702話 故郷へ
ライハと出会うという、予想外の展開が起きたものの……
最終的にサクラの問題は解決した。
これで、心置きなく旅立つことができる。
「じゃあ、クウとコウをお願いします」
「はい、わかりました」
出発の前、冒険者ギルドに寄って、クウとコウをナタリーさんに預けた。
危険が待ち受けているかもしれないから、さすがに連れていくわけにはいかない。
相談したところ、ナタリーさんは笑顔で預かってくれることに。
「ノキアさんも、留守をお願いします」
「はい、任せてください」
いざという時の連絡役として、ノキアさんにも残ってもらうことに。
そうやって全ての準備が終わり……
俺達はホライズンを出発した。
――――――――――
今回は馬車の旅だ。
精霊族の里を経由するという手は、今回はなし。
南大陸で……ラウドネアでなにが起きているかわからない。
もしかしたら、とんでもない敵が待ち構えているかもしれない。
そんなところに精霊族が使う門を繋げるわけにはいかない。
繋げた瞬間、攻め込まれる可能性があるから……
今回は馬車を使うことにした。
ただ……
「「ぐへぇ……」」
馬車に弱いソラとルナは、一時間もしないうちにダウンしていた。
最近、馬車に乗っていなかったせいか、前よりも馬車酔いがひどくなっているみたいだ。
「二人共、大丈夫か?」
「ソラは……もう、ダメです……あぁ、天国が見えて……」
「くっ、我はこのようなことに屈しない……いや、ダメなのだ、屈するのだ……もうどうにでもしてほしいのだ……」
かなり言動が怪しい。
「うーん、どうしよう?」
ラウドネアまでけっこうかかる。
その間、ずっとこの状態が続いたら、さすがのソラとルナも参ってしまう。
下手をしたら、体力が落ちたことで病気にかかってしまうかもしれないし……
「レイン」
くいくいと、リファが俺の服を引っ張る。
「ボクに任せて?」
――――――――――
「わぁ!」
「これは快適なのだ!」
漆黒の狼の背中に乗るソラとルナ。
さきほどまでとは打って変わって元気になって、笑顔を浮かべている。
二匹の狼はリファの眷属だ。
馬車がダメなら狼の背中に乗ってみては? と提案されたのだけど……
見事に大正解だったらしい。
「むう」
サクラが微妙な顔に。
「どうしたんだ?」
「僕の背中、ダメ?」
妙なライバル心を覚えているらしい。
「え? でも、サクラはもう人の姿に……」
「狼に戻れるよ? 自由自在」
「そうなのか?」
「切り替え、任意。簡単!」
……後日、シグレさんに聞いた話なのだけど。
牙狼族は、一定の年齢になると人型になる。
ただ、任意で狼の姿に戻ることもできるらしい。
でも、それをする牙狼族はほとんどいないという。
人間から身を隠すために人間の姿をとる。
そんな自衛本能が影響しているから、一度人型になれたら、ずっとそのまま、というのが基本らしい。
「なら、自分を乗せてくれませんか!?」
話を聞いていたライハが、目をキラキラと輝かせつつそう言った。
「ライハ、僕、乗りたい?」
「はい! 一度、乗馬をしてみたかったのであります!」
「僕、狼。ぶぅ」
「ごめんなさいです。乗狼をしてみたかったんです」
造語を作らないでくれ。
混乱する。
「いいよ」
「やったぜ!」
サクラは馬車の外に降りると、ぼふんっと狼になった。
その背中にライハが乗る。
「おおおおぉ、これは素晴らしいですな!」
「オンッ!」
褒められたと感じたらしく、サクラはうれしそうに鳴いた。
そのまま、ライハを乗せて馬車の周りを駆ける。
平和だなあ。
「ねえ、レイン」
ふと、カナデが隣にやってきた。
気遣うような視線をこちらに向けて、そっと尋ねてくる。
「……大丈夫?」




