457話 賑やかすぎる歓迎会
「では、僭越ながら、みんなのアイドルでプリティキューティービューティーな我が乾杯の音頭を……」
「乾杯です!」
「「「かんぱーいっ!!!」」」
「あぁ!? 我の出番が!?」
「ルナの挨拶は無駄に長い上に、無駄な内容で、無駄に意味がないのです」
「無駄無駄言うな!?」
夜の我が家。
新しいメンバーの歓迎会を開くことになり、テーブルの上にはたくさんの料理とスイーツと酒が並んでいる。
みんなは笑顔でそれらに手を伸ばして、楽しいおしゃべりに興じる。
「ほい、ウチが注ぐでー」
「あら、ありがとうございます」
「ひゃ、ひゃりがとうごじゃります!」
「ついでに、料理も取り分けたるな。嫌いなもんはない?」
「わたくしは特になにも」
「えっと、その……きのこ類はちょっと……」
「きのこは栄養あるんやでー? まぁ、今はいいけど、おいおい慣れてこうなー」
「は、はひっ」
ティナはメイド魂を発揮して、イリスとフィーニアの世話をする。
それにしても……
フィーニアはともかく、イリスは、いつの間にティナと仲良くなったのだろう?
ティナは幽霊だけど人なので、もしかしたら仲良くできないかも、という懸念があったのだけど……でも、それは杞憂だったみたいだな。
二人はとても仲が良さそうで、古くからの友達に見えるくらいだ。
「オンッ!」
「あっ!? こら、その肉はあたしが狙っていたのに!」
「にゃっはっは、犬のすることに腹を立てるなんて、器が小さいと思われちゃうよ?」
「なによ。カナデなら、横取りされても文句言わないわけ?」
「もちろん。私はできる女だからね。それくらいのことで……あぁ!? 私のお魚!? フシャーッ!!!」
「腹、立ててるじゃないの」
「お魚は別なの!」
「オフゥ……」
「サクラがごめんなさい、って」
「うっ、すごい罪悪感……」
仲良く……やれているのかな?
ちょっと心配になるのだけど、まあ、大丈夫だろう。
変に気を使うことなく自然体でいて……
それだけ心を許している、と見ることができる。
「ニーナ、これ、おいしい」
「ん……柔らかい、ね」
「口の中でとろける」
「ふわ、ふわ」
「うまうま」
「おかわり、食べよ」
「うん、食べよう」
年少組は二人で同じものを食べていた。
こころなしか、いつも無表情のリファも笑顔になっているように見える。
「ところで……」
楽しい宴がある程度続いたところで、ふと思い出した様子で、イリスが小首を傾げつつみんなに尋ねる。
「みなさんは、レインさまのことが好きなのですか?」
「好き……だよ?」
「いいえ、ニーナさん。そういう好きではなくて、恋愛的な意味の好きですわ」
「ふぇ?」
「んー、ニーナにはちと早いか。まあ、簡単に言うと、えっちぃことをしたいかどうか、っていうことやな」
「ごほっ」
俺がむせて、
「「「「っ!?」」」」
カナデとタニアとソラとルナが赤くなる。
ティナのヤツ、なんていうことを……
「え……ち?」
「ひゃわわわっ」
「む?」
「オンオンッ!」
不思議そうな顔をしたり慌てたりする年少組を、サクラがくいくいと引っ張る。
気をつかってくれたのだろうか?
でも、どうせならイリスとティナの話を止めてほしい。
「それで、どうなのでしょうか?」
「わ、私はまだ、そんにゃことはしていないよ!?」
「まだ、ということは、レインさまのことは好きなのですね?」
「うっ」
墓穴を掘ったカナデは、さらに顔を赤くした。
それを見て、ニヤニヤと笑うイリス。
とても楽しそうだ。
「タニアさんは、どうなのですか?」
「あ、あたしはっ……別に、まあ? 嫌いじゃないわね」
「ということは、好きなのですか?」
「それは、なんていうか……嫌いじゃないわね!」
「つまり、好きなのですね?」
「だ、だから嫌いじゃ……」
「嫌いの反対は好き、ということになりますわ。タニアさんも、レインさまのことが好きなのですね。らぶ、なのですね」
「うぐっ」
イリスの勢いに押されて、なにも言えない様子だった。
あの強気で勝ち気なタニアが、まったく反論できず、押し込まれてしまうなんて。
イリスは、実は天族じゃなくて、小悪魔族なのでは……?
「ソラさんとルナさんは……」
「うむ。我は、レインのことは好きだぞ」
「そうですね。好きですね」
「あら。意外というか、あっさりと認めてしまうのですね」
「ごまかしてどうするのだ? そんなことをしていたら、想いは一生伝わらないのだ」
「ましてや、相手はレインですからね。変な態度をとれば、曲解されてしまう可能性もあります」
「なるほど、それは確かに」
妙な方向で納得されていた。
俺の方から反論したいのだけど、でも、鈍いことは確かなので……
くっ、なにも言えない。
「ねえ、イリス。なんで、突然そんな話をしたの?」
「いえ、深い意味はありませんわ。わたくしもレインさまが好きなので、ライバルであるみなさんがどれだけ進んでいるのか、確認したいと思いまして」
「どれだけ……」
「進んでいる……」
なにを想像したのか、カナデとタニアが恥ずかしそうに視線を明後日の方向へ。
というか……
頼むから、俺の前でそんな話をしないでほしい。
今すぐにここから逃げたいのだけど、しかし、それは不誠実なような気がして……
止めることもできず、ただただ、成り行きを見守るしかできない。
「ふふんっ」
「あら。よくわかりませんが、ルナさんは余裕があるみたいですわね」
「当たり前なのだ! なにしろ、我はすでに……レインに肌を見せているのだからな!」
「なっ!?」
ルナがとんでもないことを言い放ち、イリスが驚愕した。
「まてまてまて!? いつ、そんなことがあった!?」
「忘れたのですか? ガンツの依頼を受けて鉱山に向かう途中、ソラ達は水浴びをして……」
「そこで、我ら一同、一糸まとわぬ姿を見られたのだ!」
「……そういえば」
「と、いうわけで」
「レイン攻略戦は、ソラ達の方がリードしている、というわけですね」
「なるほど……なるほど。これは、うかうかしていられませんわね。なかなかの強敵みたいですわ。認識を改めなければ」
「しかし」とつぶやいて、イリスはニヤリと笑う。
出会った頃を思い出させるような、とても悪い笑顔だ。
「わたくしは、まだ肌を見せたことはありませんが……」
「ふふんっ、我の勝ちだな!」
「ですが、キスはいたしましたわ」
「「「「っ!?!?!?」」」」
カナデ達の目が丸くなる。
とてつもない衝撃を受けたらしく、ピクピクプルプルと手が……いや、全身が震えていた。
「あら。みなさん、とても驚いていらっしゃいますね。ふふっ、これは、わたくしの勝ちでしょうか?」
「……レイン?」
ギギギと錆びついた扉のような感じで、カナデの首が動いた。
みんなも同じような感じの動きで、こちらを見る。
そして……グイグイっと詰め寄る。
「「「「どういうこと!!!?」」」」
「いや、その……なんていうか」
「レイン、レイン! 本当なの!? イリスと、き、ききき……キスしたの!?」
「まさか、無理矢理奪われたとか、そういうことなの!?」
「突然だけど、無理矢理ではないような……? いや、しかし同意は……」
「ほ、本当のことなのですね……」
「ど、どのような状況でキスしたのだ!? どのような状況なのだ!?」
「ふふっ。夜空に浮かぶ月明かりに祝福されつつ、わたくしは、静かに誓いのキスを捧げたのですわ♪」
「「「「あああああぁーーーーーっ!!!?」」」」
みんなは頭を抱えて、悶えて、奇声をあげる。
「にゃにそれ!? すごくうらやましい! なんて素敵なシチュエーション!!!」
「あたしもしたい! そんなシチュでキスされてみたい!」
「ソラの妄想力がはかどります! あああっ、もう頭がオーバーヒートしそうです!」
「ずるいのだ! そんなシチュ、最強ではないか! ずーるーいーのーだー!!!」
「えっと、みんな……」
「「「「レインっ!!!!」」」」
「は、はい!?」
「「「「キスして!!!!」」」」
「い、いや、それはさすがに……」
「「「「いいから早く!!!!」」」」
みんなが暴走して……
「さて……わたくしは、ニーナさん達と料理を堪能しますわね。では、ごきげんよう」
「あっ、おい、イリス!?」
「ふふっ」
場をかき乱すだけかき乱して、イリスは奥に引っ込んでしまう。
残された俺。
そして、どことなく据わった目をするカナデ達。
……この後、どうなったのか。
詳細を語るのは控えておこうと思う。
ただ一言、言うのならば……
賑やかすぎる歓迎会になった、ということだけ言っておこう。
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