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114話「情報収集」

「西ですね」

「西か」


スケルトンドラゴンに乗って、リリが人魚の涙の方角を示す。


「一度降りたほうがいいな」


ここまで来るのに幾度の村や町を超えてきた・・・当然目撃されている。


遠くに見える巨大な都市・・・おそらくテンペスト帝国の帝都になる場所だろう。


その一つ手前に降り立って俺達は街へと入ろうと試みる。


『駄目だ。身分証を持たない者は入れない決まりだ』


門番に足止めされた。


俺一人の身分証ではダメだったようだ。


「かったりぃなぁ」

「待て待て」


ヴォルフが戦いそうで止める。


「他に入る方法は無いのか?」

『姉ちゃんがイイコトしてくれたら入れてやらん事もないがなぁ』


ニヤニヤしながらリリを上から下まで見る門番。


「俺様ぁ、こういう奴は嫌いだ」

「一旦出直すか」

「おい、良いのかよぉ」


ここで問題を起こされても困る。


「今日は野宿スラ?」

『いくら貿易都市の周囲だからと言っても安全じゃねぇぞ。それこそ不届きものが襲い掛かってきても文句が言えねぇ』

「なら入れろよ」

『規則上ダメだ』

「結局どうするスラ?」

「身分証明が必要なら取ってくるまでか」


俺達は一旦街を離れてゲートで七の街へ戻る。


ギィイッ


冒険者ギルドへと入る・・・相変わらず屈強な男たちが居る場所だな。


『いらっしゃいませ。冒険者ギルドにはどのようなご用件ですか?』


前回と違う受付嬢が笑顔で応対する。


「コレを売りに来た」


それはワイバーンの鱗数百枚だ。


『しょ、少々お待ちください。ギルド長を呼んで来てください』

『はい』

『そちらの素材と皆さんは応接間に来てください』


前と同じ様な騒ぎとなり俺達は応接間へと通される。


ギッ


俺、グラトニー、リリの3人が座って、後ろでヴォルフが立っている。


ガチャッ


「まぁた、お前らか・・・前回と顔ぶれが違うな」


ギルド長のオウロが入ってきた。


「今度はワイバーンだってな? 見せてもらうぞ?」

「あぁ」


サラッ


ワイバーンの鱗を机の上に広げる。


「確かに・・・ワイバーンだな。俺でも一度しか見たことがないぞ。お前たちが狩ったのか?」

「想像に任せる。コイツ等も冒険者ギルドに加入してくれ」

「お前の紹介だからな。準備をするから少し待て」


ヴォルフ、グラトニー、リリに銀色のギルドカードを渡される。


「後はコイツの買い取り金なんだが、ワイバーンの素材は何処の場所でも貴重な物だ・・・簡単に言えば殆ど買い取れないな」

「そうなのか?」

「狩れる冒険者がこの国でも1人か2人しか知らない。その2人がワイバーン狩りをするかと言えばしない・・・貴重品って事なんだ。つまりコレ一枚でも高値が付く・・・金貨50枚だ」

「高いな」

「正直、俺の権限でお前さん方をSランクにしてやりてぇ所だが王都の本部に問い合わせしなければならねぇ」

「とりあえず、買えるだけ買ってくれないか? 受付で出した以上噂が広まるしな」

「わかった」


数枚だけ買い取ってもらい俺達は七の街を出て再び商業都市近辺へと移動する。


『たしかに冒険者ギルドカードだな』


再びあの門番の元へと戻り、身分証明書であるギルドカードを提示した。


「これで、中に入れるだろう?」

『待て。持っているならあの時に出しているだろう。この短時間で入手するにしても早すぎるだろう』

「持っていた事を忘れていただけだ。普段は冒険者をしていないからな」

『だとしても怪しいなぁ・・・む、この紋章はアラド王国ではないか』


門番がカードの裏側に描かれた印字を見て驚く。


『貴様等、敵国であるアラド王国の手の者だな!』


バタバタバタバタッ


詰所から門番の兵士たちが武器を突き付けてきた。


「どうしてこうなる」

「敵国とおっしゃってますので・・・良い感情はお持ちではないようですね」

「っしゃぁ! 俺様の出番だなぁ!!」

「どうするスラ!」

「戦おうとするな! 大人しくしろ」


こんな所で騒ぎを大きくしてどうする。


ギュッ


縄を後ろ手で掛けられて詰め所に連行される。


ガチャンッ


牢屋に入れられる。


『明日には領主軍に引き渡すから、大人しく待っていろよ』


武器を取り上げられただけで終わり尋問などは一切なかった。


恐らく領主軍とやらに引き渡すまでが仕事内容なんだろう。


「どぉするんだよ、旦那ぁ・・・」

「僕なら簡単に脱出できるスラ」


ムニュォッ


体をスライム化させて鉄格子を潜り抜けようとする。


「そんな事しなくても何時でも脱出できる」

「ゲートスラね」

「それで、どうしますか? 気配は依然と変わらず西側に感じますが」

「領主に会えればチャンスがあるな」

「それまでの辛抱かよ・・・一旦寝るぜ」


ゴロンッ


ヴォルフが寝ころびログアウトしていった。


アバターは残るようだ。


『領主軍が到着したぞ・・・出ろ』


門番に促されて牢屋を出る。


『乗れ』


馬車の荷台に乗せられた鉄格子の箱に入る。


「まるで罪人扱いスラね」

「罪人扱いなんだろ」

「前途多難ですね」

「ヴォルフさんは寝たままスラよ」


幾らたたき起こそうとしても寝続けているヴォルフを門番が数人掛りで乗せた。


ガラガラガラッ


商業エリアを抜けて、貴族たちの住まうエリアに入り中央に聳え立つ砦のように頑丈な建物の前へとやってきた。


『降りろ』


領主軍の兵士に促されて降りる。


『ほほぅ、こやつらがアラド王国のスパイという奴らか』


如何にも小悪党という感じで身なりのいい人物が現れた。


装飾品にも金があしらわれて宝石が散りばめられていた。


『ほぅほぅ、スパイにしておくには勿体ないなぁ』

「グラトニー」

「了解スラ!」


ジュォオオ


グラトニーが両手の縄を溶かして拘束を解除する。


『なにっ!?』

『抵抗をしても無駄だぞ』


近くにいた兵士が驚いて抜剣する。


「ホイホイッ」


俺とリリの縄も溶ける粘液を飛ばして解く。


『領主さま。こちらへ』

『お下がりください』

『ほひぃ!』


小太りの男、領主が兵士たちに促されて下がっていく。


『囲め、囲め!!』


領主を守るように十数人の兵士たちが道を塞ぐ。


「だぁああ!」


ガシャァアンッ


寝ていた筈のヴォルフが起き上がり、無理やり鉄格子を曲げて出てきた。


『鋼鉄製の鉄格子だぞ!』

『なんて怪力だ』

「この状況ぉあ、やって良いんだなぁ?」

「あぁ。俺達は領主を追う」

「さぁ、きやがれ雑魚どもぉ!」


フッ


ダァンっ


ヴォルフが一瞬で兵士の間合いに入り地面に叩きつけた。


その動きに全員の視線が釘付けとなった。


「行くぞ」

「僕も残るスラよ」

「分かった」

「無理をせずに」


俺とリリの2人が兵士たちの壁をすり抜けて領主が逃げていった方へと向かう。


ダダダダッ


石作りの廊下では足音が響き渡りある程度の方角が分かる。


『領主様、こちらへ』

『ここは通さんぞ!』


俺達が追い付く頃には領主は頑丈な鉄扉の中へと入り兵士2人が阻む。


「私はどうしたら良いでしょうか?」

「歌えるか?」

「それ位でしたら」

「眠りの歌とかは?」

「では、やりましょう。ララァ~♪」


『な、なんだぁ』

『急に眠気がぁ』


一瞬にして兵士たちは眠りに落ちた。


「っせい!」


バキィンッ


取り出したドラゴンロングソードで扉の間に滑らせて鉄扉の閂を破壊する。


ギィイイ


『ひえぇえ!』


カタカタカタカタッ


壁に鑑賞用として備え付けられていたであろうサーベルを振るわせて待ち構えていた。


『来るな、来るァアア』


領主は錯乱気味にサーベルを振り回して俺に向けて突撃してきた。


「フッ」


グルンッ


サーベルを避けて、回し車で相手を地面に叩きつける。


『くそぉ、なんで私がこんな目に』

「別に殺す気はない。一つ聞きたいことがあってだな」

『私の暗殺する為じゃないのか?』

「情報が欲しいだけだ。帝都には人魚の涙という宝がある事を知っているか?」

『・・・なぜ、それを知っているんだ?』

「あるんだな?」

『あれは国宝だ・・・誰も手が出せない。手を出したが最後と思え』

「そうか・・・リリ」

「ララァ~♪」

『はへ?』


リリの歌声で領主は眠りに落ちた。


「脱出するぞ」

「はい」


ダッ


ガシャァアンッ


鉄格子付きの窓を突き破って空中に身を躍らせる。


「顕現:スケルトンワイバーン」


バサバサバサッ


スケルトンワイバーンが姿を現して乗り込む。


ダッ


ドシッ


「いぃタイミングだったぜぇ」


リリの後ろにヴォルフが乗り込んできた。


その肩にはグラトニーが乗っている。


「上昇しろ」


バサッ


ヒュンヒュンヒュンヒュンッ


下から矢が射込まれるがワイバーンの骨では普通の矢では傷つかない。


商業都市から脱出する。


「情報は手に入れたのかぁ?」

「あぁ。人魚の涙は国宝だそうだ」

「それが良い情報スラか?」

「国宝は何処にしまっていると思う?」

「そりゃ、手元に置いているか」

「頑丈な部屋スラか?」

「そのどっちかだろうな」

「帝都に近づいてきましたよ」


巨大な壁に囲まれた帝都へと近づいてくる。


これからが本番だ。

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