409話 作戦変更
「あれだけの数は、さすがに厄介だな……」
「ど、どうしましょうっ?」
「……ひとまず、試してみよう」
今までと同じように小動物と仮契約をした。
こっそりと移動させて、ガサガサと物音を立ててもらう。
「ん? なんの音だ?」
「誰かいるのか!?」
「よし、二人で確認してこい。陽動という可能性もある。残りはここで待機して、入り口をしっかりと守るぞ」
二人、引き離すことはできたが、残り八人以上は入り口に張り付いたままだ。
引き離した二人も、五分ほどで戻ってきてしまう。
「これは……鉄壁の守りだな」
「ど、どうやって侵入しましょう?」
「うーん」
様子をうかがいつつ、策を考える。
隣にいるフィーニアが、そんな俺に期待するような目を向ける。
サクラも期待しているような感じで、じっとこちらを見つめていた。
奇抜な策を考え出して、この二人の期待に応えたい。
応えたいのだけど……
「無理だな」
「えっ……」
「誰にも気づかれることなく、あの鉄壁の守備をすり抜けるなんてことは不可能だ」
「そ、そんな……」
「あるいは時間をかけて……いや、それもダメか」
時間をかけてしまうほど、相手の準備が整ってしまう。
今以上に、本格的な『狩り』が始まるだろう。
それに、一度こじれた糸はどんどん複雑に絡み合う。
できるなら、早いタイミングでほどいておきたいところだ。
とはいえ、無策で突っ込むわけにはいかない。
失敗したらそこで終わり。
やり直しなんてきかない。
「どうするか……?」
「……あ、あのっ」
「うん?」
なにかを決意したような感じで、フィーニアがこちらを見た。
「えと、その、あの……」
「落ち着いて。話があるならちゃんと聞くから、フィーニアの言葉でしっかりと伝えてほしい」
「あ……」
「どうかした?」
「……レインさんは、いつもワタシが欲しい言葉をくれるんですね。それに、その……背中を押してくれます。人間なのに、頼りになります」
「そうかな? よくわからないけど……でも、そうだとうれしいよ」
「そ、その……ワタシに考えがあります」
フィーニアは両手を胸の前でぎゅっと握り、必死のポーズで訴えてくる。
「わ、ワタシに捕まってくれませんかっ?」
――――――――――
「おいっ、この感じは……」
「わかっている、人間の匂いと気配だ。近づいてくるな」
「真正面から堂々と……バカにしているのか? まあいい。総員、迎え撃つぞ!」
「あ、あのぉ……」
ピリピリとした雰囲気にビクビクしつつ、ワタシは物陰からそっと顔を出した。
すると、みんなの顔が驚きに。
「フィーニア!?」
「よかった、無事だったのか。人間の罠にハメられたと聞いて、心配していたぞ」
「でも、おかしいな? 人間の匂いと気配もしたような気がしたのだが……?」
「そ、そのことなんですけど……サクラちゃん」
「オンッ!」
姿を見せたのは、サクラちゃん。
その背中に、リーンとモニカっていう女の人を乗せていて……
さらに、レインさんを後ろ手に拘束する縄を口に咥えていた。
「そ、その人間のことなんですけど……ワタシ、捕まえました」
「「「なんだとっ!!!?」」」
みんな、一斉に驚きました。
ワタシなんかに、と思っているのかもしれません。
うぅ……正当な評価かもしれないですが、ちょっと凹みます。
「あ、いや……すごいな、フィーニア。よくやった!」
「大手柄だな。見直したよ」
「え、えへへ……」
「よし。さっそくその人間達を尋問するぞ。お前達は、長に報告を頼む!」
「さあ、フィーニア。そいつらを渡してくれ」
「え、えと、そのことなんですけど……わ、ワタシに任せてくれませんか!?」
「なに?」
「まずは、その……おかあさ……長に報告をしないといけないと思うんです。で、その場にこの人間達も一緒にいた方が、色々と話が早いと思いますし……」
「そうかもしれないが、それなら、なおのこと俺達に任せてくれないか?」
「ああ、そうだ。フィーニアは色々とあって、疲れているだろう。休んだ方がいい」
「あうあう……」
もっともなことを言われてしまい、一瞬、わかりましたと頷いてしまいそうになる。
でも、そんなことはできません。
そうしたら、せっかく考えた作戦がパーです。
「えと、えと……わ、ワタシにやらせてください!」
「フィーニア?」
「ワタシは、その……長の娘、ですからっ。ちゃんと成長しているところを、その……き、きちんと見せないといけないんですっ!」
勢い込んで言う。
ちょっと強引だけど、納得してくれたかな……?
恐る恐るみんなの顔を見る。
「あのフィーニアが、こんなことを言うなんて……」
「そっか、いつの間にか成長していたんだな……」
みんな、とても感慨深い顔をしていた。
うぅ……罪悪感。
根本的に、今回の事件を解決するためとはいえ、みんなを裏切っているみたいですごくもうしわけない気持ちになります。
「わかった、それじゃあフィーニアに任せるよ」
「俺達は、念の為に周囲の警戒を続けよう」
「お、お願いします」
笑みを浮かべつつ、扉をくぐり、里の中へ。
誰もいないところに来て、ふはあああぁーーー、と大きな吐息をこぼす。
「う、うまくいきました……いきました、よね?」
「ああ、大丈夫だと思う」
返事をしたのはレインさん。
がんばったね、と褒めてくれるように、にっこりと笑ってみせます。
「俺を捕まえたフリをして、そのまま里に潜入する……うん。すごく良い作戦だと思う。実際に、こうしてうまくいっているからな」
「え、えへへ……ちょっと危なかったですけど、なんとかうまくいきました」
こっそり潜入するのが無理なら、堂々と真正面から行けばいい。
そんなことを考えて、今回の作戦を思いつきました。
ワタシが裏切ればどうなるか。
すごく分の悪い賭けになると思うんですけど、でも、レインさんはワタシを信頼してくれました。
なら、ワタシはそれに応えないといけないと思うんです。
相手が同じ仲間だとしても、人間だとしても。
信頼された以上は、全力でがんばるべきです。
「ワタシ……が、がんばりますっ!」
ひとまず1週間ほど、更新が停止します。
詳細は活動報告にて。




