表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

464/1215

463話 こっちも忘れていた

 翌日。

 さっそく精霊族の里に移動して、アルさんに話をしたのだけど……


「ん? 真紅の涙? ……おおっ!」


 そういえばそんなものが、というような反応をとられてしまう。

 いや、えっと……

 俺が言うのもなんだけど、アルさん、あなたも忘れていたんですか?


 娘二人も呆れ気味だ。


「母上よ、それはないのだ」

「怒られるのではないかと、緊張していたソラ達がバカみたいです」

「仕方なかろう。最近はクリオスに赴いたりするなど、妾は忙しかったのじゃ。些細なことなど、さすがに覚えておれぬ」

「母上も歳だからな」

「ほう……」


 アルさんの目がキラーンと光る。

 それを見て、自身の失言を悟ったルナは、しまったというような顔に。


「娘よ、ちょっとこっちに来るのじゃ。久しぶりに、母娘の時間を楽しむとしよう」

「え、いや、あの……」

「たっぷりかわいがってやるぞ? イヤといっても離さないのじゃ」

「あ、姉よ! 助け……」

「……さあ、レイン。母さんは問題ないということなので、次は長のところへ行きましょうか」

「そ、それでいいのか?」

「いいんです」

「そっか……がんばれ、ルナ」

「ひどい!?」

「さあ、こっちへ来るのじゃ。ちょうど、訓練場が空いているからのう。そこで、母娘の時間をたっぷりと楽しむことにしようぞ」

「ひ……ひやぁあああああっ!?」


 ルナの悲鳴は、里中に響き渡ったとかなんとか。




――――――――――




「はて、真紅の涙……?」


 長に取り次いでもらい、話をしたのだけど、そんなとぼけた反応が返ってきた。


「なんじゃ、それは?」

「え? いや……ほら、イリスの件で里に来た時があったでしょう? その時に、彼女を封印するために借りたアイテムのことですよ」

「ふむ?」


 長は考えるような仕草を取り、しばし沈黙する。


「おおっ、思い出した思い出した。確かに、真紅の涙を貸していたな」


 ようやく思い出したらしく、長はぽんと手の平を打つ。


「そうだな、確かに貸していたな。わりとどうでもいいアイテムだから、すっかり忘れていた」

「すっかり、って……それでいいんですか?」

「我ら精霊族にとっては、その程度の価値しかないのだよ」

「持ち出す時は、色々と手続きが必要だったのに?」

「一応、里で管理しているアイテムだからな。希少性に関わらず、一定の手続きは必要なのだよ」

「はぁ……」


 なんだろう、この適当さは?

 やはり人間は信用ならぬ、なんて言われることも覚悟していたのだけど、拍子抜けだ。


 伝説のアイテムも、彼らからしたら、そこらの石と変わらない価値なのかもしれない。


「真紅の涙と大層な名前をつけられているが、結局のところ、ただの鉱石だからな。全力で守るほどの価値はないな」


 本当に適当だなあ……と、唖然としてしまう。


 それでいいのか、精霊族?


「えっと……とにかく、力を貸していただいたにも関わらず、今の今まで返却が遅れてすみませんでした。お詫びします」

「構わぬ。その程度のもので悪感情を持つほど、我ら精霊族は器が狭くはない」

「そう言ってもらえると助かります」

「それで?」

「え?」

「話はそれだけではないのだろう?」


 さすが、精霊族を束ねる長だ。

 こちらの考えは、全部お見通しなのだろう。


 厚かましいお願いということは理解しているのだけど……

 それでも、真紅の涙が必要だ。


 俺は頭を下げる。


「真紅の涙をください」

「お願いします」


 一緒に来ていたソラも頭を下げてくれる。


「ふむ? 真紅の涙は、我ら精霊族にとっては大した価値はないが……だからといって、ほいほいとくれてやれるような代物でもない。人間が相手なら、なおさらだ。まあ、知らぬ仲ではないから、事情くらいは聞いてやろう」

「ありがとうございます。実は……」


 説明の機会を与えられたことに感謝して、事情を説明した。


「ふむ、おぬしの武器が……」

「全部、自分勝手な都合ということは理解しています。ただ、それでも他に頼るところがなくて」

「なぜ力を欲する?」


 長は鋭い目でこちらを見つめてきた。

 圧を感じて、背中がゾクリと震える。


 なんて答えるべきだろうか?

 世界のため人のため?

 あるいは、全ての天敵である魔族と戦うため?


 いくつか理由を考えてみるものの、しっくりとこない。


 そもそも……

 大義とか正義とか、そういうもののために戦うことはない。

 今まで、俺は俺のやりたいようにしてきたはずだ。


 だから、シンプルに、ストレートに心を打ち明けることにしよう。


「自分の望みを叶えるためです」

「ほう……大義名分を口にしないか。して、人間よ。お前の望みというのは?」

「大事な仲間と一緒に、ずっと笑っていられるような、そんな生活を守ることです」


 何度も何度も考えてみたのだけど……

 俺の望みは、それ以外にない。


 世界を救うためとか、そんな大層なことは言えない。

 俺は大したことない人で、できることは限られている。

 この手が届く範囲しか助けることはできない。


 でも。


 手の届く範囲で困っている人がいるのなら。

 仲間が泣いているのだとしたら。

 なにがなんでも助けたい。


 そのために、力が必要なのだ。


「ふむ」


 しばしの間。

 ややあって、


「まあ、合格としておこう」


 長は肩の力を抜いて、小さな声でそう言った。


「それじゃあ……」

「真紅の涙は、お主にくれてやろう。好きに使うといい」

「ありがとうございます!」


 俺は深く頭を下げて、大きな声でお礼を口にした。

『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇

中身は最強黒騎士、外見は天使な幼女王女。
母が愛した国を守りたいだけなのに、侍女も騎士団もなぜか女神扱い!?
『最強黒騎士、幼女王女に転生する』を読む



悪役令嬢に転生したけど、妹が可愛すぎる!
妹をいじめる? とんでもない。むしろ溺愛します!
『 悪役令嬢に転生したので、メインヒロインの妹を全力で甘やかします 』を読む






Kラノベブックス様から書籍1~12巻、コミカライズはマンガUP!にて連載中で、コミック1~11巻、発売中です!

紹介ページへ 紹介ページへ
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者様、妄想の時間となりました。 もしも、精霊族の里にリコリスが来たら・・・その2 リコリス「ここの里は緑だけで特にこれと言って面白いのはないわねー、なんかこの美少女リコリスちゃんの興味…
[一言] アルさんの料理はロシアンルーレットにw 5個作ったら1つはヤバい的な感じとか… そして真紅の涙精霊には低価値なのか… 思えば魔法ばっかだから貴金属特に使わないし。
[一言] 全然関係ない事なんですが……レインよ、冒険者である前にビーストテイマーだよな。最近ビーストをテイムしてないじゃないか! (記憶違いじゃなければ) カグネの街で犬をテイムをしたのが最後だよ…
2021/01/04 18:00 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ