窓を開いた男
男の物語は、シンプルを極めた。
巷の喧騒を余所に、ゆったりと椅子に座り、
読み始めたばかりの小説の頁をめくり
物語の世界の窓が開かれようとした時、
男は、それよりも前に
開かれた窓の向こうの景色が
目の前に広がっているのを見た。
男は、誰にも気付かれずに
その窓を閉めようと
そっとジッパーを引き上げた。
男の物語は、ただそれだけだった。
今、世界は物語を必要としている。
行き場の無い、遣り場の無い状況の中で
物語だけが人々の心を
解きほぐすに違いない。
男は、自分の「窓」は
世界に向かって開かれたも同然だと
考えた。
それが例え愚にもつかないものであったとしても。。。