表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

653/1218

648話 零式監獄

 ノキアによって監禁されているはずのヴェルグは、レインの家から少し離れたところにある丘にいた。


 なぜ自分はこんなところにいるのか?

 捕まっていたはずなのに、いつの間に抜け出すことができたのか?


 色々と疑問に思うヴェルグだけど、謎は後回しにする。


 今は撤退が先だ。

 ミナが捕まってしまい、奪還が難しいとなると、作戦を一から考え直さなければいけない。

 リースとモニカに状況を報告するべく、遠く離れたアジトへ……


「がっ……!?」


 突然、胸部に激痛が走る。


 ゆっくり視線を降ろすと、人の手が生えていた。


「な、んだよ……これは……」

「ごくろうさま」


 背後から声が聞こえてきた。


 ヴェルグは痛みを無視して、強引に体を捻り、自身を貫く腕を抜いた。

 そのまま大きく跳び、背後にいる何者かと距離を取る。


「てめえは……」

「ふむ? 今の一撃で死なないとは。やれやれ、私も衰えたものだ。若い頃ならば、この程度の魔族、確実にしとめていたというのに」


 白髪まじりの髪。

 白を基本とした法衣。

 血に濡れた手と反対に持つ、聖なる杖。


 アルトリウス・グレイゴム。


 教会のトップに立つ者がそこにいた。


「ごほっ……いつの間に、俺の後ろに……」

「やれやれ、そう睨まないでほしいものだ。君を亜空間から救出したのは、この私なのだから」

「なんだと?」

「まあ……その後、私のために犠牲になってもらうのだから、君の終わりは避けられないことなのだけどね」

「なにを……」

「零式監獄を発動させるには、贄が必要でね。君のような魔族は、これ以上ないほど、良い素材なのだ」

「さっきから……なにを言ってやがる!」


 ヴェルグは痛む胸部を無視して、アルトリウスに襲いかかった。

 影を刃として、アルトリウスの体を細切れにしようとするが……しかし、遅い。

 その全てを回避されて、杖によるカウンターを受けてしまう。


「がはっ」

「やれやれ、元気の良い贄だ。もう少し弱めておく必要があるか」

「ぐあ!?」


 当たり前のことをするかのように、アルトリウスは、杖でヴェルグの足を貫いた。

 肉を断ち、骨も貫く。

 鈍い音と悲鳴が重なった。


「これでいい。さあ、儀式を始めようか」

「てめえ、は……いったい、なにを……?」

「ふむ。なにもわからず死ぬのは恐ろしいかな? しかし、案ずることはない。君は尊い犠牲となるのだ。仲間に売られたことなんて、気にすることはない」

「売られた……だと?」

「おや? 気づいていなかったのかな? ホライズンに来た君と、その仲間達は売られたのだよ。私の誘いに応じて……なんといったかな? そう、リースだ。彼女と私の取り引きにより、その身を供物として捧げることになったのだ」


 ヴェルグは愕然とする。


 アルトリウスがなにを言っているかわからない。

 わかっているものの、認めたくない。


 魔族の未来のために、仲間のために働いてきた。

 なんでもしてきた。


 今回も、ミナという人間を魔族に堕とすため、この地で裏工作をしてきたのだけど……

 しかし、それらは全て嘘だった?

 それ以前に、リースが考えた計画に勝手に組み込まれていて、しかも、自分と仲間達は死ぬことを予定されていた?


「そんな、ふざけたことを……!!!」

「光栄に思うがいい」


 アルトリウスは笑う。

 絶望するヴェルグを見て、楽しそう悲しそうに。


 とても人間とは思えない表情で……嘲笑う。


「貴様の犠牲によって、ミナ・ルサージュは聖女となる。あるいは……まあいい」

「この……!」


 ヴェルグは反撃を試みるが、全て封殺されてしまう。


 格が違う。

 人間だとしても、その能力はトップクラスだ。

 そこらの魔族を束ねても敵わないだろう。


 しかし、それは当然のこと。

 アルトリウスは教会の頂点に立つ男。

 政治的な能力だけではなくて、実戦を乗り越える戦闘力を身に着けている。


「さようならだ。君の尊い犠牲は忘れない」


 アルトリウスの持つ杖がヴェルグの胸を叩いた。


 それを合図としたかのように、ヴェルグの動きが止まり……

 その体が光に包まれて消えていく。


 そして数秒後。


 連鎖反応が起きたかのように、街が光に包まれる。

 零式監獄の完成だ。

 この光の中にいるものは体力と魔力を奪われて、やがて衰弱死する。

 外に脱出することも叶わない。


「これで準備は整った。零式監獄は魔族の仕業ということにして、そして、ミナを誘導する。彼女を使い結界を解除すれば、汚名は晴れる。教会の権威は復活する」


 アルトリウスが嘲笑う。


「もしも、ミナが従わない場合は……その時は、尊い犠牲になってもらおう。その身を捧げ、民のために結界を解除する。ああ、なんて美しい美談なのだろう」


 結局のところ……

 アルトリウス・グレイゴムという人間は、教会と己のことしか考えていない、どこまでも卑劣な男なのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇

中身は最強黒騎士、外見は天使な幼女王女。
母が愛した国を守りたいだけなのに、侍女も騎士団もなぜか女神扱い!?
『最強黒騎士、幼女王女に転生する』を読む



悪役令嬢に転生したけど、妹が可愛すぎる!
妹をいじめる? とんでもない。むしろ溺愛します!
『 悪役令嬢に転生したので、メインヒロインの妹を全力で甘やかします 』を読む






Kラノベブックス様から書籍1~12巻、コミカライズはマンガUP!にて連載中で、コミック1~11巻、発売中です!

紹介ページへ 紹介ページへ
― 新着の感想 ―
[一言]まぁ〜この作者は…ドS様なのかね〜!!
[気になる点] 640話でヴェルグの尋問が行われていると書かれてたけど、無かったことになったのかな?
[気になる点] リースが人間のメリットになることをする訳がない。 この、零式監獄はアレンジしたものとはいえ、 本来は魔族の所有物。”魔法構造”の中に、魔族しか知らない・見えないコードをちょっとだけい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ