117話「二次職か~ら~の~」
「これで、私達は完全な状態に戻ります。有難うございます」
リリがリヴァイアの元へと戻り、人魚の涙をのみ込む。
地殻変動は起こらなかったがリヴァイアの体が閃光に包まれた。
最後の人魚の涙を手に入れて全員で見守る事にした。
フワッ
顔はリリやララと同じだが衣服が豪奢となった姿だ。
水色の羽衣を周囲にまとい、体のラインに沿ってピッチリとしたドレス。胸元まで開いて見えそうで見えない際どい見せ方をしている。
手には7つの石が嵌った杖を持ち、頭には金色のサークレットを着けている。
薄い水色の長くサラサラの髪が風に靡く。
「皆さん、私の魔核を集めて頂き有難うございます」
「あぁ」
「ほえぇ」
「嫉妬しちゃうわね」
「う、うむ」
「目のやり場に困りますね」
「水の女神様スラか?」
「すげぇ美人じゃねぇか」
俺達が別々に反応をする。
≪エクストラクエスト:魔蛇復活が完了しました。SPが8増えます≫
「これで私も戦場に赴けますね」
戦場?
「どういう事だ」
「ハデス様達は北の大地で既に見ている筈です」
「あの、馬鹿固てぇ奴らか!」
「機械人と呼ばれる連中か」
「僕の攻撃で倒せたスラね」
「ちょっとぉ、説明が欲しいわぁ」
「3人だけが知っているなんてズルいっす!」
「うむ」
「どういう事ですか?」
俺とヴォルフが出会った北の大地の事を4人に話す。
「それって勝てる相手なのかしら・・・」
「中世が宇宙に行けそうな連中と渡り合うって事っすか?」
「運営は何を考えているのだ?」
「今に始まったことではありませんが・・・やりたい放題ですねぇ」
「前に話したと思うんだけど最近BEG会社が新しいVRMMOのゲームのβテストを開始しているみたいスラ。ゲームに出てくる最初期アバターがアレにそっくりスラ」
「あ~、チラッとだけトレーラーを見た事あるわね」
「同じゲーム会社だから同じデータを使いまわせるという訳か」
「舞台背景は未来のSFチックなFPSスラね」
「ファンタジー世界にSF世界の物を持ってこないで欲しいわ」
「同感だ・・・遠距離主体の装備で戦ってくる以上、近距離戦を得意とする俺達は木偶の棒と化すぞ」
「魔法だって効くのかしらね?」
「試してみるスラよ」
ゴトンッ
グラトニーの体から鈍い黒色のインゴットが吐き出された。
「ブラチライトインゴットっていうスラ」
少し前にも同じ名前を見た覚えがある。
「これは・・・俺には扱えないインゴットであるな」
鍛冶師レベル20のラースが見て呟く。
「魔都の鍛冶師に聞いてみるしかないですか?」
「うむ」
「早速、魔法が通用するか試してみるっす」
「行くわよ!」
ドドォン
2人の最大火力である6つのファイアーボールが直撃しても溶ける事すらなかった。
「殆ど無効化されたわねぇ」
「非常に堅いっすね」
「では、私がやってみます」
リヴァイアが杖を掲げて詠唱をする。
「アイスブレイド!」
ビィイイイ
杖の先から極薄の氷が形成されて剣の形となり地面を削りながらインゴットを撫でた。
ズドンっ
ブラチライトインゴットは斜めに二つに分かれた。
「六位階魔法でしたが何とか切れましたね」
「アレが六位階魔法・・・凄い威力ね」
「二次職になりたいっすね・・・」
「確か五の街に二次職になれるクエストがあると聞いたことがあるな」
「それを先に言って欲しかったわ」
「俺はインゴットの加工方法を聞いてみる事にする」
「私もお供しますよ」
「わかった。ゲート」
ラースとグリードの2人が鍛冶師の元へと向かい、俺達は五の街へと向かう。
『ハデス様、ラスト様、スロウス様、グラトニー様、ヴォルフ様。計5名に転職クエストを受ける事を受理致しました。転職クエストの詳細をお聞きになりますか?』
「もちろんだ」
『転職クエストとは一次職から二次職になる為のクエストとなります。転職に必要なアイテムをギルドに持ち込む事で条件がクリアされます』
「転職すると何が得でもするのか?」
『転職しますと現在の職業レベルは失われ、ジョブレベルは1から再スタートとなります。またレベルアップする為の経験値は一次職より多くなりますが成長率が違ってきます』
『以上が転職した後の説明となります。質問などが御座いますか?』
「・・・無いな。クエスト内容は?」
『フィフスより南下した所にあります広大な森、最奥地に「魔力の泉」という小さな泉が存在しています。泉のそばに自生しているラフランシアという花を人数分採取してきてください』
「それだけで良いのか?」
『無論、危険であることには変わりはありません。ラフランシアを好んで食べているユニークの存在が確認されています』
『森に生息しているのはワータイガー、討伐クエストも受けますか?』
「いや、急いでいるからな」
『畏まりました。お気をつけて』
五の街の南にある森へ向けてスケルトン軍を動かす。
道中に湧き出る虎を殲滅しながら進む。
ガサガサガサッ
グルァアア
森の中に入ってもスケルトン軍は進行を止めない。
ピッ
「あったな」
先行させていたローグが目的の魔力の泉を見つけ出した。
「近くにユニークモブが居るようだ」
泉の近くにラフランシアという花が咲いているが立ちふさがる様に巨大な樹木が立っていた。
【エルダーエント(Lv45)】
「ウチ等の出番っすね!」
「一気にカタを付けましょう」
「出番なんてないスラよ?」
「そうだなぁ」
スロウスとラストが意気込むがグラトニーとヴォルフは意気込まない。
「どうしてっすか?」
「ハデスさんに任せておけば簡単スラよ」
「どうせ、アレでやるんだしよォ」
どうやらこの2人は俺寄りの考えを持っている感じだな。
「顕現:リッチ」
ブワッ
数十体のリッチが空に出現する。
「魔法効果拡散。ダークボール放て」
リッチが日の光に焼かれ死ぬ前に魔法効果を拡散させて命令を下す。
「「「「「ダークボール・魔法連射!」」」」」」
リッチ達が一斉にダークボールをエルダーリッチへと発射し始める。
一つ一つが小さな爆発だろうが間髪入れず次々とダークボールが叩き込まれる。
ミシミシミシッバキィッ
僅か1分でユニークボスを撃破する。
「レベルが違げぇからなぁ」
「楽勝スラね」
「ウチ等の意味がないじゃないっすか」
「そうよ」
「こういう面倒なのは直ぐに終わらせられるならそれに越したことはねぇんだよ」
「そうスラね」
「さっさと集めていくぞ」
ラフランシアの花を人数分手に入れて五の街へと戻る。
『確かにラフランシアの花を受け取りました。これより皆様を転職いたしますので奥の間へお願いします』
受付嬢から案内を受けて、奥の扉の鍵が開く音が聞こえ俺達は向かう。
『一人ずつ、中央に進みください』
部屋はそれなりに広く中央部には幾何学模様が浮かび上がっていた。
「わくわくするっすね」
「そうね」
「俺様から行かせて貰うぜぃ」
ヴォルフが最初に転職を行うようだ。
『転職を開始します』
受付嬢の声に呼応し模様が光を放つ。
カッ
「お、成れたようだぜぇ。神速格闘士が新たな俺様の職業だ」
ヴォルフに続いて他のメンバーも二次職へと進む。
ラストは魅惑魔導士、スロウスは幻惑魔導士、グラトニーは無形騎士へと成っていく。
『それではハデス様、こちらへ』
≪ハデスは一次職の死霊術師から三次職の死の支配者に成る事が可能です。転職しますか?≫
YES
≪死の支配者になりました≫
「三次職?」
『皆様、一次職から二次職にならずに一定以上の格と条件が揃っていたので三次職になった模様です』
「そうか」
二次職になるつもりだったが、三次職になるという嬉しい誤算だな。
「戻るか」
「俺様ぁ、ドラゴンズアイランドでレベル上げしてぇんだけどよぉ」
「僕もスラ。キャラクターレベルのカンストがまだスラね」
「分かった。ゲート」
ヴォルフとグラトニーはドラゴンズアイランドへと送り俺達は魔帝へと戻る。