594話 そろそろ
猫霊族の里にやってきて、三週間。
毎日、覚醒状態のスズさんと稽古をした。
たまに、アルさんやミルアさん。
レゾナさんにエルフィンさんにも稽古をつけてもらった。
少しずつ強くなっているという実感はある。
ちょっとした切り札も手に入れた。
確かな成果があり、充実した時間を過ごしていた。
そうして……気がつけば、長時間、猫霊族の里に滞在していた。
「ふぅ」
朝起きて、体を伸ばす。
寝たばかりなのだけど、連日の稽古の疲れが残っていたらしく、なんとも言えない感覚に包まれる。
「まあ、筋肉痛が和らいだのは良いことか」
最初の頃は、とんでもない筋肉痛に襲われていたのだけど……
最近はそんなことはない。
多少痛むものの、動く分には問題はない。
「これから、どうするかな……?」
もうすぐ一ヶ月。
もっともっと強くなりたいと思うのだけど……
ただ、これ以上滞在しても迷惑をかけるだけだろうし……
あまり欲張らない方がいいのかもしれない。
「……悩んでいても仕方ないか」
今できることをやるだけ。
俺は気合を入れ直して、今日の稽古に向かう。
――――――――――
それは午前の稽古を終えて、昼ごはんを食べた後のことだった。
「んぅ……」
ニーナが落ち着きのない様子でキョロキョロしていた。
「ニーナ、どうしたんだ?」
「クウ、が……いないの」
「クウが?」
話を聞いてみると……
ニーナとクウはいつも仲良しで、今日も一緒に昼ごはんを食べたらしい。
その後、ニーナは食器の片付けを手伝い……
戻ってきたところ、クウの姿が消えていたという。
「うぅ」
「ニーナ、落ち込むな。俺も一緒に探すから」
「あり、がとう」
不安そうにするニーナと手を繋いだ。
少しでも心が落ち着くといい。
それからみんなのところを回り、クウを見てないか話を聞く。
「にゃ? そういえば見かけないよね……どこ行ったのかな?」
「ニーナと一緒にごはんを食べているところは見たけど……」
「キツネは、やはり油揚げが好きなのだろうか? 我は気になるぞ」
一部、おかしな意見はあったものの……
皆、クウを見かけていないと言う。
うーん。
おかしいな?
これだけの人数がいて、誰も見かけていないなんて。
誰かにさらわれた……ということは、考えづらいか。
みんなだけじゃなくて、他の猫霊族の目をかいくぐれるとは思えない。
それに、そんな悪人はここにはいない。
だとしたら……
クウがみんなから隠れるようにして、こっそりと里を出た?
「ノキアさんに相談してみようか」
「うん」
というわけで、ノキアさんのところへ。
編み物をしようとしていたところ、申しわけないのだけど、時間をとってもらいクウのことを話した。
「そうですか、あのキツネが……」
「ママ……クウ、知らない?」
「すみません。私も見かけておらず……ただ、居場所を探すことはできますよ」
「ほん、とう?」
「はい、任せてください」
ノキアさんは、どことなくうれしそうだ。
ニーナの前でかっこいいところを見せられるのが、うれしいのかもしれない。
「……」
目を閉じて集中すること少し。
「見つけました」
「クウ、どこ……?」
「里の外にある森……ニーナがクウを拾ったところにいるみたいです。おそらく、自分でそっと里を出たのでしょうが、なぜ……?」
「とにかく、行ってみましょう。里の外にいるのなら危ない」
「私も一緒に行きます」
スズさんに事情を話して……
それから、ニーナ、ノキアさんと一緒に里の外に出た。
他のみんなは、いざという時のために待機だ。
「クウ、どうしたの……かな?」
「大丈夫。ちょっと散歩がしたいとか、そんなところさ」
「うん……」
不安そうにするニーナを励ましつつ、まずは浜辺へ移動した。
続けて、隣の林道へ向かう。
クウを見つけたのはこの辺りだけど……
すでに移動した後なのか姿は見えない。
「よし、この辺りの動物に協力してもらって……」
テイムをしようとした時、それは聞こえた。
キシャアアアアアッ!!!
「魔物か!?」
「こちらです!」
クウが襲われているかもしれない。
俺達は急いで走り……
そして、それを見た。
「クゥゥ……」
「グルルルッ!」
クウは、巨大な魔物と対峙していた。
その巨大な魔物は、どことなくキツネを連想するフォルムで……
だから、一目見てわかった。
この魔物は、クウの親だ。
諸事情により、次回の更新はお休みさせていただきます。
詳細は活動報告にて。




