あのトンネルが、ただしい道だった!
・・・しかし、穴を掘って、いったいどこへ脱走しようとしていたのか?
秘密基地にしようとしていたのだろうか。
そうだ、グループの友人たちの秘密基地にするというのが目的のひとつだった。
まず垂直に穴を掘る。そしてそこに空間を確保する。空間の頭上には板で蓋をして土をのせてカムフラージュする。
ここは映画と同じだ。
そして地下空間をベースにして、横穴を掘ってゆく。脱走のための横穴を掘ってゆく・・・
「西山、あのトンネルはいったい、どうなったんだろう?」
青空に浮んだまま、課長は西山に追憶の問いかけをする。
みんなで学校の帰り道、その秘密の大脱走計画のため、必死で穴を掘った。
何週間も、その仕事をした。
穴は小学生の背丈の倍ほどにもなった。
梯子が必要になり調達した。そして、また掘った。
今度は横へ。その空間を広げるために。
「あのトンネル・・・」
バイクは青空に飛んだままだった。
「西山。まさか。あのトンネルに、つっこもうっていうのか」
西山が、背中でうなずいたように思った。
このさい、思い出のすべてを総動員ってわけか。
あのトンネルのことなんて、今、急に思い出しただけなのに。
「そんなことが、できるのか?」
でも、それは意外に大事な思い出なのではないか?
とにかく、あのトンネルは、あのあとどうなったのだろう・・・
「忘れたかい?中学受験で忙しくなって、まあちゃんは計画を休止したんだ」
そうか。
そうだったな。
でも、また、再開するはずだったのに。中学に合格して、それからまた勉強で忙しくなって、みんなとも別れ別れになって・・・
「でも、俺はまだ堀り続けた。
学級会で助けてもらって嬉しかったから、トンネルを完成させて、まあちゃんに見せてやろう、なんて思ってね。
まあちゃんの知らないところまでトンネルは進んだ。ここらへんまで来てるはずだ」
「・・・・」
「いいかい、俺、もう一度、力いっぱいエンジンを吹かす。
今、もう一度、ばく進するよ。そしたら、あのトンネルに突っ込む。
俺が行けるのは、そこまでだ。
そこから先は、まあちゃん一人で放り出される。吹っ飛ばされるからね」
「・・・・」
バイクが青空を飛んでいたのは、ほんの一瞬のはずだった。
その間に走馬灯のように思い出がよみがえった。
死ぬときと同じように。
「じゃあ、いくよ。サンキュウ、まあちゃん。また会おうな!」
エンジンが唸った。
本当に凄まじい、エンジンの爆音だった・・・
・・・つづく




