。
白の中にコントラストがあった。
先程までの、青い女が近くにいた時の一弥はどうかしていたのだ。
波のように風が砂に絵を描こうが、それは波のような砂であって海の波ではない。
一弥は青い女が恐ろしかった。
だからこそ、青い女から逃げるように走り続けた。
時折立ち止まり、辺りを見回して、建物がないことを確認してから、向きを確認して走り出す。
そんなことを繰り返すうちに、一弥はとうとう、辿りついてしまった。
それは、言うなれば放牧民の住む革張りのテントを大きくしたような建物だった。
丁寧に肉の削がれた骨を支柱に、丁寧に太く結われた髪の毛で固定された骨組みに、革を張り合わせただけのお粗末なものだ。
それが小学校の体育館程の大きさになっている。
倒れないように考えられて組まれたであろうトラス構造をベースにした建物、それが老人が図書館と言っていた建物。
白い世界の中に白くても存在感を放つ図書館を前に
ガツン
という鈍い音を後頭部に感じ、そのまま意識を失った。
一言で言うならば、暴力の音。
肉が肉を打つ高い音。
骨を打つ鈍い音。
間隔の短い呼吸音。
砂を踏み締める音。
意識を取り戻したばかりの一弥の耳に入ったのは、そんな混沌とした音だった。
首を上げてボヤけた眼で、辺りを見回そうとすると
「おい!新入りが起きたぞ!」
と倒れたままの一弥の頭上から声がした。
起き上がろうとするが、何故か腕にも脚にも力が入らず、仕方がなく首だけでも向けようとするが、それすらもままならない。
「おい、新入り。ここのルールだ。質問するぜ、拒否しても構わないがその前に覚悟だけは決めておけよ。」
どこか面白がっているような口調の男の声だ。
「なんの…話でしょうか?」
自分が何故倒れているのか、この男はなんなのか、脳内を巡る疑問の1つを相手に返す。
「てめぇからの質問は受け付けねぇ。まずは名前だ。名前を教えろ。」
だが、一弥の疑問を氷解する解答は帰ってこない。
「鈴城一弥です。」
仕方がなく、自身の名前を答えると、男は一弥とは別の方向に向かって叫ぶ。
「おい!返答1だ!」
返答1が何を意味するのか一弥には分からないが、この返答によって何かしら今後の動きが変わるのだろうというのは分かった。
「次の質問だ、お前が産まれたのは何年だ?」
取り敢えず一弥は、嘘をつかず、正直に答えることにした。
「1986年」
一弥の産まれた年。
「ここに落ちた年は?」
男の発言の意図が掴めず少し悩んだが、恐らく死んだ年を聴かれたのだろう。
「2018年」
一弥の覚えている最後の年だ。
「よし、意識はもうはっきりしてるようだな。」
男は納得したような声色で、独り言のように呟き、一弥の髪の毛を掴み、引き上げた。
「ぐっ!」
一弥の頭皮を引きちぎられそうな熱と痛みが襲う。
「おう、もう眼は見えてんだろ?ここが俺たちの城。皮を裂き、骨を断つ製本闘技場至高天だ。歓迎するぜ、兄弟。」
無理矢理見せつけられた光景は、生きていた頃には決して見れなかったであろう、果て無き闘争の場。
質問に気を取られてあま。意識できていなかったが、殴り殴られ、蹴り蹴られ、そういった肉を打つ音が耳に響く。
男女問わず互いに傷付けあう。
もう死ぬことはないと、勝敗もなくただただ殴り合うだけのその空間に、一弥の理性は恐怖を訴えながらも、秩序だった無意味な争いに心惹かれていた。




