697話 色々なことが一度に
ほどなくしてタニアがやってきてくれた。
馬車代わりにして申しわけないのだけど、ドラゴン形態に戻ってもらい、サクラの両親を背負ってもらう。
そうでもしないと、さすがに運ぶことができないんだよな……
そうやってホライズンへ戻り……
それと、ちょうど良いタイミングでソラとルナが精霊族の里を経由して、アルさんとシグレさんを連れてきてくれた。
二人にサクラの両親の容態を診てもらい……
一方で、ソラとルナ、ティナにサクラの体を診てもらった。
闇落ちしたこと。
人型になったこと。
どんな影響が出ているか調べるためだ。
今のところピンピンしているが、実は……ということもある。
そのため、ソラとルナに魔法を使って体を調べてもらい……あと、そこそこ医療の知識を持つティナに診てもらう、というわけだ。
もちろん、後でシグレさんにも診てもらうけど……
今はサクラの両親の方が重症なので、そちらを優先している。
そうやって慌ただしい時間が過ぎて……
あっという間に一日が過ぎた。
――――――――――
「おはようございます」
「うむ、おはよう」
リビングに移動すると、アルさんとシグレさん、ノキアさんの姿があった。
あの後、ノキアさんも合流して、色々と手伝ってくれていた。
三人共ちょっと疲れた様子で、ティナが淹れたコーヒーを飲んでいる。
「もしかして徹夜ですか?」
「うむ……さすがに老体には堪えるわい」
「今回のようなケースは初めてじゃからのう……時間がかかってしまったのさね」
「なかなか大変でしたね」
「すみません、いきなり無理を頼んで……」
「なにを言う」
シグレさんが俺の手を取り、深く頭を下げる。
「し、シグレさん……?」
「ありがとう。レインのおかげで息子と娘を取り戻すことができた……本当にありがとう」
「いえ、そんな……」
サクラが自力で見つけたようなものだから、俺は大したことはしていない。
ちょっと力を貸しただけだ。
困る俺を見て、アルさんが小さく笑う。
「レインよ、素直に感謝を受け取っておくのじゃ。それだけのことをしたのだからな」
「でも……」
「我らも探していたのじゃが、なかなか見つからなくてな。しかし、レイン達は短期間で見つけてみせた。うむ、妾も褒めてやるのじゃ。よしよし」
「えっと……」
今度はアルさんに頭を撫でられた。
子供扱いされている感じで、ちょっと複雑な気分だ。
いや、まあ。
嫌じゃないんだけど、少し恥ずかしい。
「ところで、二人がここにいるっていうことは……」
「ああ、あの子達はもう問題ないよ」
「よかった……」
サクラの両親が無事とわかり、安堵の吐息をこぼした。
ただ、シグレさんの表情は少し曇っていた。
「衰弱は激しいが、命に別状はない。ただ……妙な実験をされていたせいか、その後遺症が残っている状態でのう」
「そんな……治療方法は?」
「ある……が、短時間でというわけにはいかぬ。里へ連れ帰り、じっくりと療養するしかなかろう」
「そうですか……」
そうなると、サクラも一緒に里に戻るのかな?
寂しいけど……
でも、仕方ない。
子供は親と一緒にいるべきだ。
「それで、サクラのことなのだけど……」
「はい。一緒に連れて行ってあげてください。その方がサクラも……」
「やだ!」
振り返るとサクラの姿が。
話を聞いていたらしく、ぷくーっと頬を膨らませている。
「僕、みんなと一緒にいる! レインと一緒にいる!」
サクラはタタタと駆けてくると、俺の腰に抱きついた。
「しかしのう……」
「お父さんお母さん、心配」
サクラの尻尾がしゅんと垂れた。
一見すると元気だけど、やっぱり、両親のことをとても気にしているみたいだ。
「お父さん、お母さん。傍にいたい」
「なら……」
「でも、ダメ」
ぎゅっと、俺に抱きつく力を増す。
「レイン、助けてもらった。たくさん助けてもらった。僕、今度はレインを助ける」
「む」
「恩、返す。それが一番。お父さんお母さん、そうしろって言う」
「むう……」
シグレさんはとても困った顔に。
本当はサクラも一緒に戻ってきてほしいのだろう。
危ないとか安全だからとか、そういう話じゃなくて……
両親が微妙な状態なので、一緒にいるべきだと判断したのだろう。
でも、それでは義理を欠いてしまう。
それはまずいだろう、と考えているようだ。
「サクラ。俺のことは気にしないでいいよ、両親と一緒にいた方がいい」
そう言うと、サクラは泣きそうな顔に。
「レイン、僕、いらない……?」
「え? い、いやいやいや。そんなことはないから!」
「本当……?」
「できるなら、サクラとずっと一緒にいたいさ。でも、両親が大変な状況なんだ。一緒にいた方が……」
「ゆっくり休むだけ。僕、いなくても大丈夫」
「それはそうだけど……」
「お父さん、お母さんに怒られる。レインに恩返し。あと……」
サクラは少し頬を染めて、じっとこちらを見る。
「僕、レインと一緒にいたい。いる!」
「……サクラ……」
「くくく」
アルさんの笑い声が響いた。
「シグレ、レイン。お主らの負けじゃ。サクラの好きにさせるがよい」
「しかしのう……」
「両親と一緒にいた方がいいという考えはわかるが……しかし、サクラが言うように、ここで離れれば義理を欠いてしまうぞ? そもそも、サクラ自身がレインと一緒にいたいと言っているのじゃ。その想いを優先するべきじゃぞ?」
「むう」
シグレさんは苦い顔に。
それから迷うような顔になって……
最終的に、なにかを諦めたような顔をして、小さな吐息をこぼす。
「レインよ。迷惑をかけるかもしれぬが、もうしばらく、サクラを頼めないかのう……?」
「迷惑なんて、そんな……でも、いいんですか?」
「アルが言うたように、サクラの気持ちが大事じゃからのう……サクラ、それでよいな?」
「うん!」
サクラは大きく頷いた。
尻尾がぶんぶんとはち切れんばかりに振られている。
そんな様子を見たら、俺が嫌とは言えない。
「わかりました。サクラのことは任せてください」
「レイン、好き!」
「うわっ」
サクラが思い切り飛びついてきて、耐えられず倒れてしまう。
そんな俺の上に乗り、サクラは頬をスリスリとこすりつけてきた。
「くっくっく……娘達に新しいライバルができたかもしれぬな」
アルさんが悪い顔で笑うのだった。
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