415話 ワタシも……
「……どうして」
ワタシはレインさんから目が離せなくなっていました。
お母さんを相手にするだけでも相当な無茶無謀なのに……
その上で、攻撃はおろか防御すらしない。
そうすることで、自分に敵意はないと示している。
むちゃくちゃです。
そんなことをしても意味なんてありません。
お母さんは、とても厳しい人です。
甘い人ではありません。
いくらレインさんが敵意がないことを示したとしても、それで納得するなんてことはありません。
この事態を招いた責任を求めて、レインさんを徹底的に排除します。
和解すること、分かり合うことなんてできません。
不可能です。
そのことはレインさんもわかっているはず。
その肌で、お母さんの強烈な敵意と憎しみ、殺意を味わっているはず。
普通に考えて、無理だと諦めるはず。
それなのに……
「ぐっ……うううぅ!!!」
一度、倒れたはずのレインさんは、再び立ち上がりました。
喉が焼かれていて、もうまともにしゃべれないのだと思います。
そもそも、全身に火傷が広がり、もう……致命傷です。
それなのに、
「俺……はっ……!」
レインさんは、なに一つ諦めていませんでした。
その瞳が語っています。
必ず、お母さんを説得してみせる。
そして力を貸してもらう。
最後に、助けたい人を助けてみせる。
そんな力強い意思が見えました。
「なんて……」
すごい人なのだろう。
ワタシは自分の立場も忘れて、すっかりレインさんに見入ってしまいました。
どんな状態になっても、どんな苦境に陥ったとしても。
決して諦めることなく、前に向かって歩き続ける。
例え倒れたとしても、そこで終わりにしない。
必ず立ち上がり、這いつくばってでも目的を達成する。
無様な姿を晒すことなんてまるで気にしていない。
プライド?
そんなものは関係ない。
誰かのために。
ただそれだけを思い、この人は前に歩いているんだ。
「ワタシ……は……」
レインさんを見ていると、なんともいえない気持ちになる。
ワタシは、ここでぼーっと見ていていいのでしょうか?
なにもしないで、いいのでしょうか?
お母さんの説得を早々に諦めて、状況に流されて、レインさんを見殺しにして……
果たして、それでいいのでしょうか?
今後、後悔しないのでしょうか?
……笑うことができるのでしょうか?
「ワタシ……はっ!」
長の娘という期待。
周囲からのプレッシャー。
逃げられない、弱音を吐くことも許されない。
そんなことで悩んでいるワタシだけど……
でも、今、ワタシにできることがある。
ワタシにしかできないことがある!!!
それは……
「お母さんっ!!!」
ワタシはレインさんの前に飛び出しました。
そして炎を操り、お母さんの攻撃を相殺。
レインさんを助けます。
「なにをしているのですか、フィーニア」
「わ、ワタシは……」
「その人間は敵です。我らの里に災いをもたらす者……ここで排除しなければなりません」
「そ、そんなの……おかしいですっ!!!」
「っ……!?」
ワタシがお母さんにハッキリと反抗するなんて、初めてのこと。
さすがにびっくりしたらしく、お母さんは目を大きくします。
「だってレインさんは……こんなボロボロになっても、なにもしていません。わ、ワタシ達に信じてほしいと、その体をもって行動しています。それなのに信じないなんて……そ、それは……お、お母さんの方がおかしいですっ」
「……あなたはまだ幼いから、人間の愚かさがわからないのです。我が身を犠牲にしようとする者もいれば、他人を笑いながら蹴落とす者もいる。そして、人間は……最終的に、全ての種族を食い物にする。そんな種族なのですよ」
「レインさんは……そ、そんなことしませんっ!」
「どうして、そう言い切れるのですか? 根拠は? 納得できる判断材料は?」
今のレインさんを見ても、なお攻撃を続けられるような人。
そんなお母さんに、レインさんのがんばりを説いても無駄なのかもしれません。
ワタシの説得も、たぶん、届かないのだと思います。
ダメダメな子だから……
お母さんを説得できるだけの声の力がないんです。
悔しいです。
ダメダメな自分が情けないです。
でも。
でもでもでも!!!
ここで諦めるなんてこと、絶対にしたくないです。
レインさんは諦めなかった。
こんなになっても、まだ諦めていない。
だから、ワタシも……!
「ワタシは……レインさんの味方になりますっ!」
「……っ……」
詰まることなく、キッパリと言い切ることができた。
そんなワタシを見て、お母さんは再び驚くような顔に。
お母さんに構うことなく、ワタシはレインさんを支えます。
体のあちこちは焼け焦げていてボロボロ。
生きているのが不思議なくらいで、もう数分も保たないでしょう。
でも……そんなことはダメ。
レインさんが死んでしまうなんて、ワタシは許しません。
不許可です!
「今……治しますね」
ワタシは、己につけられている首輪を外しました。
力が制御できないからと、安定するための魔道具。
でも、今はそれが邪魔です。
レインさんを助けるためには、ありったけの力が必要なんです。
「オンッ!」
サクラちゃんが、ワタシの応援をするように吠えました。
ありがとう。
ワタシ……がんばります!
そして……ワタシは炎を出現させて、それでレインさんを包み込みました。
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