002話「墓場からスタート」
ブワッ
俺の意識が目の前のアバターへ移り再び目の前が暗転した。
「ここがVRMMOの中か」
俺の意識はすぐに浮上し視界が開けた。
前情報通り、スケルトンキングのスタート地点は墓地であった。
かなり廃れた墓地である。
「おぉ! 骨の手がリアルだ」
両手を見てみると肉も皮膚もない白骨の手が見える。
「さてと、まずはステータス確認だな」
ヴォン
俺が自分のステータスを見たいと思ったら視覚内にゲームでおなじみのウィンドウが立ち上がった。
【ステータス】
名前:ハデス
種族:スケルトンキング
レベル:1
職業①:死霊術師(Lv1)
職業②:細工師(Lv1)
体力:75/75(+25)
魔力:105/105(+35)
攻撃力:15(+5)(+0)
防御力:10.5(+3.5)
初期ステータスにしては中々・・・スケルトンキングの固有スキルの効果は抜群だ。
各ステータス横にある()の中がスケルトンキングの持つ固有スキル『骨特化』の効力だろう。
スケルトンキング自体も骨の分類として効力が発揮されているという事になる。
さて、ステータスも見終わったしスキルは何を持っているのだろうか。
ブォン
別のスキル関連のウィンドウが上がった。
【死霊術師スキル(Lv1)MAX.1】
・死霊召喚[スケルトン]
【細工師スキル(Lv1)】
・未取得
【種族スキル】
・骨特化
どうやら初期スキルではスケルトンを1体召喚する事が出来るらしいな。
まず、最初にやるべきことはスタート地点の周囲探索からだな。
俺の視覚内にはモンスターと呼べるべき存在はいない。
おそらくプレイヤーである俺がここにリスポーンする地点だからであろう。
特殊種族と呼ばれるキャラクターは特定の場所がリスポーン地点であり町や村といった安全な場所ではないらしい。
しかし、リスポーン地点の半径50m以内にはモンスターが湧かないようになっている。
とにかく、墓場らしく一軒家位の礼拝堂まであるし俺の第一拠点という訳だ。
まずは拠点となる礼拝堂の中を見てみよう。
ガガガッ
錆びれた両開きの扉を開き礼拝堂の中へ入っていく。
中は狭くもなく広くもない空間が広がっていた。
中央には2m強の大きな石の棺桶が置かれている。
左右には上下に2m近い穴が1つずつ空いていて計4つの穴が壁に掘られている。
近寄って見ても全ての穴は空っぽだ。
「ここがスケルトンキングのリスポーン地点という事か?」
中央の棺の中身も空っぽだったが石の蓋には掠れて読めないがINGというアルファベットが刻み込まれていた。恐らくKINGと綴られていたのだろう。
礼拝堂はあまり見るものは無さそうだ。墓地周辺を見てみるとするか。
俺は50m四方の墓地を抜けて暗い森へと向けて歩く。
ピンッ
枯れ木だけの森を少し進んだところでモンスターが出現したマークが現れた。
薄暗い視界の中にうっすらと犬のようなモンスターの影が見えた。
ピッ
視線を集中するとモンスター名が表示された。
【ゾンビドッグ(Lv1)】
薄らと見えていた影がハッキリと見え始めた。姿形は犬なのだが、目が飛び出し、あばら骨が見え、腐敗した体をしている。
そしてグラフィックがリアル過ぎて気持ち悪いと思った。
あばら骨の間から飛び出す腐った内臓がテカテカと光って余計に気持ち悪くなる。
嗅覚があればより一層嗚咽感に悩まされていただろうな。
このフリースタイルオンラインにも五感は再現されている。視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚だ。
スケルトンキングの体では視覚と聴覚位しか働いていない。その他の感覚は全くないのは体が骨なのだからだ。
しかし、触覚の中にある痛覚が無いのもメリットの一つだろう。攻撃を受ければその箇所に痛みが走る(静電気程度の痛み)仕様になっているが骨には痛覚は無いのだ。
更にリアルを追求して満腹ゲージと乾きゲージが存在する。満腹ゲージは0になれば体力を乾きゲージは0になれば魔力が減っていくシステムだ。
満腹・乾きゲージを常に確認しながら行動しなければならないのだが、これもアンデッド系には無意味であった。
つまり、生物である種族達はまず食料や飲料水についても考えながら動かなければならないのだが俺に関しては不要だ。
その分の出費が無くて助かる。
元々町や村の近くにリスポーンしないので必要だったら困る。どう見ても飲食物を確保するフィールドには見えない。
グルルルゥ
俺が考えに耽っていたらゾンビドックが唸りターゲットした。
装備と言えばボロボロの布程度で魔法すら放てないだろうが負ける事は無いだろう。
とりあえず戦ってみるか・・・
俺はゾンビドックに初めて戦いを挑んだ。
・・・
・・・・・・
マジ、パネェ
ゾンビドックと戦ってみたが強かった。
1撃で体力を7ポイントも削るのだから焦った。
そして攻撃が早いし、見切れなかった。
当然逃げた。考えなしに突っ込む物じゃないと分かったからだ。
リスポーン地点の墓地まで逃げ込んでようやくゾンビドックを撒けた。
まず、装備が不味い。ボロ布には防御力が無かったのだ。
つまりは素の防御力で戦っていたようなものだ。
攻撃も素手で何とか戦ってみたが全然ダメージが通らなかった。
結果惨敗という訳だ。
何がいけなかったのといえば何も装備していない事だ・・・
魔法攻撃が出来れば何とかなったかもしれないが無い物は無いのだ。
とにかく今の方針は装備を整える事から始めるか。
しかし、ここは墓地だし装備品が売っている店がある訳でもない。
という事で墓荒らしを強行する事にした。
墓地といえども何かしらアイテムが落ちている筈だ。
装飾品とか落ちててもおかしくないだろう。
50m四方の墓地をくまなく探してみて見つけたアイテムがこれだ。
・屍の骨×3
・布きれ×1
どないせーちゅうねん!!
これだけ広い墓地でたったの2種類しか集まらなかった。
骨ならば何とかして武器として使えるだろう。後の使い道が分からん。
とりあえず、骨を如何にかして武器に使えないか考えよう。
骨の武器ならばボーナスが付く。今の状態だと武器として扱われないのだ。
骨をへし折って剣の様にすれば武器になるのか?
とにかく3本も骨がある事だし1本試してみるか。
スッ
骨を一本手に持ち振り上げて其処らにある墓石に叩き付けてみた。
バキィッ
骨が中心から見事へし折れた。
【ボーンダガー】
攻撃力:3(+1)
耐久値:75(+25)
おっ!
どうやら骨をへし折っただけで武器と判定されたようだ。
綺麗に中心から折れたから2本とカウントされているみたいだ。
とにかく装備してみるか・・・
装備欄のウィンドウが立ち上がり持っているボーンダガーを装備してみる。
攻撃力の()の数が増えているな・・・おそらく(+3)がボーンダガーを装備した時に増える攻撃力みたいだな。
ボーンダガー自体の攻撃力は元々2で骨特化スキルで3になっているな。それが加算されたのか・・・。
とにかく殺傷力は素手よりは上がったみたいだな。
≪細工師スキル:ボーンダガーの制作が可能になりました≫
おっと、今ので細工師のスキルが増えたようだ。
問題は回復手段も無く装備も着けられずにいる現状だな。
今日はこのあたりで良いか。
【ステータス】
名前:ハデス
種族:スケルトンキング
レベル:1
職業①:死霊術師(Lv1)
職業②:細工師(Lv1)
体力:75/75(+25)
魔力:105/105(+35)
攻撃力:18(+5)(+3)
防御力:10.5(+3.5)
【装備】
頭:なし
体:なし
腕:なし
腰:なし
足:なし
右手:ボーンダガー
右手:なし
【死霊術師スキル(Lv1)MAX.1】
・死霊召喚[スケルトン]
【細工師スキル(Lv6)】
・ボーンダガー
【種族スキル】
・骨特化
【召喚物一覧(0/1)】
名前/主装備/体力/攻撃力/防御力/グループ
なし