418話 仲間と一緒に
「って、待てよ?」
最初、ダンジョン下層でリーンと遭遇した時のことを思い出した。
あの時、リーンとモニカは空間の歪みから現れた。
そんな現象を、俺はよく見ている。
「……ニーナだ」
どんなことをして得たものか知らないが、リーンの能力はニーナのものとよく似ている。
おそらく、空間を操るという、同じ性質をしているのだろう。
ニーナに頼めば、もしかしたら……
「エルフィンさん、仲間を……ニーナを牢から出してもらえませんか? 今、捕まっているんですよね?」
「なんですか、突然。あなたのことは多少は理解したものの、全て心を許したわけではありません。そのような願いは……」
「ニーナがいれば、この事態を打開できるかもしれないんです」
「……それは、本当ですか?」
「ニーナは、空間を操ることができる。その能力を使って、魔物の出現を止められるかもしれない」
「げっ。そういやあのちびっ子、そんなことできたっけ……」
後ろで話を聞いていたリーンが、苦い顔に。
あからさまな反応で、もしかしたら罠……ということはないか。
リーンは、そういう腹芸は苦手なはずだ。
常に自信たっぷりでプライドが高い。
そんな性格をしているから、弱みを見せて動揺やミスを誘う……なんていう作戦はとれないのだ。
そんなことをしたら相手に屈したつもりになる、という理由で。
「……なるほど。確かに、効果的なのかもしれませんね」
「居住区に魔物が現れているんですよね? このまま放っておいたら、どれだけの被害が出るか……お願いします!」
「一つ聞きますが、なぜ、そこまで必死なのですか? あなたからしたら、私達はなにも関係のない相手。どうなろうが知ったことではないはず。それとも、恩を売ろうとしているのですか?」
「あーもうっ……!」
人間を敵視していることは理解できる。
詳しいことはわからないが、イリスのように、ひどい経験をしたのだろう。
でも、だからといって……こんな非常時にまで争うことはないだろう!
「誰かが傷ついているかもしれないんだっ、泣いているかもしれないんだっ。それを助けたいと思うことが、そんなにおかしいことかっ!!!? 恩を売るとかどうでもいいっ、俺はもう……」
傷ついたイリスの姿が脳裏に浮かぶ。
「誰かが傷ついて、辛い思いをすることがイヤなんだっ!!!」
「っ!?」
エルフィンさんがはっと息を飲む。
しまった。
感情に任せて、ついつい荒い言葉で言い放ってしまったのだけど……
気を悪くしていないだろうか?
「そう……ですね。理由もなく、誰かを助けたいと思う……それこそが人間の……」
「えっと……エルフィンさん?」
「あなたの言うとおりにしましょう」
「え? それじゃあ……」
「今は、魔物の対処に専念します。そこの人間の処遇や、あなたの事情については……その後に話し合うことにしましょう」
「はいっ!」
よかった、理解してくれたみたいだ。
安堵するものの……
でも、まだ気を抜くことはできない。
むしろ、これからが本番だ。
誰一人、犠牲を出すことなく魔物を排除してみせないと。
「あ、あの……魔物のことなのですが……」
報告に来た人が、恐る恐る言う。
「現在、そこの人間の仲間が……魔物の対処をしています」
「えっ」
「……どういう意味ですか?」
思わぬことを聞かされて、俺とエルフィンさんは、同時に不思議そうな顔に。
「この人間の仲間は牢に閉じ込めておいたはずですが?」
「それが、その……いつの間にか脱獄していたらしく……すみません!」
「いえ……相手は、最強種が混じっています。それだけのことをしても不思議ではありませんが……それならなぜ、逃げることなく、魔物の相手を?」
「それはわかりませんが……彼女達のおかげで、大きな被害が出ることなく、なんとか魔物を押し止めることに成功しています」
俺にはわかる。
カナデ達は、魔物に襲われている不死鳥族の人達を見て……
見捨てることができず、助けに入ったのだろう。
頼りになる仲間達は、そんな誇らしい子達なのだ。
「お、お母さん……ワタシ達も……!」
「……そうですね。考えるのは後にしましょう。あなたと……それと、他に人を寄越します。ここに残り、そこの人間達を見張るように。残りは魔物の対処に向かいます」
方針が決まれば行動が早い。
さすが長というべきか。
数人の不死鳥族にリーンとモニカのことを任せて、俺達は急いで現場に向かう。
ダンジョンもとい、不死鳥族の里を走り続けること数分。
喧騒が聞こえるようになり、その現場の中心に近づいていく。
「うにゃーっ!」
ほどなくして、聞き慣れた元気いっぱいの声が聞こえてきた。
最後に角を曲がると、
「うにゃんっ!」
カナデが自慢の腕力で、魔物を殴り倒していた。
「メガボルトッ!」
シフォンが勇者だけしか使えない魔法で、魔物を消し炭に変えていた。
「ばい、ばい」
ニーナが魔物を亜空間に放り込む。
その行き先は……不明だ。
「ブラッドサイズ……斬るっ」
リファが血の鎌を生成して、魔物を両断した。
奥に空間の歪みが見えて、そこから途切れることなく魔物があふれだしている。
その先に、不死鳥族の居住区。
不安そうな顔をした子供や老人達が見える。
ただ、そこに魔物の凶刃が届くことはない。
みんなが獅子奮迅の活躍を見せていて、そのことごとくを返り討ちにしていた。
さすがだ。
ピンチではあるけれど、そんな時ほど頼りになる。
自慢の仲間だ。
「みんなっ!」
「にゃっ!? レイン!?」
「えっ、レイン君!? 無事だったの?」
「レイン、捕まった……って」
「大丈夫? 怪我していない?」
「それは俺のセリフだよ。まあ、見ての通り、俺は大丈夫。なにも問題はない」
ちょっと前、エルフィンさんに焼かれてしまい、瀕死の状態に陥っていたのだけど……
それを口にしたらややこしくなることは間違いないため、黙っておくことにした。
「レイン、レイン。これ、どういうことにゃの!? レインが捕まったって聞いて脱獄してみたら、なんかいきなり魔物が現れるし……うにゃんっ、しつこい!」
話の邪魔というように、突撃してくる魔物をカナデが蹴り倒していた。
「説明は後だ! とにかく、この魔物達を撃退するぞ。この後ろは居住区で、子供や老人達がいる。絶対に手は出させないぞ!」
「「「おーっ!!!」」」
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