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403話 捕縛完了

「な、なにこれ……体が……」

「くっ……これは、いったい……?」


 リーンは必死になって起き上がろうとした。

 しかし、手足が痺れ、まともに力が入らない。

 指先を動かすのが精一杯で、ただただもがくことしかできない。


「この……ハチは……?」


 ふと、視界の端をハチが飛ぶのが見えた。

 見たことはないが、知っている。

 以前、アリオスから聞いたことがある。

 アールビーという、麻痺毒を持つハチだ。

 レインと戦った時、卑怯な手を使われたと、いつだったかアリオスが愚痴をこぼしていた時がある。


 その時のことを思い出したリーンは、ハッとなる。


「まさか、これ……あの雑魚の仕業じゃあ……」

「正解だ」




――――――――――




 うまい具合にリーンとモニカを発見することができた。

 さらに、アールビーにお願いをして、麻痺させることにも成功。

 完璧といっていい成果だ。


「あんた、いつの間に……っていうか、どうやって、あたしらの居場所を……」

「律儀にそいつを教えてやる必要はないな」

「くっ……」


 リーンが自由にならない体を無理矢理に動かして、水晶で作られたような透明な杖に手を伸ばそうとするが、


「グルルルゥッ!」


 サクラが回り込み、威圧することで阻止する。


「あ、あなたも、その……う、動かないでくださいね? ホント、お願いしますね……?」


 フィーニアは恐る恐る、モニカを後ろ手に縛り上げていた。

 相手が麻痺していても人は怖いらしく、とてもビクビクしている。


 ただ、油断するよりは良い。

 フィーニアは怯えているものの、反撃されないように慎重に事を進めている。

 これならば、万が一反撃をされても、遅れを取ることはないだろう。


 抵抗しても無駄。

 そのことを理解しているらしく、モニカはおとなしくしていた。


 ただ……色々な事件に関わり、裏であれこれと画策してきた相手だ。

 素直に捕まるとは思えない。

 今は抵抗できないのかもしれないが、隙見て……ということは、絶対に考えているだろう。

 気を抜かないようにしないといけないな。


「さて……どうして、こんなところにいるのか? なぜ、あんなことができたのか? いったい、なにを企んでいるのか? 全部吐いてもらうぞ」

「く、そぉっ……このあたしが、こんなゴミ虫、なんかにぃ……!」

「と、言いたいところだが……それは後回しにしよう」

「えっ? い、いいんですか……? 絶好のチャンスだと思うんですけど……」


 フィーニアがキョトンとして、問いかけてくる。

 その間も、しっかりとモニカの拘束を強めていた。

 おどおどしているところはあるが、基本的に優秀な子なんだろうな。

 伊達に里の長の娘ではない、ということか。さすがだ。


「確かに、色々と知りたいところだ。捕まえることができたとはいえ、今後、どうなるかわからないし……今しかチャンスはないのかもしれない」

「なら……」

「でも、なによりも今は、不死鳥族の里に戻らないと。たぶん、俺が仲間を忍ばせていたと勘違いしていると思うし……あと、リーンとモニカが俺に対する嫌がらせだけで現れたとは思えない。きっと、ろくでもないことを仕込んでいるはず。それを先になんとかしないと」

「な、なるほど……」

「フィーニアは反対か?」

「えっと、その……」

「慌てなくていいよ。フィーニアの思う、素直な意見を聞かせてほしい」


 迷うような感じで、フィーニアはあちらこちらに視線を飛ばした。

 少しして、こちらに視線を戻す。


「あ、あの……ワタシも……そ、それでいいと思います。今、問い詰めても、その……本当のことを言うかわからないですし。それよりも、まずは誤解を解いて……無用な争いは避けるべきだと、そう思います」

「貴重な意見、ありがとう」

「ワタシの意見が……貴重? それは、ほ、本当に?」

「うん? もちろんだ。俺一人じゃあ、どうしても視野が狭くなるし、誰かの意見は欲しいよ。それに、フィーニアはエルフィンさんの娘だから、考え方とかすごく参考になるし……うん、助かるよ。ありがとう」

「……」


 なぜか、ぽかんとする。

 俺、なにか変なことを言っただろうか?


「フィーニア?」

「……はっ!?」


 意識が飛んでいたのか、俺の問いかけにビクリと震えた。


「わ、ワタシなんかに、ありがとう……って。あわわわ……そ、そんな恐れ多い言葉……あうあう」

「フィーニア?」

「人間なんかに褒められても、うれしくなんてないはずなのに……あぅ、でも、このドキドキは……うぅ、こんな風に褒められるの初めてだから、なのかな? でもでも……」

「オンッ!」

「わひゃあ!?」


 サクラの一鳴きで、フィーニアが飛び上がり……そして、目の焦点が元に戻る。


「あ、あれ……? サクラちゃん?」

「わふぅ」

「あ、うん……ご、ごめんね。ちょっと、自分を見失っていたみたい」


 この子もこの子で、色々とあるんだろうな。

 気にはなるけれど……

 さっきも言ったように、今は、早くエルフィンさんや他の不死鳥族の誤解を解かなければいけない。

 質問は後回しにしないと。


「リーン、モニカ。ここから不死鳥族の里へはどう行けばいいか、知っているか?」

「「……」」


 まあ、素直に答えるわけがないか。

 いざとなれば尋問も……

 と思わなくもないが、ただ、そういうことはしたことがないから苦手だ。

 あと、勝手がわからないから、うまく口を割らせることができるかどうか、非常に不安でもある。


 この二人を頼りにしないで、自分の力を信じた方がマシか。

 そうと決めたのなら、すぐに動いた方がいいな。


「サクラ、フィーニア。ちょっとこの場を任せてもいいか?」

「えっと……は、はい。それは構いませんが……あなたはなにを?」

「ヒドリのボスに同化して、他の群れを率いて一気に周辺の捜索を……」


 途中まで言って、フィーニアがキョトンとしていることに気がついた。


 そういえば、同化のことは知らないか。

 簡単に同化について説明する。


「他の生き物に自分の意識を移す……そ、そんなことが……」

「その間、俺は完全な無防備になるから、リーンとモニカのことは頼んでもいいか?」


 二人に聞こえないように説明をした。

 自信なさげなフィーニアには、少し重い役割かもしれない。

 しかし、現状を考えるとこれが一番だと思うのだ。


「……わ、わかりました」


 小さな迷いを挟んでから、フィーニアは意を決した様子で、コクリと頷いた。


「わ、ワタシ……なんとか、してみせます! そ、その、頼りないかもしれませんけど……でも、がんばります。ワタシも……お母さんや他のみんなのことが気になるし……あなたのこと、意味なく嫌いたいわけじゃない……ですから」

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[気になる点] なんでそこまで拘束力のある麻痺毒なのに喋ることはできるのだろうか。そして口が動くのであれば猿ぐつわくらいするものなのではないだろうか。
[良い点] モニカとリーンの事はおいといて… サクラたんとフィーニアたんのコンビ…じゃなくて、友情がドンドン厚くなっていきますね(笑)ある意味、仲良しさん達の雰囲気が、何となく暗く冷たく乾いた雰囲気…
[一言] アールビー「死ぬがよい」
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