740話 本当の力
ゴウッ!!!
轟音。
そして暴風。
最後に斬撃が繰り出される。
「こっ……のぉ!!!」
ほぼほぼ勘でクサナギを振る。
それは正解だったらしく、刃と刃が激突する音と感触が伝わってきた。
即座にクサナギで薙ぎ払うものの……手応えはない。
ヒットアンドアウェイ。
すぐに離脱したようだ。
「これ、厄介すぎるよ!?」
「あたしのブレスで辺り一帯を薙ぎ払えば……」
「ダメだよ!?」
「ボクの血の弾丸をバラまいて……」
「それもダメ!? タニアが増えた!?」
「どういう意味よ!?」
今はまだ、多少の余裕がある。
こうやって軽口を叩くこともできるけど、それもいつまで続くか。
「みんな、それぞれの死角をカバーしつつ、一箇所に!」
背中を合わせるようにしつつ、一点に集中した。
これなら死角外からの攻撃を防ぐことができる。
ただ、死角でなくても、あれだけの速度の突撃を見極めることができるかどうか……かなり怪しいところだ。
なによりも根本的な解決策を見つけないと、どうしようもない。
どうする?
どうすればいい?
「……」
先程からライハは無言だ。
同じく、この危機的状況に焦っていると思ったのだけど……
でも、実際は違った。
彼女は悩んでいたのだ。
「アニキ」
ライハはとても真面目な顔をしてこちらを見た。
「打開策、あったりするっすか?」
「……なくはないけど、どれも賭けになるな」
「成功率は?」
「よくて五割」
高いと思うかもしれないが……
でも、戦場で五割なのだ。
失敗したら死。
それで五割というのは、かなり厳しい数値だ。
「やばいっすか?」
「そうだな……正直に言うと、けっこうまずい状況だ」
攻撃が通じないという点ではアルテラと似ているのだけど……
ある意味で、ゼクシードはそれ以上に厄介だ。
その姿を捉えることはできなくて、超高速の一撃を叩き込んでくる。
今のところなんとか防いでいるものの、いつまで続くか。
緊張と集中が途切れたらアウトだ。
「……動きを止めることができたら、どうっすか?」
「それならなんとかなるけど……できるのか?」
「……はいっす」
そう答えるライハは、なぜか悲壮な顔をしていた。
「自分、アニキが大好きっす」
「え?」
「出会って間もないけど、魔族の自分に優しくしてくれて、差別しないでくれて……あと、やっぱり助けてもらって嬉しかったっす。自分が今ここにいるのは、アニキのおかげです」
「ライハ?」
「あと、みんなも大好きっす。一緒にいると楽しくて、心がぽかぽかして、気がついたらにっこり笑っていて……大好き、っていう気持ちがあふれるっす」
「にゃ……ど、どうしたの?」
「そうよ。なんか、こう……」
「お別れみたい」
「そう……かもしれないっす」
ライハは泣きそうな顔をして……
でも、なにかを決意したかのような強い顔をして、一歩、下がる。
「アニキ、みんな……今まで、騙しててごめんなさいっす」
「騙した? それは……」
「自分の能力は影を操ること……あれ、ウソっす。あれは兄ちゃんに教わったことで、自分は、まったく別の能力を持っているっす」
……ちょっと待て。
今、色々と聞き逃がせない情報が出てきたような。
「怖くて怖くて怖くて……でも、アニキやみんながどうにかなるなんて、耐えられないっす。だから……自分はっ!!!」
ライハの瞳が輝いた。
その翼が一回り大きくなる。
角も大きくなり、槍のように鋭く伸びていく。
髪の色も変わり……
その姿は、いつかホライズンで戦った魔族と似ていた。
人の姿は保っているものの、その翼や角は異型と言うしかない。
「……これが自分の覚醒っす」
つまり、ライハの全力ということか。
「そして……」
ライハが彼方に手の平を向ける。
「雷閃!」
カッ! と、一瞬、世界が白に染まる。
雷撃が放たれて、
「がっ!?」
視認できなかったゼクシードを撃ち落とした。
「……」
ライハは静かな瞳でゼクシードを見る。
その体は、バチバチと放電されていた。
「自分は、ライハ……雷を司る、四天王候補の一角っす」




