684話 みんながいる
一時間ほどでリス達が戻ってきた。
無事に研究施設を見つけてくれたらしく、案内してもらう。
「……あそこだな」
三十分ほど歩いたところで小さな洞窟を見つけた。
一見すると熊の巣穴のようだ。
しかしよく見ると、崩落などがないようにしっかりと補強されているのがわかる。
人の足跡だけじゃなくて、荷車の跡もあった。
「ありがとな」
リス達にお礼の木の実を渡して、仮契約を解除した。
「イリス、どう思う?」
「そうですわね……場所はここで間違いないですわ。今、ハッキリと思い出しました」
そう言うイリスは険しい表情をしていた。
当時のことを思い出しているらしく、気が立っているのだろう。
「大丈夫」
「ふぁ」
ぽんぽんと頭を撫でると、変な声がこぼれていた。
「俺達がいるから」
「……レインさま……」
「なにかあったら、すぐに言ってほしい。なんでもするよ」
「せやでー。うちら、仲間やもん」
「が、がんばりましゅっ」
「オンッ」
「……ふふ、ありがとうございます」
イリスの雰囲気が元に戻る。
うん。
これなら問題なさそうだ。
「さて……中の様子が気になるところだけど、どうするかな?」
イリスの話から考えると、研究所は再建されたのだろう。
場所は同じでも、内部構造まで同じとは限らない。
どれだけの敵がいるのかもわからない。
まだ時間はある。
焦らず、しっかりと情報収集をした方がいいだろう。
「ティナ、中の様子をざっくりとでもいいから知りたいんだけど……」
「オッケー、うちに任しとき」
ティナは物陰に隠れつつ移動して、洞窟に近づいていく。
「……」
タイミングを見計らい、するっと、洞窟の壁に溶け込んでしまう。
こちらからは見えないけど、そのまま壁の中を移動して、内部の様子を確認しているのだろう。
幽霊だからこそできる技だ。
結界を展開していたら別だけど、そうでなければ、敵は絶対にティナを見つけることができない。
壁の中にスパイがいるなんて誰も思わないだろう。
……これ、けっこうな反則技だな。
――――――――――
「おまたせやでー」
三十分くらい経ったところでティナが戻ってきた。
「どうだった?」
「おったおった、怪しいヤツがぎょうさんおったで」
ティナ曰く……
洞窟を進むと、ほどなくして研究施設に辿り着いたらしい。
全容を確かめようとすると数時間はかかりそうなため、一度撤退。
三十分の偵察でわかったことは、あからさまに怪しい研究施設が洞窟の奥に建造されていたこと。
研究員や警備兵がたくさんいること。
詳細は不明だけど、ぞわっとするような強者の気配がしたこと。
「ってな感じやな」
「なるほど……うん、けっこう情報を手に入れることができたな。ありがとう、ティナ」
「なんのなんの」
「れ、レインしゃん、これからどうするんですか……?」
「そうだな……」
即決はできず、じっくりと考えてみる。
イリスの記憶にあるものと同じか、それはまだわからないが、あからさまに怪しい研究施設があることは確定した。
どのような目的で建造されたものか?
それも気になるが、それよりも大事なのは、背後に誰がいるか……だ。
人間か?
魔族か?
それとも、まったくの未知の存在か?
突入をすれば黒幕と交戦をすることになると思う。
できるのなら情報を集めておきたい。
幸い、初日で研究所の場所を突き止めることができた。
時間の猶予はある。
「ティナ、悪いけどもう一回、偵察を頼めるか? できれば、もっとたくさんの情報を知りたい」
「ほいほい、かまへんでー」
「でも、絶対に無理はしないように。バレそうとか危なくなったりしたら、すぐに脱出してくれ」
「ふふーん、マジカルメイドティナちゃんは、そんなミスせんでー」
「マジカル……?」
フィーニアが不思議そうな顔をしていたが、そこはツッコミを入れたら負けなのだろう。
「なにがあっても、三時間を上限にしてほしい。三時間経っても戻ってこなかったら、その時は突入する」
「三時間やな? 了解やで」
「俺達は、その間、入り口を見張ろう。もしかしたら重要な誰かが出入りするかもしれない」
「ひゃ、ひゃいっ」
「あと、もう少し後方にレストスペースを作っておきたいな。見張りは俺とサクラでするから、イリスとフィーニアはレストスペースの設置を頼めるか?」
「が、がんばりまひゅっ」
「了解いたしましたわ」
隠れるようにして山奥に建設された研究所。
なにが待ち受けているのか?
サクラの両親はいるのか?
……少しだけ嫌な予感がした。




