118話「準備」
≪ラースからコールがありました≫
”そっちはどうだ?”
”こっちはインゴットの加工方法がやっと見つかった所である”
このブラチライトという金属の加工についてが悩み所だった。
当初は通常の金属加工の窯では溶けないと言われたそうだ。
”スライムから分泌される酸性の液体が必要なのである”
”グラトニースライムからか?”
”アシッドスライムでも良いそうである”
”と言う事は六の街か”
アシッドスライムが出てくる場所は六の街の迷宮だった。
”俺達が獲ってこよう”
”頼んだ”
「私達も手伝うわ」
「三次職の力が見てみたいっすからね」
「ラースとグリードの2人も転職させよう」
2人を五の街へと送りラースは鉄壁騎士、グリードは八俣騎士という三次職に転職となった。
その後、六の街へと送る。
・・・
「第4回目のイベント?」
「そうっす! 公式に発表されたっす」
「イベント名は侵略者だったわね」
「うむ。この星が侵略者から守るというイベントらしいのだ」
「やはり北の大地からでしょうか?」
そういった前兆はあった・・・
「聖大陸プレイヤー達は魔大陸からの襲来を警戒しているスラね」
「見当違いだっつーの」
聖大陸プレイヤー達は魔族が聖大陸へ攻め入ってくるというイベントという事で盛り上がっているらしい。
ついこの前に大陸間戦争をしたばかりだろう・・・二番煎じはしないと思わないのか?
「インフィニティスペースオンラインの公式ページにも同じことが書かれていたスラよ。未開惑星を侵略せよって名目でスラね」
「つまり、この世界が標的にされているという設定で話が進んでいる様だな」
「問題はどうするかだな・・・」
「その話について詳しく教えてくださいませんか?」
「リヴァイア」
何時もなら湖の近くに住んでいるリヴァイアが魔帝に姿を現した。
「北に不穏な空気が流れ始めているのを感知しました・・・おそらく500年前と同じ現象が動き出す予兆かと思います」
既にゲームが繋がり始めているという事か?
「魔大陸全土にとっても無視できない事態です」
「俺達も持っている情報は少ないぞ」
「それでも話してください」
俺達は数少ない情報をリヴァイアへと伝える。
「既に先遣隊が・・・すぐに古竜と魔王に連絡をしなくてはなりませんね」
「向こうが手伝ってくれるのか?」
「500年前も魔蛇、魔王、古竜が力を合わせて撃退しました・・・その際配下の魔族達の犠牲は多かったです」
「交渉なら任せてちょうだい」
「ウチも行くっす」
「なら、古竜へはラースとスロウスに頼む」
「私とラースさんでイヴさんへ言いに行きましょう」
「わかった。ゲート」
それぞれの場所へゲートを開き4人が潜り抜けていった。
「あとは装備の問題か」
ドラゴンボーン装備ですら光線銃の攻撃は貫通した。
「ブラチライトインゴットが足りなさすぎる」
「ブラチライトインゴットとは何ですか?」
「侵略者達が身に着けている防具の素材スラ」
「そういえばブラチライトの剣でリヴァイアは倒されたんだよな?」
「昔の事ですか・・・たしか勇者の持つ剣が異様に堅かったですが」
「つまり魔蛇すら倒す剣の素材なんだ。使えそうだな」
「加工技術も分かったそうじゃねぇか」
「問題は素材が無さすぎるという事か」
「以前の戦いで手に入れたインゴットは10個だけスラ」
「それでしたら、氷の大地を掘ってみてください」
「掘る?」
「500年前の闘いで敗れた侵略者達が眠っています」
「・・・なるほど」
「掘るなんてめんどくさいスラ。僕がまとめて吸喰いしてくるスラよ」
「頼んだ。ゲート」
「俺様も行くぜぇ。もしかしたら奴らが居るかもしれねぇしなぁ」
「あぁ」
北の大地へとグラトニーとヴォルフを送る。
「リヴァイア、もっと情報が欲しい」
「答えられる範囲でお答えいたしましょう」
幾度かリヴァイアから500年前の情報を聞き出して魔大陸全域に危機が迫っている情報が展開される。
500年前の戦を知っているのは僅か十数名程・・・魔蛇のリヴァイアにダークエルフの族長達、古竜リウイとその他数名、魔王イヴとシモン。
その者達からも知っている情報を統合して次にくる侵略者に対する戦力を用意する事となった。
今の時代の魔族達は昔に比べて弱いとされたからだ。
500年まえの魔大陸では格が100越えする者達で溢れかえっていたそうだが、戦争時で敗れ去っていった。
そこに俺達の考えが加わった・・・敵の武器防具の再利用だ。
グラトニーが氷の大地もろとも食らって氷中に存在する残骸をインゴットに変えていった。
魔帝と魔都に居る鍛冶師に頼んでコレの加工をしてもらう。
魔帝はラースが筆頭にブラチライトインゴットの武器化、防具化について広めていく。
その補佐にグリードが入る。
工場に使われているベルトコンベアーや滑車付きクレーン車を魔都側へと広めて効率化を図る。
イベント開始日まで一ヶ月を切り、魔大陸全土が一丸となって戦いの準備をする。
「敵の光線銃を手に入れた?」
あちこちで起こっている問題を片付けている中でグラトニーから報告が上がってきた。
何度か偵察部隊がやってきているそうだが撃退している内にドロップしたそうだ。
コールで全員を呼び出す。
「これが向こうの武器か」
ブラチライトで作られた武器は武骨でテレビや動画サイトで見る銃と変わった感じはしない。
「多分、どこかにスイッチがあるっすよ」
カチンッ
キュィイイイン
スロウスが銃の横にあるスイッチか何かを押して高音が鳴り響いた。
ブォンブォンッ
銃の横に沿っていたラインが薄緑色に点灯し始めた。
「それ、大丈夫なのかしら?」
「ちょっと撃ってみるっす」
サッ
スロウスが空に向けて構える。
窓の外に向けてスロウスが銃を構える。
バシュゥンッ
光線が空に放たれた。
SF映画でよく見るレーザー銃だった。
「侵略者達はコレが標準装備なのね」
「勝てる者なのか?」
「その対策がブラチライトでしょう」
「スロウス、コレに撃ってくれないか?」
ブラチライトインゴットを離れた位置に置く。
「撃つっすよぉ」
バシュゥンッ
キィンッ
「弾いたっす!」
「使えるな」
「これならレーザーでも耐えられるな」
「至急、増産の指示を出しましょう」
「この銃の威力とブラチライトの有用性を教えに行くわ」
「そうっすね」
「頼んだぞ」
ラストとスロウスは魔王と古竜の交渉で役立ってもらっている。
「ブラチライト製だとラースとグリード位しか使えないか」
金属系装備は鉄壁騎士や八俣騎士の2人しか装備出来ないと思われる。
「僕も無形騎士スラけど防具は不要スラね。ブラチライト化」
シュゥウウ
ブラチライトと同じ色合いになるグラトニー。
「食べた物の特性を吸収しているスラ」
「つまりブラチライトそのものに変化できるか」
「それがグラトニースライムの特性である吸喰の力スラよ」
「なるほど」
こうして、着々と準備が整われていく。