451話 いつの間にか
「久しぶりのぉ……」
「我が家なのだ!!!」
報告書をまとめたり話し合いをするなどして、一週間ほどかけて色々な後始末をした。
そして、ようやく自由になる時間を得ることができて、ホライズンの家に戻ることができた。
カナデとルナが言うように、久しぶりの我が家。
リファの頼みを聞いて家を空けるようになって、そこから色々なトラブルに巻き込まれて……
かれこれ、一ヶ月以上は空けていただろうか?
ようやく戻ってこれたことがうれしい。
やっぱり、自分の家っていうのは安心するというか、ほっとする。
「ぎゃあああああっ!?」
突然、ティナが悲鳴をあげた。
「ティナ、どうしたんだ!?」
「な、な、なんていうことや……ウチの中が埃まみれや……」
「あ、そういう悲鳴か」
メイドのティナとしては、埃まみれになった我が家が許せないらしい。
腕まくりをして、瞳にメイド魂を燃やす。
「なんちゅー掃除のしがいがある家になってしまったんや……ええで。ウチがしっかりケリをつけたるからな。安心してええで」
「えっと……ティナ?」
「ニーナ! リファ!」
「ん」
「うん」
「一緒に掃除するで! ウチに続けー!!!」
「がん、ばる」
「ラジャー」
年少組二人を連れて、ティナが家の中に突撃した。
ニーナとリファは、いつの間にか布を口元に巻いていて、準備万端だ。
やる気たっぷりみたいなので、まあ、放っておいてもいいだろう。
「ねえねえ、レイン。私達はどうしようか?」
「ゆっくり休みたいところだけど、家がこんな状態だからな。俺達も掃除をしようか。見たところ、中だけじゃなくて外もけっこうひどいし」
雑草が生い茂り、庭がメチャクチャだ。
蔦も外壁に少し絡みついていて、窓も汚れていて、下手したら幽霊屋敷に見えてしまう。
「うにゃー……掃除は仕方ないんだけど、面倒だね」
「あたしのブレスで焼き払う?」
「あ、あの……焼くことなら、ま、任せてくらひゃい!」
「いやいやいや」
家まで燃えるだろう、どう考えても。
というか、フィーニアまで賛同しないでほしい。
まあ、彼女の場合は、少しでも役に立ちたいという思いからの発言だろう。
まだ少し周りに流されやすいところがあるため、タニアも、冗談でも過激なことは言わないでほしい。
……いや、冗談ではないのか?
「手分けして作業をしようか。俺とフィーニアは、玄関の手前を。カナデとタニアは、家の裏手と庭を」
「では、わたくしは?」
「そうだな……」
イリスは少し前まで瀕死だったから、あまり無理はさせたくない。
「じゃあ、イリスは俺とフィーニアと一緒に」
「ふふ、了解いたしました」
「そんな感じで。夜はゆっくりできるように、がんばろう」
「「「おーっ!」」」
元気な挨拶を残して、みんな、持ち場についた。
フィーニアとイリスと一緒に、雑草をむしる。
「あ……れ、レインさん。この花は綺麗だから、の、残しておいてもいいんじゃないかな、って……す、すみませんすみません! 私ごときが生意気なことを!?」
「謝ることじゃないって。うん。フィーニアの言う通り綺麗な花だから、そのままにしておこうか」
「あ……は、はいっ」
「ふふっ」
俺とフィーニアのやりとりを見て、イリスが微笑ましそうに笑う。
「どうしたんだ?」
「いえ。少し妬けてしまうくらいに、お二人は仲が良さそうに見えたもので」
「ひにゃ!?」
フィーニアがぼんっ、と赤くなる。
そんな初々しい反応もイリス好みらしく、ニヤニヤと笑っている。
「えと、その、あの、わ、ワタシは、えと……!?」
「オンッ!」
「は!?」
サクラの一鳴きで、フィーニアが我に返る。
「ふぅ……あ、ありがとう、サクラちゃん。落ち着くことができたよ」
「オフゥ」
「えへへ、いつもサクラちゃんはワタシを助けてくれるね」
「オンッ!」
サクラは誇らしげに胸を張り……って、ちょっと待て。
「なんでサクラがここに!?」
「……あっ」
今気がついた、というようにフィーニアも表情を変えた。
「あら? このワンちゃん、最初からずっと、わたくしたちと一緒にいましたが……てっきり、レインさまのパーティーに加わっていたのかと」
「イリスは気がついていたのか……って、そっか。ここ最近、ずっと一緒にいたせいか、サクラがいて当たり前になっていたんだよな。だから、気づかなかったんだよな」
「この子、こっそりついてきたのですか? ふふっ、なかなか大胆なことをするのですね。よしよし」
「ワフゥ」
イリスに撫でられて、サクラは尻尾をブンブンと大きく横に振る。
心なしか、フィーニアに撫でられている時よりもうれしそうだ。
そんなサクラを見て、フィーニアがむぅと頬を膨らませる。
「まいったな」
シグレさんから、サクラについての話は聞いていない。
たぶん、サクラが勝手についてきてしまったのだろう。
「あとで、シグレさんのところに送り届けないと」
「オフゥ……オンッ、オンッ!」
サクラが首を横に振る。
「もしかして、帰りたくないのか?」
「オンッ」
「なんでまた、そんな……」
「えと、その……たぶん、サクラちゃんはレインさんの役に立ちたいんだと思います。それで、一緒についてきちゃったんだと」
「オフゥ」
つぶらな瞳でじーっと見つめられた。
言葉はわからなくても、今だけは、サクラの言いたいことを理解した。
一緒にいさせて?
「むぐ」
「ふふっ、レインさまの負けですわね。この子のお願いに勝てる方など、そうそういないかと」
イリスはどこまでも楽しそうだ。
まったく。
「はぁ……今度、アルさんに頼んで手紙を届けてもらうから、俺かフィーニアに代筆してもらって、ここにいることをシグレさんにちゃんと伝えること。その上で、許可をとること。それなら、ここにいてもいいよ」
「オンッ!」
「うわっ」
ありがとう、と言うかのように、サクラが俺の上にのしかかり、顔をペロペロと舐めてきた。
初めて出会った頃を思い出して、なんだか笑ってしまう俺だった。
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