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432話 もう一人

「わ、ワタシだって……!」


 フィーニアは炎の翼を大きく広げて、ニーナに迫る攻撃を相殺する。

 さすが、エルフィンさんの娘というべきか。

 リーンの圧倒的な攻撃を、たった一人で防いでいる。


「神族の娘っ、合わせなさい!」

「私もやるよ!」

「んっ!」


 娘ががんばっているのに、母親ががんばらずにどうするのか?

 そのように、エルフィンさんが奮起して、フィーニアのものより、さらに一回り大きい炎の翼を生み出した。

 同時に、シフォンもありったけの魔力を収束させて、腕に魔法陣をまとわせる。


「んんん……えいっ!」


 二人の前に、亜空間に繋がる穴が開いて、


「燃えなさいっ!」

「ルナティックボルトッ!!!」


 エルフィンさんとシフォンの攻撃が炸裂した。


「ちっ」


 リーンは舌打ちしつつ、転移を利用した攻撃が来ることを警戒する。

 今度はどこからだろう? 右か? 左か? 上? 後ろ?

 リーンは素早く周囲に視線を走らせ、推理するが、その全てが不正解。

 正解は……足元だ。


「なっ!?」


 足元に広がる穴に気がついて、リーンは顔をひきつらせた。

 咄嗟に離脱しようとするが、遅い。

 豪炎と轟雷が勢いよく吹き出して、天に昇る龍のごとく荒れ狂う。


「ぐっ、ぎぃっ……この、程度でぇえええええっ!!!」

「なっ!?」


 リーンは己の内から魔力を放出して、エルフィンさんとシフォンの攻撃を吹き飛ばした。

 なんて力技。

 というか、今の攻撃を力技でどうにかしてしまうということは、今のリーンの地力は二人に勝っているということか。


 リーンは確かに優秀な魔法使いだけど、でも、元はただの人間だ。

 それが魔族に進化しただけで、これほどの力を得るなんて。

 よくよく考えてみれば、エドガーの件も似たようなものだ。

 大した力を持たない貴族のはずなのに、進化後は、当時の俺達を圧倒するほどの力を得た。


 魔族に進化すると、最強種を軽く上回るような、圧倒的な力を得ることができるのだろうか?

 だとしたら、魔族とはいったい……?

 魔族とは根源的にどういう存在なのか、考えてみた方がいいのかもしれない。


 まあ、目の前の危機を乗り越えないことには、話は始まらないのだけど。


「このっ!」


 俺、カナデ、リファ、シグレさんが近接戦闘を。

 シフォン、フィーニア、エルフィンさんが遠隔戦闘を。

 そして、ニーナがそれぞれのサポートに回る。


 役割分担をしてリーンに挑むものの、どうしても押し切ることができない。

 敵の火力は圧倒的。

 俺達全員の攻撃を足しても、なお上回るほど。


 機動力は俺達の方が上だけど、防御力が半端じゃない。

 攻撃なんて受け止めればいいとばかりに、まったく避けようとしていない。

 まるで要塞だ。


「くそっ」


 ニーナのおかげでこちらの攻撃が届くようになり、さらに、被弾率も激減した。

 それでも、あと一歩、足りない。

 でたらめな魔力障壁を撃ち抜くような、絶対的な火力があれば……!


「うにゃー、私もニーナみたいに変身できれば!」


 俺と同じようなことを考えているらしく、カナデが焦れったそうに言う。


「ないものねだりをしても仕方ない」


 ファイヤボールを撃ち、牽制しつつ、隙を伺う。


「連携でいくぞ!」

「うんっ」

「私も続くよ」


 俺、カナデ、シグレさんの三人で連携を仕掛ける。

 しかし、リーンの圧倒的な火力をくぐり抜けることは難しく……


 例え突破できたとしても、多重障壁を展開されて、ガードされてしまう。

 カナデの力をもってしても、突破することはできない。


 攻守ともに完璧。

 くそっ、なんて厄介な……まさか、リーンがこれだけの力を手に入れるなんて。


「あはははっ、ちょっと焦ったけど、やっぱり大したことないじゃん。雑魚は雑魚のまま。あんたら全員、あたしが殺してあげる。あぁ、安心して。ちゃんと仲間も、全員皆殺しにしてあげるから。仲良くあの世に送ってあげるわよっ」


 ガァッ!!!


 何度目になるかわからない超級魔法らしきものが炸裂した。

 ふんばることができず、大きく吹き飛ばされてしまう。


 その間に、リーンは第二射の準備をして……


「させるか!」

「っ!?」


 ナルカミからワイヤーを放ち、リーンに絡ませた。

 障壁ごと包み込むような動きなので、さすがにこれは防ぐことはできなかったらしい。


 ワイヤーに攻撃力はないが……

 今はこれで十分。


 ワイヤーを引き戻す。

 俺の体が引っ張られるようにして、リーンに近づいて……


「このっ!」

「レインっ、あんた!」


 獣が飛びかかるようにして、リーンにカムイを突き立てた。


 結果は……不発だ。

 あと一歩のところで障壁に阻まれてしまい、刃が届かない。


 リーンがニヤリと笑う。


「ざーんねん。あと一歩でした」

「くっ!」

「でも、ヒヤっとしたから……そのお礼をしてあげるわよぉっ!!!」


 リーンの手の平が俺の胸元にあてられて……


 やばい、と思うのだけど、間に合わない。


「っ!!!?」


 強烈な衝撃がゼロ距離で叩きつけられて、俺は意識を飛ばした。

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― 新着の感想 ―
[一言] レインは1人飛び抜けて弱すぎ。 カナデ覚醒フラグは立ったけど、全くパワーが通用しない状態から、覚醒しただけで事態が好転するとは思えない。 他もやっぱり弱い。誰か、ソラに代わる殺人料理人はいな…
[気になる点] 更新お疲れ様です。 ※以前書いた感想の同じに近い感想で失礼します。 ナルカミのワイヤー、拘束はできるけど 攻撃力がないのが、確かに難点ですね。 せっかく敵を拘束したのにもったいない…
[一言] レインがやばいことになってるーーー!? >ソラ「デザートもどうぞ^^」 こうなったら、コイツをリーンの口内にシュゥゥゥーッ!!として超!エキサイティンだ!! ですからこれはワタクシの口内…
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