ささやかな願い。
初投稿です。
生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
「勇者アルトよ、此度の魔王の討伐、誠にあっぱれである」
「ありがたき幸せ」
王の間において、勇者様が王であるお父様から言葉を賜っている。
それを見ながら、私はずっとこう考えていた。
(お父様!顔を上げさせてあげて!!)
そう、勇者はもちろん、その仲間の方々、付け加えるなら大臣たちも皆、膝を付き顔を下げたままだ。
顔を下げていないのは、私と母と第一王子であるお兄様、そして王の間を守る親衛隊くらいでしょうか。
あ、お母様の肩が震えてる。
どうやら頭を下げたままなのがツボに入ってるようだ。
私が王の間に足を踏み入れた時にはこの状態になっていた。
お父様は国が助かった安心からか、勇者様御一行に対し、涙を浮かべながらも「よくやった、ありがとう」と、普段の王の仮面を脱いだかのような清々しい表情をしている。
しかし、肝心のその主役の方々はその言葉しか聞こえない。
なんともシュールな絵だった。
お母様は未だに笑いを堪えきれない様子だが、私には切実な問題だった。
お恥ずかしながら、勇者様の顔を見たことが、無いのです。
そう、それは勇者様の旅立ちの日。
魔王の呪いによって衰弱していた私は、そこにはもちろん立ちあえなかった。
ベッドから離れられない日々が続き、私の心もすり減っていきました。
ある日、お母様に言われた言葉。
「勇者様は必ず貴女を救ってくださるわ。だから、生きることを諦めないで」
「…分かりました」
「もし貴女が助かったなら、勇者様を貴族に迎え入れ、貴女と婚約させようか、なんて話も出ているのよ?」
「はぁ…」
お母様は笑顔を浮かべながら続ける。
きっと、私をこれ以上不安にさせたくなくて、こんな益体も無い話をしているのでしょう。
正直この頃の私は、もう良いんじゃないかな、なんて考えていました。
いつになるか分からない苦しみが続くのももちろん不安でした。
日々伝わり聞く報告。
魔族の砦を破壊しただとか、四天王を激戦の末、撃ち破っただとか、逆に敗戦して街が無くなったなんて話もありました。
もし私が呪いを受けなければ、ここまでにならなかったのでは無いか。
そんな事を考えてしまうくらいには身体は弱り、心は疲れ、無為な時間だけがありました。
余命と言われた一年が近づいてきた頃、急展開が起こりました。
魔王率いる魔族軍が、直接我が国に攻め込んできたのです。
どうやら、敗戦した四天王が最後の力を振り絞って、我が国の結界を破ったらしい。
結界頼りだった我が国に防壁などはありません。
すぐに兵やギルドの冒険者たちに、民を王城へ避難させるよう命令或いは依頼をかけられました。
それが功を奏したのか、ただの幸運かは分かりませんが、民への被害は最小限で済んだようです。
鳴り響く轟音に怯えながら、ただベッドからその光景を見つめていました。
三日三晩、戦いは続きました。
爆発が起こったり、雷が落ちたり、遠目からでもとにかく壮絶な戦いだったことだけは分かります。
そして、その戦いに終止符を打ったのは、魔王との一騎打ちに勝利した勇者様の振り上げた拳だったのだそうです。
私の身体も、一騎打ちの途中から魔王の力が弱まったからか、徐々に呪いの力は薄れていきました。
それからの王城は慌ただしいの一言に尽きました。
避難していた民の中で働ける大人と兵士たち、他国からも冒険者を派遣し、破壊された街の瓦礫の撤去作業や、仮住居の設営、炊き出しなどを進め、徐々にではありますが元の平和な暮らしを取り戻していきました。
そして、ある程度国としての体裁が整った頃、この褒賞の儀が執り行われたのです。
私も1人で動ける程度には体力を取り戻し、この日も少し遅くはなりましたが、王の間へと自分の足で赴いたのです。
お母様に言われていた言葉が繰り返されます。
「貴女はこの国を救った勇者様と婚約を交わすのですよ」
そうです。
それが国を救って下さった、いいえ、私の呪いを解いて下さった勇者様への、私が出来ること。
これからは彼と、王女としてでは無く、貴族の妻として生きていかねばなりません。
色々と不安は尽きませんが、まずは今この気持ちをぶつけたいのです。
早く…早く勇者様の、未来の旦那様の顔を見せてくださいまし…!!
あと、出来ればカッコいい方が…それから……
ささやかな願いが叶うかどうか分かるのは、このすぐ後のこと。
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はじめまして。
はじめて投稿してみました。
特に山も谷も無いお話になってしまいました。
頭の中では、実はこの勇者は魔王が化けていて、元の勇者は魔王と契約を交わしていて。
魔王は崩れかけた魔界を立て直すために姫が必要で、勇者は実は召喚勇者で元の世界に帰りたくて。
呪いも実は魔界に馴染めるようにただの魔力酔いだったりと、色々妄想はひろがリングだったんですが…ですが…!!
文章力が追いつきませんでした!(ド直球な言い訳)
そのうちまた気が向けば投稿してみたいと思います。
稚拙な文ですが、ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!