417話 新たな混乱
なんとか釈明の機会を得ることができた。
それもみんな、フィーニアのおかげだ。
感謝しかない。
全て落ち着いたら、改めてお礼を言いたいと思う。
そうすることができるように……
まずは、きちんと説明をして、俺達に敵意がないことをエルフィンさんに納得してもらわないと。
「そもそも、今回の事件の原因は……」
サクラが捕まえているリーンとモニカを見て、彼女達が全ての元凶であることを告げる。
すると、リーンが慌てた様子で、にっこりと笑いつつこちらに声をかけてくる。
「ちょっと、レイン。ひどいじゃない。あたし達仲間でしょ? 一緒に苦楽を共にしてきたのに、そんなあたしを売って自分だけ助かろうとするなんて……」
「リーンは仲間じゃない」
「っ……!」
甘い言葉をささやいて俺の同情を買おうとしているのだろう。
あるいは、俺と仲間だとエルフィンさんに誤解させることで、一人、罰を受けることを避けようとしている。
道連れにしようとしている。
なんて質の悪い。
リーンのことを知らないエルフィンさんにとって、その言葉は真実と捉えてしまうかもしれない。
俺が必死に否定しても、命惜しさに仲間を売ろうとしている、と取られるかもしれない。
「……ふむ」
エルフィンさんは、まずはリーンを見た。
三十秒ほど、じっと見つめた後、今度は俺を見る。
同じく三十秒ほど見てから、小さく口を開く。
「あなたが捕まえている、そこの人間は……私がよく知る人間の目をしていますね。濁り、淀み、己のことしか考えていない愚か者の目。あなたの言うことは、おそらくは正しいのでしょう」
「それじゃあ……」
「ただ、次の長となるフィーニアが一時的にさらわれて、さらに、呀狼族との交流に泥を塗るような真似をされた。事が事だけに、さすがに、私一人で判断を下すわけにはいきません。同胞達の意見も聞かなくてはなりません」
「そうですね……はい」
「私は……あなたが敵ではないと証言しましょう」
「あっ……」
「勘違いしないように。あなたの全てを信じたわけではありません。変わらず、人間は敵です。しかし……フィーニアを変えた力。そして、あそこまで己の身を捧げることができる覚悟。全ては無理ですが……少しくらいは信じてもいいでしょう」
「ありがとうございます」
少しではあるが、なんとか信頼を得ることができた。
この状態をキープして……
育て、いつか大きな信頼にできるように、がんばりたいと思う。
そのためにも、まずは、エルフィンさんだけじゃなくて、不死鳥族全体の誤解を解かなければならない。
真犯人であるリーンとモニカを差し出す。
生贄みたいだけど……
まあ、自業自得だ。
ろくでもない結末しか迎えないだろうけど、そこは諦めてもらおう。
今までしてきたことを考えると、同情の余地はない。
「ちょっと、ふざけないでよっ!? あたしを差し出して自分だけ助かろうっていうの!? あたし達仲間じゃない! ひどいっ、ひどい裏切りだわ! 絶対に許せないんだから! ちょっと、無視してないでなにかいいなさいよっ、こら!」
往生際が悪く、リーンはぎゃあぎゃあと騒いでいた。
今まで、色々と好き勝手をしてきて……
その報いをまったく受けることがないと、本気でそう信じていたのだろうか?
だとしたら、怒りを通り越して呆れてしまう。
リーンはどこまで身勝手なのだろう?
「……」
それにしても……モニカはやけに静かだな?
特に表情を変えるわけでもなく、平静を保っている。
諦めたのだろうか?
それとも、動揺を表に出すことなく、裏で色々と策を考えているのだろうか?
「……いや。まてよ、これは……?」
俺は、なにか重大なことを見落としているのでは?
漠然とした不安と疑問を覚える。
それを解決するために、俺はモニカのところへ……
「長っ、大変です!」
部屋の扉がけたたましく開かれて、一人の不死鳥族が姿を見せた。
額に汗を浮かべていて、なにやらひどく慌てている。
「どうしたのですか、騒々しい」
「す、すみません。しかし、非常事態でして……」
「……なにか起きたのですか?」
「居住区に、突然魔物が現れて……」
「なんですって!?」
俺の仕業か? というような感じで、エルフィンさんがこちらを睨みつける。
慌てて首を横に振る。
「四層の魔物が上に来たのですか?」
「い、いえ。そのようなことはありません。レースのために、一時開いていましたが、今はいつも通りに厳重に封鎖しています。それと、目撃者の話によると、なにもないところから突然魔物が現れているらしく……」
「それは……」
レースの際、俺達が遭遇した現象とまったく同じじゃないか。
あの事件の犯人は、おそらくはリーン。
しかし、リーンは今、こうして俺達が捕まえている。
そうなると、犯人候補は他の人物ということに……
「って、まさか……!?」
慌ててリーンを見る。
リーンの顔は……してやったりという感じで、ニヤリと笑っていた。
「おいっ、なにをした!?」
「さて、なんのことかしら……って、とぼけてもいいんだけど、せっかくだから教えてあげる。時限式の魔物の召喚装置を設置しておいたの」
「そんなもの、いつの間に……」
「けっこう楽だったわよ? 大して警戒もされていないし、侵入し放題。人を嫌って奥地に引きこもったものの、一緒に警戒心も忘れちゃうなんてね。もしくは、自分達は最強種だから敵なんていない、とか思ってたのかしら? あはははっ、ごうまーん」
「……その人間、焼いてもいいですか?」
「気持ちはわかりますが、ちょっと待ってください」
ついついエルフィンさんに同意したくなるものの、それはダメだ。
というか、まだ早い。
この事態を引き起こしたのがリーンならば、収める手段もあるはず。
でなければ、自分の仕業なんて言わない。
「どうすれば、魔物の召喚装置とやらを止めることができる?」
「さてね、どうだったかしら? 拘束された状態じゃあ、きちんとものを考えられないし、まずは自由にしてくれないと」
「捕まった時の保険、か……」
どちらかというと直情的なリーンが、後のことをしっかりと考えて行動していたなんて、ちょっと考えづらい。
そうなると……誰かの入れ知恵だろうか?
モニカ辺りが怪しいが、今はそのことを追求している時間はない。
「敵の勢力などの現状はどうなっています?」
「えっ? なんで捕まえたはずの人間が……」
「それについては、後で説明します。話してあげなさい」
「は、はいっ」
怪訝そうにされてしまうが、エルフィンさんの一言で話を先に進めることができる。
感謝だ。
「現状、C~Bランクほどの魔物が次から次に現れている状態でして……数が多く、抑え込むことができません。また、場所が悪いです。居住区のため、子供や老人を守りながらの戦いとなり、全力で制圧することができず……」
「苦戦を強いられている、というわけですか……なるほど、現状はわかりました」
エルフィンさんが苦い顔になる。
それからリーンのところへ歩み寄り、その手に炎を生み出して、それを突きつける。
「あなたの仕業と言いましたね? 今すぐに収めなさい。でなければ、焼きます」
「……あたしがいなくなれば、絶対に止めることができなくなるわよ? 今は小さい穴だけど、一度発動したら、時間経過と共にどんどん広がっていくの。魔物の数も増えるし、より強力な魔物も侵入してくるかもね」
「……」
「あたしを解放するなら、考えてやらないでもないけど?」
「……くっ」
エルフィンさんは、リーンを焼き殺したい、というような物騒な顔をしているものの、それを実行することができない。
リーンの言葉が本当だとしたら、迂闊に手を出すわけにはいかない。
無尽蔵に魔物が湧くように設定されていて、リーンしか止められないようになっているとしたら……アウト。
この状況……どうすればいい?
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