678話 またどこかで
翌日。
ユウキとサーリャさまが王都へ戻ることになり、その見送りに向かう。
場所は街の裏手だ。
普段から人通りは少ない。
しかも今は工事と装い制限しているため、俺達以外の人はいない。
お忍びの旅なので、公になると色々と大変だ。
なので、出発も帰還もこっそりと行っているらしい。
「もう帰るんだな。せっかくだから、二、三日くらい泊まっていけばいいのに」
「僕もそうしたいんだけど、色々と溜まっている仕事があるんだ」
「では、それはお兄さまにお任せして、私はレインさまのところで……」
「ダメ」
「残念です……」
サーリャさまは、本気で残念がっているようだった。
今の発言、冗談ではなくて本気だったのだろう。
時に大胆に。
そして、王族らしからぬ行動をとるんだよな。
でも、そんなところが彼女の魅力かもしれない。
「一日だけだけど、またレインに会えてよかったよ」
「俺も」
ユウキと握手を交わす。
「今度はゆっくり話せたらいいな」
「そうだね。そのために、がんばって仕事を終わらせてくるよ」
「がんばれ。俺も、がんばる」
「うん」
簡単な挨拶。
でも、それでいい。
また会えるのだから、こんなもので十分だ。
「レインさま」
サーリャさまも握手を求めてきた。
俺は、笑顔でそれに応じて……
「えっ」
手を握った瞬間、ぐいっと手を引かれた。
予想外のことに対応できず、そのままサーリャさまの方へ。
そして……
「んっ」
頬に触れる唇の感触。
「「「あーーーっ!!!?」」」
後ろで様子を見ていたみんなの反応からして……
今のは、まあ、そういうこと……だよな?
「次は、これ以上を期待しています」
「えっと……が、がんばって考えておきます」
答えを保留にしている俺への、サーリャさまなりのいたずらなのかもしれない。
ホント……女性は色々な意味ですごい。
――――――――――
ユウキとサーリャさまの見送りが終わり……
続けて、シフォン達とエリスの見送りをすることに。
「レインさん、みなさん。ありがとうございました」
エリスが深く頭を下げた。
「エリスは、これからどうするんだ?」
「教会は国が管理することになり、現体制は解体されるでしょう。私は聖騎士ではなくなりますが……しかし、この力、誰かのために振るい続けましょう。そうすることを、あの人も望んでいるでしょうから」
あの人というのは、ミナを指しているのだろう。
最後の最後で二人は和解することができた。
そのことをうれしく思う。
ただ……
ミナがいなくなってしまったことは、やはり、寂しくて悲しい。
「握手をいいですか?」
「もちろん」
エリスと笑顔で握手をする。
「また、どこかで」
「ああ、どこかで」
たくさんの言葉はいらない。
今は、これで十分。
そう言うかのように、エリスは晴れやかな笑顔を見せて……
そして、ホライズンを後にした。
「レインくん」
「お世話になりましたー」
「またなー」
シフォン達との別れもあっさりしたものだ。
五分くらい、みんなで話をして……
そして、手を振り、ホライズンを後にする彼女達を見送る。
シフォン達は勇者だ。
その最終目標は、魔王の討伐。
そのために、また新しい旅に出るのだろう。
俺になにができるかわからないけど……
またなにかあれば、彼女達の力になりたいと思う。
「……レインくん!」
ふと、立ち去ったはずのシフォンが戻ってきた。
まっすぐ、俺のところに駆けてきて……
そして……
「んっ」
さきほどの光景を再現するかのように、シフォンが俺の頬にキスをした。
「「「あああぁーーー!!!?」」」
みんなの悲鳴のような声。
でも、それは俺に届かない。
というか、聞こえないくらいに動揺していた。
「な、なにを……?」
「えっと、ね? どうするかすごく迷ったんだけど、次はいつ会えるかわからないから、せめて、気持ちを伝えておきたくて……私の気持ち、伝わったかな?」
「あ、ああ……十分に」
「そっか、よかった! あ、返事はいいからね。ゆっくり考えてほしいな。じゃ、じゃあね!」
耳まで赤くしたシフォンは、逃げるように立ち去るのだった。
なんていうか、これは……
「「「レインっ!!!」」」
「まあ……こうなるよな」
ただ別れをするだけの日なのに……
なぜか、とても荒れてしまうのだった。




