687話 再会と変貌と
道は三つに分かれていた。
どれが正解なのか?
あるいは、全てが正解なのか?
現時点では材料が少なすぎて判断することができない。
「レインさま、どうされますか?」
「……少し危険だけど、分かれて行動しよう」
異変が起きていることは、すでに敵は察知しているはず。
対抗しようとするのならいいんだけど、逃げようとしたら厄介だ。
間違った場所を探している間に逃げられてしまう、という可能性もある。
「俺は真ん中を行くから、イリスとティナは右手に。フィーニアとサクラは左手を頼む」
「了解やでー」
「オンッ!」
「絶対に無理はしないように。少しでもまずいと思ったら、迷わず撤退してくれ」
そう言い含めて、俺は真ん中のルートを進んだ。
イリスが放った霧は相当なところまで侵食しているらしく、未だに周囲は白一色に染まっていた。
そんな中、俺は迷うことなく、壁にぶつかったりすることもなく進むことができた。
それを可能としているのが……
「シュルルル」
肩に乗る蛇が道を教えてくれる。
蛇は熱を感知できるから、こういう場面では大活躍だ。
空間把握に関しては、俺ががんばればいい。
ビーストテイマーとして長く活動しているから、そこは、ある程度勘で補うことができる。
「くそっ、なんなんだこれは!?」
しばらく進んだところで、そんな悪態が聞こえてきた。
さらに近づいてみると、研究員らしき男が右往左往していた。
突然のことに驚いて、対処できず、混乱状態に陥っているようだ。
こちらには気づいていない。
身を低くして、そっと研究員に近づいていく。
そして背後に回り込んで……
「動くな」
「ひっ!?」
研究員を羽交い締めにした。
カムイの刃を突きつけて、低い声を叩きつける。
「下手なことをすればどうなるか、わかるな?」
「わ、わかった……な、なにもしないから殺さないでくれっ」
「それはお前の態度次第だ」
なんか、悪の組織の人間になった気分だった。
「ここでなにをしている?」
「わ、私は施設の研究員で、雇われてここに……」
「聞き方が悪かったな。ここでなにを研究している?」
「そ、それは……」
「言え」
軽く薄皮を切る。
これ以上のことはさすがにできないから、これで心が折れてくれるといいのだけど……
「ひぃっ!? わ、わかった! わかったからもうやめてくれ!」
よかった。
無事……という言い方も変だけど、心が折れてくれたみたいだ。
「わ、私達は、その……最強種と魔族の研究をしている」
「どんな研究だ?」
「その力の源を分析したり、能力を研究したり……あ、あと……」
「あとは?」
「……その力を取り込んで自分のものにする研究だ」
キメラ。
ラインハルトの言葉を思い返した。
「キメラの研究か?」
「し、知っているのか!?」
正解のようだ。
キメラの研究をしているのなら、ここにサクラの両親が囚えられている可能性が高い。
その他、別の最強種や魔族もいるかもしれない。
「最強種は捕まえているのか?」
「つ、捕まえている」
「種族は?」
「そこまでは、その……わからない。見たことのない珍しい種族だから、よく知らないんだ」
呀狼族は人間との交流を断っている。
故に、その存在を知らない者がほとんどだ。
ますますサクラの両親の可能性が高くなってきた。
「どこにいる?」
「こ、この先の……100メートルほど進んだところにある、封印区画の最奥だ」
「よし。ご苦労さま」
「がっ!?」
カムイの柄で研究員を殴り、気絶させる。
必要な情報は引き出せた。
案内させるという手もあるんだけど、暴れられたり逃げられたりしたら面倒だからな。
「よし。さっそく封印区画とやらへ……っ!?」
瞬間、ゾクゾクっという悪寒が背中を駆け抜けた。
カムイを構えて、いつでも動けるように足に力を込める。
「誰だ!?」
ほどなくして霧が晴れて……
「やあ、久しぶりだね」
「アリ、オス……?」




