表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/122

107話「6人目」

『待ってスラ!』

「ん?」


後ろから声を掛けられて振り向く。


が、誰も居ない。


『下でスラ』

「銀色のスライム?」


ブジュルブジュルッ


某RPGシリーズに出てくる可愛い形のスライムではなく・・・粘液の塊がそこに居た。


『初めましてスラ。6人目のプレイヤーであるメタルスライムのグラトニーでスラ』

「6人目のプレイヤー?」

「そうスラ。先輩達の勇士はリアルで拝見させて貰ったスラ。ようやく魔都に来れるようになったスラね」

「たった一人でワイバーンをも倒してきたのか」

「辛いかったスラよ。でもこの体と能力で勝てて来れたスラ」


【グラトニー(Lv57)】


ソロだけでレベル57・・・どれだけの努力をしてきたんだ?


「魔都には来れたんスラけどグランドクエストが進まないスラ」

「魔王に会うイベントか?」

「そうスラ」

「魔王の配下にはなっているのか?」

「なっていないスラ!?」

「魔王の配下でもない怪しい者は流石に入れないと思うぞ」


そう魔王の配下でなくても魔都へは誰でも入れるが、魔王城は流石に入れない。


「どうすれば良いスラか?」

「定期的に来ていた魔王の配下に参加に加わる旨を伝えるか」

「あの長い道のりを戻るスラか!? 3ヵ月は掛かったスラよ」


その気持ちは非常にわかる。


「俺でも一度行ったことの無い場所にはゲートは使えないしな」

「五天辺境伯の力でなんとかならないスラか?」

「今は五天侯爵なんだが・・・仕方ない。ついて来てくれ」

「わかったスラ」


ブジュルブジュルッ


・・・


「御免スラ」


スライムがこんなに遅いとは思わなかった。


30分かけて魔都の門から500m進んだ程度だった。


「俺の肩には乗れるか?」

「良いスラか?」

「その方が早い」

「有難うスラ!」


ブワッ


銀色の粘液体が俺を覆うように広がった。


喰われる!?


咄嗟に身構えるもグラトニーは俺の鎧に合わせて張り付いていた。


「本物の金属鎧のようだな」


骨の鎧が金属質に変わったように感じた。


「メタルスライムスラからね」

「そうか」


これで早く着きそうだ。


門番に謁見の申し立てをして十数分待つだけで謁見が通った。


「帰るのではなかったのかの?」

「紹介したい人物がおりまして」


俺達五天侯爵は支配地域に戻ると伝えていたが、まさか戻ってくるとは思っていなかっただろう。


「それは何処におるのじゃ?」

「ここに」


ブシャッ


俺の鎧から銀色の粘液が零れ落ちる。


「お久しぶりスラ」

「おぉ! グラトニーではないか」


不機嫌そうだったイヴの表情が変わった。


「やっと会えたスラよ」

「使いの者が其方の支配領域が無くなっていたと聞いていたが生きておったか」

「えぇ、僕だけは生き残れたスラ。他の皆は残念ながらスラよ」

「であるか。今日は妾に会うためだけではなかろう?」

「もちろんスラ。今日は魔王様の末席に加えて欲しいスラよ」

「メタルスライムのグラトニーよ。我が傘下に入る事を許そう。貴殿には西端辺境伯の地位を与えよう」

「領地は無いスラがやるスラ」

「うむ。ハデスよ、こやつも主ら同様に西の地域出身であるからの」

「えぇ。心得ています」

「では、妾は政務が忙しいからこれにて」


バサッ


イヴは謁見の間を出ていった。


『スケルトンにスライム風情が爵位ですか・・・』


ボソッと呟いたつもりだが静かな謁見の間では際立った。


「今の発言は誰だ?」

『私ですが何か?』


やはり、あの時の文官以外にも俺達の存在は認められていない魔族も居るようだ。


『最弱の種族がたまたま魔王様に気に入られて威張り散らして虫唾が走ると前々から思っていたんですよ』

「最弱? 俺やグラトニーをそう呼んだのか?」

『耳まで可笑しくなったようですね』

「お前こそ目は節穴だな。俺やグラトニーに耳があると思っているのか?」


クスクスッ


『私をコケにして!!』

「お前が勝手に恥じを晒したんだろう」

『私に楯突いた事を後悔させましょう』

『ここは謁見の間、諍いはご遠慮願おう』


軍団長の男が割り込んできた。


『軍団長如きが話に入って来ないで頂きたいですね』

『この謁見の間はお客様を迎える場所でもある。魔王様の顔に泥を掛けるつもりか?』

『くっ、だが私は認めませんよ』


パシッ


魔族の男は手袋を俺に叩きつけてきた。


「決闘の申し込みスラ。どうするスラか?」

「どうするんだっけ?」

「拾えば了承の意味スラ」


ヒョイッ


「受けよう」


オォオオオ!


周囲で様子を伺っていた魔族達が声を上げる。


『此度の決闘。私が見届け人となろう』

『せいぜい後悔するが良い! 失礼します』


そう言って謁見の間を出ていく魔族の男。


『開始日時も決めずにいくとは・・・』


軍団長が呆れて呟く。


「なぁ・・・今から開始の合図を言って貰えば襲えるんじゃ?」

「それは卑怯というものスラ」

「どうするんだ。この空気」


謁見の間に流れる微妙な空気だ。


『スマンな、五天侯爵ハデス殿』

「俺は気にしないが・・・決闘のルールとか教えてくれないか?」

『あい、分かった。とりあえず解散としよう』


ザワザワザワッ


本日の謁見は俺達が最後という事で解散していく武官や文官の魔族達。


『こちらへ』


と応接室へと案内される。


『改めて自己紹介いたそう。私は魔王陸軍軍団長であるシモンと言う。普段は魔都の近辺警護をしている』

「五天侯爵が一人ハデス」

「最西辺境伯のグラトニースラ」

「本来なら決闘の内容などはその場で決めるべき流れなんだが帰ってしまわれたからな」


シモンは困った表情をする。


「基本的な決闘方法は?」

「公平を期する為に決闘を申し込まれた方が場所や日時を決めるのが習わしだ」

「つまり俺が決めて良い訳か」

「だから、こうして聞いているという訳だな」

「分かった。駄目な場所とかあるのか?」

「邪魔が入る場所は基本ダメだ」

「なるほど・・・この城か近くに演習場とかはあるだろ?」

「兵士たちの訓練の為の場所ならある」

「場所はそこで良いな。邪魔は入らないよな?」

「あの場所であれば」

「出来れば結界なんかが張れる場所が良いな。勢いあまって周囲に被害がでたら困るだろうし」

「で、あれば。闘技場を使うと良い」

「あるのか?」

「血気盛んな魔族が集まる都だからな。魔都の西側にある・・・そこでなら周囲に被害がでない魔法結界が張れる」

「ならそこでいいな。ルールはなんでも有りという内容でもいいか?」

「構わないが・・・細かいルールを決めておかないと後で何も言えなくなるぞ。相手はあのレーイド伯爵殿であるからな。何をしてくるか分からないぞ」

「レーイドというのか。周囲の反応からして問題児のような感じだったが?」

「魔王様の前では猫を被っている御仁だ。爵位もそれなりに高く周囲の同僚や上司も困り果てているのだ」

「ほぅ、今回の戦いで勢いあまって死んでしまって恩が売れそうだな」

「ハデスさん、それは悪い考えスラ」

「これもロールの一環だ」

「倒すではなく殺すと言うか」

「事故だったら仕方がないだろ? なぁ?」

「・・・」

「まぁいい。ルールは何でもありだ。賭けるものとかあるのか?」

「互いに同意があれば可能だが」

「なら俺の五天侯爵の爵位を賭ける、向こうも爵位を賭けてもらおう」

「なっ!? 魔王様から贈られた爵位だぞ!!」


バァンッ


「その内容は妾が許可するぞ!」


突然扉が開きイヴがニコニコ笑って現れた。


「ま、魔王様!?」

「妾が許可するぞと言ったのだ」

「は、ハハッ! 魔王様の命であれば」

「クククッ。いつまで妾の目を誤魔化し続けているのか見物であったがお主が引導を渡すのであれば面白いのぉ」

「知っておいでで?」

「ここは妾の城ぞ。その気になれば誰が何処で何を話したかも妾の耳に入ってくるぞ」


暗殺部隊か・・・何かを抱えていると言った感じか?


「爵位を賭けた決闘を許して頂けるのですね?」

「口調」

「え?」

「その口調をやめい。先ほどから使っていた口調に戻せ」

「魔王様、それは」

「嫌じゃ! 妾に対してもあの口調で接するのだ!!」


なんだか幼児退行してないか?


「妾はもう飽き飽きしているのだ」

「はぁ、お嬢の我がままが出てしまった」


お嬢?


「いい加減疲れたのだ。偉そうに演技するのも肩が凝るのだ」


つまり、魔王イヴは魔王としてのイメージを崩さないように演技をし続けていたのか。


「何時まで続ければよいのだシモン?」

「前々から仰ってますが、次の王を継ぐ者が現れない限りは続けなくてはならないと」

「むぅ・・・妾の伴侶となるに相応しい者はここ数十年現れておらんではないか」

「魔王様と力を拮抗する相手となれば伝説の勇者くらいかと」

「確かに伝承通りであれば妾と相対できる者は勇者と言われておるが、魔族の中にはおらんのか?」

「難しいかと・・・魔大陸は広く探し出さねば」

「残念じゃ・・・ハデスよ、妾の後を継ぐ意思はあるかの?」


いきなり爆弾を落としてきたぞ。


「新参者の俺が魔王に? 魔族から反乱されるだけだ」

「それを抑え込む力があれば大丈夫じゃ!」


魔王だからこそ言えるセリフなんだよな。


「流石に軍規模の反乱は抑える自信がないんだが」

「軍単位で話し始めている時点で自身の強さを語るとは面白いのぉ」

「まぁこの辺で話を戻してくれ。決闘については3時間後で問題ないか?」

「向こうの了承次第だが」

「逃げるな腰抜けと付け加えておけ。こっちは大事な時間を割いてやっているだからな」

「ハハハハッ! プライドが高いあ奴の事だ応じるとも。3時間後を楽しみにしておるぞ」

「一応伝えておこう。その間何処におられるか?」

「城下町に居る。闘技場とやらも見ておきたいしな」

「決まったら伝えよう。貴殿は目立つから分かりやすいだろう」

「あぁ」


話し合いは終わって俺とグラトニーは城を出ていった。


「大丈夫スラか?」

「何がだ?」

「相手は城に勤めている魔族スラよ? レベルもそれなりにあったスラ」

「所詮は個だ」

「なんでもアリにしちゃったスラ。ルールなんてないような物スラよ?」

「だからだよ。なんでもアリなら俺が一人で出るとでも?」

「どういう事すら?」

「グラトニーお前も出るんだよ」

「僕も出るスラか!?」

「たった一人で魔都まで来れた実力を持つなら大丈夫だ。最初は俺の鎧に扮して欲しいな」

「分かったスラよ」

「相手は何処までやってくるかだな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ