685話 落ち着かない
半日が経った。
その間、ティナに二度、偵察に出てもらったのだけど……
研究所は思っていた以上に広く、また、警戒も厳重だ。
重要な情報を掴むことはできず、情報収集は翌日へ持ち越すことに。
ティナと合流した後、後方へ。
フィーニアとイリスが作っておいてくれたレストスペースで休む。
テントが二つ。
大きなテーブルが一つ、イスが三つ。
それと、サクラ用の野外ベッド。
それらが焚き火を囲むようにして配置されていた。
「なんか本格的だな」
「キャンプに来たみたいやなー」
「ゆ、ゆっくり休むためには必要かな、って思って……」
「わたくし、こういった細工も得意なので。ふふ、とても家庭的だと思いません?」
妙なアピールをしてくるイリスはスルーで。
「じゃあ、夜行性の動物と仮契約をして、周囲の警戒を……」
「その必要はありませんわ。魔物除け、動物除けの結界を展開しておりますわ。人払いや視界を遮る効果もあるので、よほどのことがない限りはバレないかと」
「なんでもありだなあ」
「レインさまのためにがんばりましたわ」
「ありがとう、イリス」
「ふぁ!?」
頭を撫でると、イリスがひっくり返るような声をこぼす。
突然のことで驚いたらしい。
「フィーニアもありがとう」
「ひゃん!?」
同じく、フィーニアも驚いていた。
「あ、ごめん……二人共、驚かせたか?」
「いいえ、いいえ。そのようなことは決して」
「も、もう一回なでなでを……な、なんでもありません!」
とりあえず、満足してくれているようでなによりだ。
研究所を前にしているけど、ティナもイリスもフィーニアもほどよく落ち着いていた。
ただ……
「……グルゥ」
サクラは落ち着かない様子だ。
伏せをするようにして休んでいるけど、尻尾は小刻みに動いている。。
そして瞳は鋭い。
いつでも動けるような臨戦態勢にあるらしく、ひどく気が立っているようだ。
まだサクラの両親の手がかりは見つかっていないけど……
でも、サクラは両親を近くに感じているのかもしれない。
だから、これだけナーバスになっているのかもしれない。
「サクラ、隣いいか?」
「……オフゥ」
小さな返事。
それを受けて、俺はサクラの隣に移動した。
ぽんぽんと背中を撫でる。
「不安だよな、落ち着かないよな」
「……」
「大丈夫とか、そんな無責任はことは言えないけど……でも、これだけは言わせてほしい。サクラは一人じゃないから」
「……ウゥ……」
「俺がいる。ティナがいる。イリスがいる。フィーニアがいる……みんなも無事を祈ってくれているはずだ。だから、一緒にがんばろう」
「クゥーン」
サクラはスクッと立ち上がり、体を巻きつけるようにして俺に抱きついてきた。
そのままスリスリと顔を寄せて、さらにペロペロと頬を舐めてくる。
「わっ」
「オンッ!」
「はは、くすぐったいって」
よかった。
少しは元気になったみたいだ。
「……あれはもしかして、レインさまにキスをしていることになるのでしょうか?」
「はわわわっ、さ、サクラちゃん、大胆ですぅ……!」
「おっ、新たなライバルかー?」
みんなもサクラのことを気にかけていたらしく、元気になったところを見て笑顔が咲いた。
うん、いい感じだ。
この雰囲気ならゆっくりと休むことができるだろう。
サクラの両親はまだ見つかっていない。
でも、イリスの言う研究所は見つけることができた。
あと少し。
もうちょっとで、サクラを両親に会わせてあげることができる。
絶対にうまく。
今はそう信じて……
仲間達との夜をゆっくりと過ごした。




