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419話 守らなければいけないもの

「このっ……ギガボルトッ!!!」


 シフォンの雷魔法がダンジョンの通路を駆け抜けた。

 それは、さながら竜。

 進路上に立ちはだかる魔物を全て食らい、その奥に群れる敵も殲滅する。

 勇者の力にふさわしい、圧倒的な威力だ。


「ブラッドシュート」


 リファが親指を噛み、そこから流れる血で弾丸を生成。

 いつもなら、このまま普通に射出するだけなのだけど……


「回って」


 血の弾丸が横に回転を始めた。

 キィイイイッ! と音がするほどに激しく回転したところで、魔物に向けて飛ぶ。

 回転していることで、血の弾丸は魔物の体をえぐり、普段以上の貫通力があった。

 そんなものを無数に生成して連射しているものだから、敵としてはたまらないだろう。


「ニーナ、いくよ!」

「んっ」


 カナデとニーナが互いの顔を見て、なにかを示し合わすかのように頷いた。


 そして、ニーナが空間に穴を空ける。

 その出口は、魔物達の直上。


「うにゃんっ!」


 カナデがニーナの空けた穴に拳を突っ込み……


 ゴンッ!


 その拳は空間を跳躍して、魔物達の頭上に振り下ろされる。

 ニーナの能力を応用することで、カナデの遠距離攻撃が可能に。

 しかし……それ、反則じゃないか?

 防ぐことはかなり難しく、敵からしたら厄介極まりない攻撃だ。


「燃え尽きなさいっ!!!」


 エルフィンさんが紅蓮の炎を撒き散らして、魔物をまとめて十匹ほど炭に変えた。

 魔石がゴロゴロと転がり落ちる。


 とんでもない攻撃力だ。

 俺、あんな力を持つエルフィンさんの前に立ちはだかったのか……もう一度やれと言われたら、恐怖に震えてしまうかもしれない。

 いや、まあ。

 必要ならやるけどさ。


「にゃー……レイン、どうしたの?」


 鋭くこちらの様子を察したカナデが、訝しげな目を。


「いや、なんでもないよ」

「もしかして、私達がいない間、無茶をしなかった?」

「……してないさ」

「今の間、ものすごく怪しいんだけど!」

「それよりも、ほら、今は魔物を迎撃するぞ」

「にゃー……後で話を聞かせてもらうんだからねっ」


 それは、もちろん構わない。

 隠し事は、俺も望まない。

 ただ……それだけの余力が残っているかどうか。


 魔物の群れのさらに奥……空間が大きく歪んでいる。

 そこから魔物が次々と現れていて、倒しても倒してもキリがない。


 どうにかして、ニーナをあそこまで連れていき、空間の歪みを正常に戻してもらわないといけないのだけど……なかなかに厳しい。

 こちらには、エルフィンさんだけではなくて、フィーニア、それに他の不死鳥族もいる。

 そして、カナデ達がいる。

 攻撃力に問題はない。


 ただ、敵の出現数が異常だ。

 一匹撃破する間に二匹現れているような感じで、じわじわと追い詰められていた。


「人間、まだ余裕はありますか?」


 炎を放ち、魔物を燃やしつつ、エルフィンさんが尋ねてきた。


「それは、もちろん」

「なら、私達が道を切り開きます。その間に、歪みを消してきてください」

「それは……できません」

「なぜなのか、理由を聞きましょうか」

「今、俺達が防衛から消えたら、一気に押し込まれてしまいます。そうしたら、この後ろの居住区に魔物がなだれこんでしまう。それはダメです。不死鳥族とはいえ、戦えない人もいるでしょう?」

「……先の繰り返しになりますが、あなたは人間なのに、私達の心配をしているのですか?」

「そりゃしますよ。俺は別に、不死鳥族を嫌ってなんかいないんですから」

「私に焼かれたというのに? それなのに、嫌いではないと言うのですか?」

「はい。俺達が不死鳥族の力を貸してほしい、っていうのもあるけど……でも、それだけじゃないです。実際に接して、それとフィーニアと一緒にいて……不死鳥族は、とても優しい種族だって、そのことがわかりましたから」

「……優しい……」


 時に、その炎で敵を焼くことはある。

 でも、不死鳥族の本質はそんなところにない。

 フィーニアが見せてくれた、優しい炎……あれこそが不死鳥族の本質なのだと思う。


 己の炎で相手を包み込み、全てを癒す……全てを受け入れる。

 そんな優しさを持つ種族なのだ。


「だから俺は、そんなあなた達を守りたい。力を貸してほしいとか、そういうことは抜きにしても……隣を歩いていくために、前に立つんです」

「……それならば」


 エルフィンさんがこちらを見て……

 そして、ほんのわずかにだけど笑う。


「私達を信じなさい」

「……エルフィンさん……」

「確かに、魔物の勢いは厄介です。ですが、少しならば持ちこたえることができます。居住区に一匹たりとも向かわせません。だから……その間に、歪みをなんとかしなさい」

「それは、でも……」

「私は……あなたを、レイン・シュラウドという人間を信じることにしました」

「っ!?」

「ですから、あなたも私達を信じなさい」

「……はいっ!」


 ようやくエルフィンさんに信じてもらうことができた。

 こんな時になんだけど、そのことがたまらなくうれしい。


 不思議と力が湧いてくる。

 今ならなんでもできそうだ。


「みんなっ!」

「うん、話は聞いていたよ!」

「ニーナちゃんを、あそこに連れていけばいいんだよね?」

「ニーナ、できそう?」

「んっ……がん、ばる!」


 任せておいて、と言うように、ニーナは小さな拳をぎゅっと握る。

 そんな彼女の頭をぽんぽんと撫でてから、


「カナデ! シフォン! まずは、俺達で道を切り開くぞっ」

「らにゃー!」

「了解だよ!」


 三人で突撃。

 カナデがその豪腕で最前列の魔物をまとめて吹き飛ばした後、俺とシフォンが魔法でその奥の敵を一掃する。

 かなりの数を消し飛ばすことができたが、すぐに増援が出現する。

 しかし、それよりも先に、リファが行動を起こす。


「吹き荒れて……ブラッドテンペスト」


 血の弾丸が一箇所に集まり、渦を巻いて嵐と化す。

 通路を塞ぐ魔物達を一気に飲み込み、切り裂いていく。


「ニーナ!」

「んっ!」


 ニーナを抱えて、一気に駆け抜ける。

 あと五歩。

 あと三歩。

 あと一歩。


 そして……


「届いた……よっ!」


 ニーナが歪みの中心に触れた。

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◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
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ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そろそろリーンは退場でいいんじゃないですかね?出来れば読者の皆さんが「納得」する形で(不死鳥族に焼かれる。闇水晶が暴発して魔族化する。モニカニ見捨てられて、苦悶の極みで消える。ソラの料…
[一言] ……ありがとう、エルフィン。
[良い点] 更新お疲れ様です。 レインが、不死鳥族の癒しの炎に触れて『優しい種族』だという本質を見抜き、エルフィンさんに伝えたのが レイン・シュラウドという人間を信じる決定打になったかなと思いました…
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