表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺ちょっとガンだから  作者: 新庄知慧
31/39

あの世に行く前の、ああ、なんていう混雑、混乱だあ。。。


「いっぱい、いるなあ。いやになる。げっぷが出るくらいだあ。死んだ胎児なんかまでいるのかな、どうでもいいことだけど」


「ああ、いてますよ。子供プール岸にまとめて泳いでるんと違いますか」


「そうなの。子供プールね。プールもあるのか・・・あれ、今、下に見えたひと、見たことがある外人だ。あれは」


「ああ、あれ。ケネディさんと違いますか。わても学がありますやろ」


「ケネディ。知ってるよ。彼は僕より1歳若くして死んだんだ。そうか。そんな人も、そりゃあ、死んだんだから、いるね」


「そうね、歴史の本にでてる人もいっぱいいるね。でも、若くて暗殺されたり戦死したりした人なら、元気やけどね、病死とか大往生したような方は、死ぬ時に老人や病人だったからあかんね、元気ないね。死んだその姿でここにいるからね・・・」


「確かに老人ばかりだね、ここは!」


「そうでんな。特に最近の日本ね。寿命がのびまして、日本から来る人は、もう、爺さん婆さんばかりね。でも最近は自殺者が増えててね、中年も多いかいな・・・」


「でも、地球レベルでみると、人が死ぬ年齢は、もっとぜんぜん若いよ」


「そうや。占い婆さんも、そういいよりますわ」


「占い婆さん。またか。君の知り合いかい?僕は何だか予感がするんだが。その婆さん、僕も知っている人かも知れない・・・」


そのとき、地上から呼びかけてくる大声が聞こえた。まあちゃあん!と叫んでいた。そこは、人影がまばらになったグリーンの空き地だった。


「呼んでますな。ここらが、まあ、ヘリポートっちゅうわけです。おりまひょか」


ごきぶりは高度を下げた。ぐんぐん地上が近づく。


こちらを呼んでいる男の姿がはっきりする。グロテスクなゴム製マスクをすっぽりと被っていた。


「西山か?」 地上に降り立った課長は、マスクの男に問いかける。「エッチの、西山くんか?」


その男は震えていた。震える手でマスクを剥ぎ取る。それはやはり西山。


「まさか罠にかかった奴がまあちゃんとは思わなかったからよ、俺。社長のいう通り演技したわけだがよ、ま、まあちゃん、殺されちまうのは耐えられなくてよ、社長にとびかかったんだ」


「西山・・・。でも君が社長に飛びかかったおかげで、爆弾投げられてよかったよ。しかしおまえ、あんなろくでもない連中に雇われる身の上になってたのか」


「俺だって嫌だったけどよ、わかるだろ、俺だぜ、俺のことだから、将来はろくでもないって、まあちゃんも、わかってただろ?クラスの学級会で守ってくれたのは覚えてるし感謝してる。でも、どうせ、俺のことだ、そんな親切をしてくれたって、どうせ、やっぱり駄目なんだ・・・」


涙ぐまんばかりの西山だったが、課長は知っている。


 あの闘争的な学級会の直後、ほんの少しの間は、西山はまじめになったのだ、スカートめくりもやめたのだ、勉強もしたのだ、でも、それが長続きしなかったというだけなのだ・・・


「まあいいさ。どうせおたがい死んじまったのだから。あの爆弾で」


遠い目をして課長はゆったりと肩をすぼめた。


「死んだ?」 西山が頓狂に声をあげた。「そうなのかな。でも、まあちゃんが死んじゃああいけねえと思うけどな」


ごきぶりが、口をはさんだ。


「そら、わしもそう思うけど。しかたないんとちゃう?」


いってから、なぜか意味ありげな目で西山をにらむ。西山が少し驚いた。


「うわ。このごきぶり、でかいだけじゃなくて、喋るのか。まあ、いいや。そういうのもいるか・・・色々なのがいるからな、ここには・・・」


「こら失礼。ここは人間の岸やし私のいる所やないね。じゃあ、私、これで失礼しまっさ。さいなら・・・」


ごきぶりは不器用に羽根をはばたかせて飛び立とうとした・・・


「ちょっと待ってくれ、気になることがある。君のいってた占い婆さんってのは、どこにいるんだい」


「ここらのどっかにいてますよ」


「どっかって、どこだい」


「ホラ、その遠巻きにしてる連中のどこかや。まあ、時間なんて無限にあるわけやし、ないようなあるような時間やし、ぷらぷらしてたら、そのうちに会えますがな」


 ごきぶりは高度をあげた。「ひまなときには遊びにきますさかい、そんときはよろしく。さいなら・・・」


飛び去るごきぶりを見上げながら、西山が声をひそめていった。


「まあちゃん、それじゃあ、行こう」


「どこへ?」


「案内したいところがあるんだ」


西山は、やや緊張の面持ちだ。


・・・つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ