116話「秘宝奪還②」
「コチラから気配が」
ガシャガシャガシャッ
『ここは通さんぞ』
『我らがロイヤルガードがお相手いたす』
「ダークボール」
ドォンッ
『『『ぐはぁ!』』』
最下級魔法だったとしても今の俺の攻撃力を上乗せされれば弱い敵程度なら一撃で沈められる。
『あれは最上級闇魔術ダークネスフレイムじゃとぉ』
宮廷魔術師らしき人物が驚きの声を上げる。
「ただのダークボールだ!」
ゲシッ
ソイツを足蹴にして先へと進む。
「こちらです」
「もう、人質の必要はないな」
ポイッ
「ぐぅ!」
ナタリアをその辺の廊下に捨てて先を急ぐ。
ダダダダダダダッ
地下へと続く螺旋階段を駆け足で降りていく。
「ここの扉の向こうに強く感じます」
如何にも何かがあると思わせぶりな扉の前にやって来れた。
ギィイイイ
両開きの扉を開き、中へと入っていく。
部屋は広く最奥には階段が設置されており、高い位置に巨大な壺らしき物が鎮座している。
「あれが人魚の涙です」
壺の中心部に涙の形をした宝石が埋め込められている。
「これが結界の装置なのか」
『その通りだ魔族よ』
パチパチパチパチッ
壺の影から十数人の兵士と共に金髪碧眼の男が拍手をして現れた。
【アレクサンダ(Lv25)】
「我が妹を人質に取り数々の卑劣な真似をした行為、許されざる事だ」
妹・・・つまり第一王子という訳か?
シャキィンッ
「この聖剣ブラチライトの錆びにする」
「ハデス様、アレはリヴァイアを打ち倒した剣です」
「本物という事か」
「顕現:スケルトンロイヤルナイト」
ガシャガシャガシャッ
ロイヤルナイト達を呼び出して整列させる。
「飲み込め」
カタタタタッ
ロイヤルナイト達が前進を始める。
「邪悪なる魔族に屈するな!」
ウォオオオオ!!
鋼鉄製の鎧で固めた重装歩兵が前に出てくる。
「所詮はアンデットの集団だ。光属性の魔法を射込め」
『ホーリージャベリン』
『ホーリーバレット』
『シャインストーム』
3人の宮廷魔術師達から光属性魔法が放たれる。
「魔法効果拡散」
ブワァアッ
白い装備だったロイヤルナイト達が漆黒に染まっていく。
「やったか!」
『『『バカな!』』』
ロイヤルナイト達は魔法としてのダメージを負ったが属性ダメージは無効化した。
ガシャァンッ
互いの武器が防具がぶつかり合って戦いが本格的に始まった。
『なんて力強いんだ』
『スケルトンではないぞ!』
『我ら重装歩兵団が押されているだと』
ロイヤルナイト達の攻撃に耐えるも徐々に後ろに押され始める。
「魔力が続くまで攻撃を続けろ」
『『『ハッ!』』』
王子の命令で次々に光属性の魔法を放つ宮廷魔術師達。
「無駄だ! 顕現:リッチ」
ボワッ
俺の背後にリッチが5体現れる。
「「「「「ダークフレアロー・魔法連射」」」」」
ババババババッ
高い位置を浮遊していたリッチ部隊5体による魔法が発射された。
『あがぁああっ!』
『熱い、熱い!!』
『体が焼けるぅ』
ダークフレアアローの炎症効果で中の人間を焼き尽くす。
次々に死体となる重装歩兵団。
「魔術師団、アレを何とかしろ」
『ぎゃぁああ!』
アレクサンダの隣にいた魔術師にダークフレアアローが突き刺さり燃え始める。
「ひぃい!」
その悍ましい姿に腰を抜かしたアレクサンダ。
カシャァンッ
反動で聖剣が重装歩兵団の上を通り過ぎて俺達の方に滑り落ちてくる。
「これが聖剣か」
人間サイズに作られた聖剣を拾う。
「バカな!? それは聖なる加護を受けた剣だ。魔族が持てる訳がない」
【ブラチライトの剣】
攻撃力:750
素材①:ブラチライト鉱石×30
素材②:鋼鉄鉱石×20
・非常に堅い材質で作られた。
・錆びず、曲がらず、刃こぼれしない剣。
聖剣ではないよな。
「とりあえず、コレは貰っていくか」
「貴様!! テンペスト帝国の国宝を奪い去るというのか!」
「先にやってきたのはお前たち側だ。その人魚の涙は元々魔大陸側の宝・・・奪い返しに来て何が悪い」
「悪を打倒した先祖達の偉業を汚すというのか」
「そもそも魔王を倒してないんだよ」
「な、にぃ!?」
「お前たちの先祖が倒したのは魔蛇と呼ばれる魔大陸の西を統括する存在だった」
「ばかな!?」
「これが真実だ。貴様らは無関係な連中に喧嘩を吹っ掛けてあまつさえ宝を奪った強奪犯なんだ」
「信じられるか! 貴様の話には何の証拠も無いではないか!!」
「私がお話ししましょう。500年前に何があったのかを」
リリが一歩前に出て口を開く。
自分が何者であるかを話した上で、丁寧に事の顛末を説明していく。
それを聞いたアレクサンダは地面に膝をついて先祖たちがやってきた偉業がただの強奪レベルだった事に打ちひしがれている。
「これは返してもらうぞ」
ガッ
コンッ
人魚の涙を壺から外す。
ヴゥウウウンッ
壺から放たれていた結界が無くなっていく。
「人化」
再び人のサイズへと戻る。
王城の廊下はスケルトンキングだと低くて走りにくかったからな。
ザシュッ
聖剣を床に刺す。
「これは返す。あそこでゴネるようだったらコレを人質にするつもりだったんだがな」
「良いのですか?」
「あの剣は聖剣じゃない。それとも、再び攻め入られた時にリヴァイアは同じ事を繰り返すのか?」
「ありえませんね」
「なら、返すべきだ。俺達の目的は達成したのだからな」
「お前たちは一体何者なんだ!」
「魔族国が五天侯爵の一人ハデス」
「魔蛇リヴァイアの分身体リリです」
「行くぞ」
俺達は名乗ってからこの場を去る。
「遅いじゃねぇかぁ」
「退屈だったスラよ」
左腕が亡くなったヴォルフが気絶した剣聖を尻に敷き、衣服がボロボロとなったアナスタシアの上で待っていたグラトニー。
「お前らも容赦ないな」
「なに言ってやがるんだぁ。コレを見やがれよ腕が無くなっちまったんだぜぇ。強ぇえのなんの」
「僕の方は楽勝だったスラね」
「お前は遊んでいただけだろ!」
「少しずつ衣服が溶けるからお姉さんの動きが鈍くなっていったスラよ」
グラトニーの方が下衆いと思うんだが・・・
「ゲットできたのか?」
「あぁ、この通りだ」
人魚の涙を2人に見せる。
「後は帰るだけだな」
「この借りは必ず返すぞ」
ベルトライトが地に伏しながら呟いた。
「ヴォルフ、その剣を」
「どうするんだぁ?」
「襲いに来ると言ってるんだぞ。奪うに決まってるだろ」
「なっ!?」
「剣聖の剣だ、さぞかし高値で売れそうだ」
「ひでぇ事考えるなぁ」
「下衆いスラよ」
「命だけ見逃したんだから感謝するべきだろ。ゲート」
俺達は魔大陸へと移動する。